« 踊りの宇宙 | 最新記事 | 魅惑の口三味線。 »
1935年の歴史地図。
ある日ふらっと入った古本マンガ店の、片隅に転がっていた。たしか200円くらいだったと思う。
奥付を見る。昭和6年初版発行。翌年に訂正再版、昭和9年に改訂版発行。手にしたのは、そのさらに翌年に出た改訂再版だ。中等学校あたりで使われたものだろうか、裏表紙には本来の所有者であった方の名前がペンで書かれている。ふたり分の記名があるので「おさがり」で使用されたと思うが、姓がちがう。ご近所の人だったとか?
写真はその表紙だ。
著 伸 類 大 士 博 學 文
訂 改
圖地史歴洋西體新
田神 房 山 冨 京東
正確には、たとえば「神田」の「神」は「示申」だったりするなど、文字の表記は微妙に違うんだけど、まあその問題は今はご勘弁。
とにかく、今となってはこの本自体がすでに「歴史地図」なわけで。あ、版元の冨山房さんは同じ場所で今なおご健在ですね。私も何冊か持ってます。はい。
見ての通り、この時代は右からの表記である。で、今回、ひとつ発見。
漢数字は右から、外国文字とアラビア数字は左から書くんですね。たとえばこんな具合。
(1828-1831)盟同業商ツイド央中
あるいは
スリギイの紀世六十(1:10 000 000)
…視線が右へ行ったり左へ行ったり、読みにくいったらありゃしない。
さて、1935年といえば、ふたつの世界大戦のあいだである。濾溝橋に銃声がひびくのはこの2年後、ドイツ軍がポーランドに攻め込むのは4年後だが、アステア=ロジャースの名作「TOP HAT」が封切られた年でもある。
この地図帳は、1923年時点でのヨーロッパ〜ロシヤ情勢の詳細と、「太平洋の現勢」を示す図版でしめくくられている。現代の眼で眺めれば、国名表記ひとつとっても時代を感じさせて見飽きない(たとえばスペインは「ヤニパスイ」。スペイン内乱はまだ勃発していない)が、それ以上にしばし見つめてしまったのが当時の「日本の領域」である。日本の統治範囲が赤い線で囲まれている。北は樺太・千島列島。西は朝鮮半島・旅順・臺湾(満州國は含まず)。南はカロリン諸島、東はマーシャル諸島まで。
「十九世紀的原則に覆われていた二十世紀」とは橋本治のことばだが、それはこの図版一枚を見るだけでもよくわかる。
この時代、世界はまだまだ十九世紀をやっていたのである。
2003 12 07 [design conscious] | permalink Tweet
「design conscious」カテゴリの記事
- 中川学さんのトークイベント(2018.07.16)
- 大塚国際美術館へ(2017.07.17)
- 『デンマーク・デザイン』展(2018.05.06)
- 薄井憲二さんのバレエ・コレクション!(2018.04.08)
- ブランドとしての<ブリューゲル>(2018.04.01)