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魅惑の口三味線。

 買ったまま、ずいぶん長いあいだ聴かずにしまい込んでいたCD。ある日、ふと思い出して棚から引っ張り出してみたら、そのままマイ・ヘヴィ・ローテーションになっていた。…そんなことってありませんか。
 この秋のワタシの場合、《celtic MOUTH MUSIC》(ellipsis arts.../CD4070/1997)がソレだった。
 1997年にリリースされたこのディスク、当時2〜3回くらいは聴いたはずだが、まもなくラックの奥の方に移されてしまって、それきりだった。
 

 その7年後。他の盤を探すためCD棚をごそごそやっていたら、コイツのクロス装の背表紙を見つけ、おう、そういやこんなの買ったよなあ、と急に懐かしくなった。探していたCDはそっちのけで、いそいそとプレーヤーのトレイに載っけてみた。…お、これはなかなか。よろしいんじゃないでしょうか。
 
 中でも、今回は特にある曲にハマりまして。ケベックのBen Benoîが70年代初期に吹き込んだ〈Reel à Bouche〉という短いリルティングと、ふたりのアメリカのミュージシャン(Grey Larsen and Andre/ Marchand)がそれを粋なアレンジで再演した〈Horses, Geese And One Old Man〉という曲だ。ある夜など気がつけばこの曲ばかり何十回もリピートしていた。…ヘン?
 
 〈Horses, Geese And One Old Man〉はどんな曲かっていうと、たとえばこんな感じ。
 
 ケベコワ独特の小気味よいトゥ・タッピングに乗って、一番線からリルティング号が発車します。粘りのある渋い走りであります。少し遅れてフルート号が二番線から軽快にスタート、すぐにリルティング号のうしろにぴたりと付けます。しばらく、カーブの多い線路を両者は併走しますが、リルティング号は途中で山あいに入ってしまって、見えなくなってしまいました。こうなるとフルート号の独走であります。グングンと平野部を快走します。おっとふたたびリルティング号がトンネルを抜け出し、姿を見せました。ふたつの電車はふたたび追い越し追い越されながら、終着駅に仲良くゴールイン…。
  
 ま、ともかく、ユニゾンでもなければカウンター・メロディでもない。掛け合いのようでもあり勝手にやっているふうでもある。そんな声と笛の「つかずはなれず具合」が絶妙なのだ。メロディラインは一見単純なようで複雑、印象的なわりにそう簡単には覚えきれない。4分少々の曲だけど、永遠に続くようにも思える。
 なんと言っても冒頭から響くツカタカツカタカというフットステップ、これだけでもうぞくぞくしてしまう。あぁケープ・ブレトンだぁ、と嬉しくなってしまうのであります。

2003 12 08 [face the music] | permalink このエントリーをはてなブックマークに追加

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