« 故きを温ねて | 最新記事 | 飛び出せ!boys & girls »
レコード産業の黄昏
2003年の世界音楽売上高、4年連続で減少=国際レコード産業連盟(ロイター)
レコードの売上が年々減少しているらしい。ロイターの記事によると、欧州と日本では「回復の兆候は見えない」というのが国際レコード産業連盟の見通しだとか。しかしこの記事、単に翻訳の問題だけなのかもしれないけれど、「レコード(CD)が売れない」即「音楽の危機」という前提のように読めるのが気に入らない。レコード産業連盟がそう思うのは勝手だが、音楽は薄っぺらい円盤の中だけに閉じこめられているものでもあるまい。むしろ、音楽が円盤から解放されつつあることの、これは証拠なのではないだろうか。
ところで、正確に数えたことはないけれど、わたしが持っているレコード/CDのうち、たぶん7割から8割弱くらいが輸入盤だ。なので、例の「CD輸入盤規制問題」はまったく他人事ではない。とはいうものの、こりゃあ何かの悪い冗談だろ、と心のどこかで思ってしまうくらいに、現実感がないというかアンビリバボーな気分でもある。
すでに多くのサイトで話題になっていて、特に3月後半ごろからは急激に広がりを見せているので、ただでさえ一筋縄ではいかないこの問題にますますついていけなくなった(たとえば洋楽CD輸入盤禁止かに集められたソースもまだきちんと読めていない)。わたしがどうもよく解らなかったのは、これでいったい誰がトクをするんだろう、ということだった。
日本のレコード会社を儲けさせるための法案なのか、とも思ったがどうもそうではないらしい。これについてはクラン・コラ・ブログ「商業用レコード」が興味深い。曰く
裏で台本を書いているのはJASRACではないかという気がしてきた。
ううむ。
* * *
音楽は円盤の中だけに閉じこもっているものではない。音楽が「産業」と呼ばれ出して約100年、「音楽産業=レコード産業」という図式が、もはや唯一無二のあり方ではなくなったんだなと思う。当のレコード産業自身がそれに気付かない(あるいは、気付かないフリをしている?)からこそ、「回復の兆候は見えない」などという嘆き節が出てくるのではないだろうか。
今回の「騒動」は、もはや終焉に向かいつつある「レコード産業」なるパッケージメディア屋の、断末魔の叫びではないのか。仮にこの延命措置が奏功して、CDメディアの売上が多少伸びたとしても、それはたぶん目先のことでしかあるまい。5年先10年先を見据えた上での法改正だと、本当に言い張るつもりなのだろうか。かえって、音楽ファンがCDメディアに見切りをつける日を早めるだけのことでしかないように思うのだが。
ともあれこの問題に関する議論の輪は、まだまだ広がりこそすれ当分収束しないだろう。海外盤CD輸入禁止に反対する Stop the Revision of the Copyright Lawへのリンクバナーを、右サイドバーに貼っておきます。ご関心のある向きは、ぜひ訪問してください。
それにしても今年もまだ4分の1が過ぎたばかりだが、2004年のキーワードは「権利」になるんじゃあないか。今年に入ってからこのかた、ウェブサイト界隈で「著作権」の文字を見ない日はないと思っていたら、今度はそれまでついぞ聞いたことがなかった「輸入権」ときた。
そういえば昨年暮れ、発売されたばかりの『著作権の考え方』(岡本薫/岩波新書)をホメていたワタシだが、しまった、あれはどうやら予告編だったのか。ううむ。
2004 04 09 [face the music] | permalink
Tweet
「face the music」カテゴリの記事
- ブルガリアン・ヴォイスにくらくら(2018.01.28)
- 55年目のThe Chieftains(2017.11.25)
- blast meets disney!(2016.09.11)
- ホールに響く聲明(2014.11.01)
- YYSB2014『展覧会の絵』『新世界より』(2014.06.29)