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『少年少女』完結を言祝ぐ

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 月刊コミックビームに連載(2001年12月号〜2004年4月号)されていた福島聡の連作短編シリーズ『少年少女』。先頃コミックス第4巻が発売され、これでめでたく完結です。
 
第1巻 2002年11月 ISBN4-7577-1180-8
第2巻 2003年4月  ISBN4-7577-1314-2
第3巻 2003年11月 ISBN4-7577-1584-6
第4巻 2004年5月  ISBN4-7577-1832-2

エンターブレイン・刊  装幀/井上則人・植田真奈美・徳永純子

 このマンガは基本的に一話完結型の短編集なのでどこから読んでもいいし、全部読めば作者の引き出しの多さを存分に楽しめるんですが、やはり全28話のうち例外的に5話まで続いた「ゴローとヨシコ」ものに触れないわけにはいかないでしょう。これは『少年少女』シリーズの基調となっている、いわばメインテーマのような作品です。
 第1巻に2話(「触発」「錯綜」)、第2巻以降は各巻に1話ずつ(第2巻「微睡」、第3巻「恍惚」、第4巻「希望」)収められたこの作品は、大阪近郊を舞台にした1971年ごろのお話。悪戯しようとした同級生のジロウを突き飛ばしたところ、運悪く古井戸に落ちてしまいそのまま死なせてしまった小学6年生のヨシコと、ジロウのひとつ下の弟、ゴロー。事故とは言え人を殺してしまったことを、まるごと引き受けて生きようとする少女と、そんな少女に抱く恋のような感情をもてあましながら、彼女の苦しみを一緒に背負っていこうとする少年……と書けば重苦しいのですが、そこはあいにく(?)大阪の悪ガキが主人公。時に泣かせ時に爆笑させつつ、少年と少女のリリカルな成長物語が綴られていきます。
 
 今の小学生がふだんどんな会話をしているのか私は知りませんが、70年前後に関西でガキをやっていた人なら、「そうそう、こんなアホな会話してたなァ」と思わずニンマリしてしまうこと請け合いです。
 たとえばこんなエピソード。級友にからかわれ、学校の3階から飛び降りて大けがをしたゴロー(途中のゴローと級友どもの会話も大笑いです)。ゴローが入院している間にヨシコは中学校にあがり、自分の入学式の日にヨシコはブカブカの制服で見舞いにやってきます。突然のヨシコの来訪にビックリするゴロー。

 「帰れッ」
 「な…なんでやッ」「見舞いに来たんやんかッ/なんやその態度ッ」「ホレこの帽子もゴローのッ」
 「いらんッ」「帰れッ/ジャマくさい」
 「……」「やっぱアホやな」「さすが3階から飛び降りただけのことはあるわ」
 「そうですーー/やっぱアホやねんですーー」「せやからとっとと帰ってくれませんかーー」
 「絶対帰らんッ」
 「何でやねんホッ/帰れやッ」
 (第1巻所収「錯綜」より)

 「ガキのケンカ」はまだ延々と続くのですが、このシーンを読んでいる内に涙ボロボロ。いやあ、これは『夫婦善哉』か『桂春団次』か、はたまた『王将』か…てなくらいの「上方的泣き笑い」の名シーンです。「やっぱアホやねんですーー」と言うときのゴローの口のすぼめ方が、もうこれしかない! というくらい正確に描かれているのも嬉しい。第1話「触発」からすでにこちらの脳天を直撃されてはいたんですが、とにかく「生」と「死」と「性」を小さなからだ全身で受け止めて必死になって生きている、そんな「ガキども」が愛おしくってしょうがない。
 
 
 登場人物の会話のリアルさはこの短編集の他の作品にも共通していて、この作者の耳のよさがよくわかります。耳といえば、第3巻に収録されている「ドレミファソラシド レミソラミ」という絶対音感を扱った話も、とてもリリカルでした。

2004 05 04 [booklearning] | permalink このエントリーをはてなブックマークに追加

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comments

はじめまして、トラックバックさせていただきました。いや、もう本当に好きなんですこの漫画。

posted: akino (2004/06/25 13:21:31)

 

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