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さいとう版『鬼平』にどっぷり浸る
週末、久々に寝込んでました。夏風邪というか、少々疲れが溜まっていたのかな。微熱と咳で熟睡できず、起きあがってもぜんぜん力が入らず食欲もなく、なんとも中途半端な状態。だもんで、土・日はずっと寝っ転がっておりました。ま、安静にしていて良くなる程度だったから、たいしたこともなかったんでしょう。おかげで予定していた用事はことごとくパスしちゃいましたが。ま、年に一度くらいはこういう日もあります。
高熱でうんうん唸ってるでもなし、かといって元気に歩き回ることもできず(台風も近づいてますしね)、こういう時にできることといえば、せいぜい音楽を聴くか本を読む程度なんですが、今回はひたすらマンガを読んでおりました。頭がよくまわらないんで、肩の凝らない娯楽モノがいいなあ。ということで、私が枕元に持ってきたのはさいとう・たかを『鬼平犯科帳』シリーズ。
むかぁし古本店で何冊か買い拾っていた文春コミックス版、現在リイド社から発売しているワイド版、ときどき駅のキオスクで買っていた月刊誌「コミック乱」、コンビニ向けの廉価版などなど、判型もシリーズもバラバラながらも、気がつけば結構な作品数を読んでいたのだなあと、枕元に積み上げて改めて感じ入ったりして。さすがに全作品ではないけれど、おそらく三分の二以上は読んでることになるのかな。

パーフェクト・メモワール オフィシャルブック鬼平犯科帳・人物編
リイド社/刊 ISBN4-8458-2474-4 2004年
つい最近発売された「オフィシャル本」には第100話までしか載ってませんが、連載はまだ「コミック乱」で続いていて、最新号は第128話目。池波正太郎の原作では、作者急逝による未完の作品もありますが、確か165話くらいあったはず。ということは、さいとう版もまだ当分は続きそうですね。この先も楽しみ。
このオフィシャル本にもさいとう・たかをのインタビューが載っていますが、ほぼ同時期に出た『ビッグコミック・オリジナル増刊 ビッグコミックONE 時代歴史コミック特集』(小学館・2004年7月1日号)に掲載されたインタビュー「さいとう・たかを時代劇を語る」とあわせて読むと、より面白いです。
さいとう・たかをさんはもともと池波作品は大好きだったのですが、『鬼平』のコミック化は非常に難しい、と言います。それでも手がけることになったのは「池波正太郎といえば『鬼平』でしょう」という編集部の意向があったからとのこと。小説としては非常に魅力的な『鬼平』ではあるけれども、絵にはしにくい場面が多く、毎回とても苦労しているのだとか。それが『ゴルゴ13』に次ぐ12年もの長期連載となっているから凄いものです。かくいう私も、さいとう時代劇のなかでは『鬼平』シリーズが一番好きなんですけれどもね。抑制の美学、とでもいいましょうか。静と動の対比がダイナミックだし、なによりやはり登場人物それぞれの陰影が魅力的で、再読三読に耐えうる作品です。
こういう機会でもなければ、長編シリーズの作品を読み返す時間などなかなか取れないので、この週末は存分に鬼平世界に浸ってました。
で、さいとう版『鬼平』を通読していてふと気になったことがひとつ。大滝の五郎蔵親分のはじめて登場が、まったく唐突なんですねえ。というか、他の密偵たちと違って、五郎蔵だけはなんの前触れもなくいつの間にか登場しているようです(第7話「男色一本饂飩」。なお、この話は何故か最初の文春版コミックスには収録されていない?)。うーむ。脇役とはいえ主要キャラ、大事に扱って欲しいなあ。
このあたり、池波正太郎の原作本ではどうなっていたか。実は私、ずっと昔に図書館で借りて読んだだけだし、それも全部読んだわけでもないので、まったく記憶にない。本棚を物色していたら文春文庫『鬼平犯科帳の世界』(ISBN4-16-714243-0)という小説版「オフィシャル本」が出てきたので、五郎蔵の初出を調べてみたら、第28話「敵」という話が初登場らしいのですが、どうもさいとう版ではそのエピソードはまだ作品化されてないみたい。ううむ。どういう話だったっけなあ。おまささんとの馴れ初めのエピソードも、ここに出てくるのかしらん。
とまあ、こういうどーでもいいことをあれこれ考えて、しかもこうやってブログに書いてるくらいですから、体調はもうすっかり良くなったんですが、週明けいちばん、とりあえず文春文庫の池波版『鬼平犯科帳』を買うために書店に走ることになりそうです。これはこれで、ビョーキですかね。しかも、こいつぁ一生直らないという(笑)。
2004 06 20 [booklearning] | permalink
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