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「幻のロシア絵本展」に行ってきました
先週ご紹介した『幻のロシア絵本 1920-30年代展』を観てきました(芦屋市立美術博物館)。やはり「実物」は強いですね。カタログ本を眺めているだけでは決してつかめない存在感というかオーラが、会場中に漂っていました。なにより、展示されている当時の絵本の、保存状態が極めて良いことにびっくり。あらためて、よくぞ残しておいてくれました、と先人に最敬礼。
「カタログ本を眺めているだけでは決してつかめない」もののひとつに、その大きさがあります。絵本というジャンルではサイズは特に重要で、一般書籍とちがい判型を比較的自由に決められるだけに、描かれた絵やテキストと同じくらいに、仕上がりサイズは絵本のよしあしを決定する大事なファクターになります。なので、それらのひとつひとつを(ガラスケース越しとはいえ)この目で確認できたのは大きな収穫でした。第二次世界大戦中の物資不足から「豆本」にされてしまったいくつかの絵本も、ホンモノを目の前に突きつけられると、やはりううむと唸ってしまいます。それにしても、末期にはカザフスタンで発行されたという断末魔のような絵本群ですら、半世紀以上の時を越えて完璧な保存状態を保っているのには、そら恐ろしささえ覚えます。展示された絵本の大半は、地元芦屋で活躍し、敗戦後には具体美術協会をつくった画家・吉原治良のコレクションということですが、かれがこれらの絵本をいかに大切に扱っていたのかがとてもよくわかりました。
展覧会に行ってよかったことがもうひとつ。原弘の寄稿した『光画』誌の現存本(1933年)、まさかこれが展示してあるとは思わなかったものですから、とても感激しました。さらには、原が敗戦後いちばん最初につくった写真絵本『PICTORIAL ALPHABET』(1946年)まで! 原弘のコーナーは、前回のエントリにも触れた『これは何でしょう?』がらみという名目で紹介されているものですが、こういう周辺のトピックまでもきちんと原資料を展示してくれるというのは非常にありがたいですね。『原弘と「僕達の新活版術」』(川畑直道/トランスアート/2002年)の愛読者としては、このコーナーは立ち去りがたかったです。
会場の芦屋近辺は満開の桜もそろそろピークを過ぎ、あす日曜の天気予報を思えばおそらくこれがことし最後の花見になるのでしょう。芦屋川周辺はおおぜいの人でにぎわっていました。
2004 04 03 [design conscious] | permalink
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