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ピアフのドキュメンタリー作品・2題
さて、ここで問題です。エディット・ピアフ、ビリー・ホリディ、フランク・シナトラの3人を、生年順に並べてみてください。答えはこのエントリのいちばん最後で。
—— あなたは幸せですか?…人は決して幸せじゃないでしょ
—— 時には?
そうね…1日に10分ぐらいは幸せかしら
—— どんな時が幸せです?
やはり歌っているときね
間違いないわ
それ以外で幸せなのは…
…1日に10分ほど
悪くないわ
(翻訳:宇藤 靖子)
エディット・ピアフがこの世から去ったのは1963年だから、もう40年以上もたったことになります。40周年を記念してフランスで2003年に制作されたヴィデオの、日本語版DVDが、ひじょうに地味に(笑)発売中です。
●エディット・ピアフ シャンソンの誕生
Edith Piaf Quatre ans Déjà
エプコット/ALCD-0071
とはいえ内容は、ピアフ没後4年目の1967年に制作されたドキュメンタリー。マルセル・ブリステーヌ監督のこの作品は、これまでにも折に触れ何度かヴィデオ化されているようで、たとえば30周年のときに EMI FRANCE が発売した記念ヴィデオも、同内容なのでした。
冒頭に引いたインタビューは、その中のひとコマです。
そういえば、30周年のときのヴィデオにはちょっとした思い出があります。
パリのレコード店で買ったそれを喜び勇んで日本に持ち帰ったのはいいけれど、ヴィデオは SECAM 版で、当然日本のデッキで観られない。その頃の私は映像の信号フォーマットが国によって違うとか、そういうのがよく分かってなかったんですね。で、苦労して NTSC に変換してくれる業者を捜して(結構な料金を取られたはず)観てみたはいいものの、もちろん全編フランス語、日本語字幕なんて出るはずもない。結局1、2度観ただけでしまいこんでしまったという、情けないオチがついたのでありました。んなもん、買う前に気づけよ<自分(笑)
そういう個人的な事情もあって、まさかこのドキュメンタリー作品が日本語字幕つきで観られるなんて、としみじみ嬉しかったりするのであります(ジョセフィン・ベーカーがコメントを述べていたとは!)。古い作品とはいえ、日本語化はひょっとして今回が初めてではないでしょうか?
ただし、このエントリを書くために30周年ヴィデオの方も久しぶりに見直してみたんですが、一部分違いがあります。ピアフが出演した映画からのシーンは、今回の日本語版ではまるごとカットされています。おそらくは版権などの関係なんでしょうか。そのかわり、DVD には特典映像として、約30分のピアフのインタビュー映像が附いてます。こちらもたぶん本邦初公開では。
エディット・ピアフ伝記もの DVD 日本版はもう1本発売されていて、こちらは2003年にあたらしく制作されたものと思われます。
●エディット・ピアフ 天に届く声
Edith Piaf La voix qui montait jusqu'au ciel
ALCD-0070
この2本は単品でも買えるほか、『素顔のエディット・ピアフ』という題名でボックスセット(ALB-0020)もあるようです。気になる人は各自検索してみてくださいな(私、アフィリエイトの類は一切いたしませんので)。
幼いころ、急性白内障をわずらっていたピアフが、リジューの聖テレーズの奇蹟によって治った、という逸話はこのDVDで初めて知りました。だからというのでもないですが、ここでのピアフはもはや神格化されすぎで、そのへん多少引っかかりを覚えるんですが、まあ没後40年たってなおその名が光り輝く存在ですからね。
歌手・ピアフの映像といえば、最晩年の1962年、奇跡的な復活を遂げたオランピア劇場でのリサイタルがよく引用されます。上記DVDにも何シーンか出てきます。現存しているのは質のひどく悪いモノクロ映像で、知らない人が見れば第二次大戦前の映像かとさえ思うかもしれません。まあ、このモノクロームの味わいこそが、いかにもピアフらしかったりするのかもしれないですが、映像の力とはおそろしいもの。ピアフがことさら古典視される一因は、こういう残されたフィルムの画質にも、あるいはよるんじゃないかと思ったり。
それはともかく、本国では30周年のときに、このリサイタルの完全版(?)ヴィデオも発売されてました(『Edith PIAF L'unique Récital Filmé & Enregistré En Public』PKF811901/1993年)。画質うんぬんは別にしても、このリサイタルは本当に感動的なものだし、なによりもエディット・ピアフの凄みがひしひしと実感できるものだけに、こちらもいつの日か、ぜひ日本で販売してほしいものです。
そうそう、冒頭のクイズの答え。実は、3人とも1915年生まれの同級生なのでありました。ホリディは4月生まれ、シナトラとピアフは12月なので、あえて言えばビリー・ホリディがいちばん「お姉さん」になりますが。
亡くなったのはホリディ(59年)、ピアフ(63年)、シナトラ(98年)の順になります。それにしても、こんなふうに並べてみると、フランク・シナトラって長生きだったんですねえ。
2004 07 04 [face the music] | permalink
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