« ジャン=ジャック・サンペ讃 | 最新記事 | ちびた〜いの のみた〜いの »
[CD]:SACRA/ついのすみか

1991年にリリースされたアルバム。80年代後半からのいわゆる「ワールドミュージック・ブーム」のおかげで汎アジア的な音楽もたくさん生まれ、メジャーレーベルからもいろんなCDが発売されました。強いて言うなら、本作もそんな「日本発、アジアンテイスト・ポップ・ミュージック」のひとつになるのでしょう。
●SACRA ついのすみか
Sony Records SRCL2131/1991年
ヴォーカル:小畑香/ギター:高橋裕/ハンマーダルシマー:小松崎健
- 南冥行〜蘭の舟〜ケシの花
- ナーダムがやってきた
- 中国民謡メドレー(馬車夫の恋〜お姫さま〜ふらり〜春来ませり)
- ガブリエルのラッパ
- チベットワルツ
- 夢の秘密
- 雲南の風
- 基隆(キールン)で
- さくら さくら
- トラジ
- わーい
聴いていてなんとなく心が落ち着く、という点では「癒される」音楽ではあるんでしょうけど、SACRAの場合、その意味合いが少しばかり違うように感じます。
「ワールドミュージック」の出発点にはエキゾチスムがあって、まだ見ぬ土地へのあこがれが創作の動機になる場合が多いでしょう。本作では中国雲南地方やモンゴルやチベットなど、中国大陸の内陸部がその舞台です。
ただ、ここでの「雲南」や「チベット」は、現実に存在する具体的な土地名というよりも、天上世界に向かうための道具、浄土への入り口として用いられているようです。
このCDをずっと聴いていると、どうも「この世ならぬ」ものを感じます。うたが描写する情景は、直接的には中国大陸のどこかのいち風景でありながら、そこに同時に死後の安らぎといったようなものが透けて重なります。
たとえるなら、お墓参りをしたときの感覚、でしょうか。まわりじゅう「死」に囲まれていて、怖いと言えば怖いし不気味だと言えばそうなんですが、しかしいつかは自分もお墓に入ることになるんだよなあ、と思うと、同時に不思議な安堵感も得たりします。
なにしろアルバム・タイトルからして『ついのすみか』だし、アルバム冒頭の〈蘭の舟〉は死への旅路をうたった曲。「アルバム全体になんとなく死が漂っている」というより、もっとはっきりと「アルバム・コンセプト」だとしてもいいかもしれません。(にしても、デビュー・アルバムからいきなり「死」っていうのは、あらためて考えると凄いですね)。もっとも、全体としてはさわやかなアコースティック・サウンドだから、BGMとして聞き流している分には、そんな「死のにおい」にはあんがい気付きにくかったりもします。
私の葬式には、このCDを流してくれると嬉しいです。自分では聴けないのが残念ですけど。…って、こんなところに遺言書いてどうする(^_^;)。
ライブにも行ったことがなく、たった1枚のCD盤をくり返し聴いていただけの「おつきあい」でしたが、私はセカンド・アルバムを、それはそれは首を長〜くして待っていました。けれども、同じメンバーでCDが作られることは、二度とありませんでした。
SACRAのその後のことは、私は何も知りません。とっくに廃盤になったこのアルバムを今さら話題にするのも、関係者の方々にとってはさぞかし面映ゆいだろうなという気もします。
ま、ずーっと宝物として大切に聴いている人間がここにもひとりおりますという、ささやかな意思表示ということで。
【関連リンク】
■高橋裕さんのブログ:続・SACRA事務局の日記
■小松崎健さんのバンド、Hard to Findのサイト:Dulcimer Ensemble HARD TO FIND
2004 07 26 [face the music] | permalink
Tweet
「face the music」カテゴリの記事
- 北欧の音楽ピクニック・2011!(2011.11.13)
- ポール・オショネシー&ハリー・ブラドリー再来日!(追記あり)(2004.12.03)
- ラージャスターン・ルーツ(2010.08.01)
- 北欧の音楽ピクニック!(2010.06.21)
- 〈アラブ・アンダルシア宮廷音楽の馨り〉(2010.03.22)
comments
私もこのCDを持っていて幾度となく聞き続けています。
透明な音色のボーカルでシュールにも思える歌詞をさりげなく歌うのがとても気に入っています。
セカンドアルバムが発売されなかったのがとても残念です。
posted: kei (2004/09/07 0:25:21)
もう6~7年になるでしょうか・・・。友人が売る前に録音したというテープを聞いて以来、ずっと捜しつづけています。でも、どこにもないんです。yugaapuamiiのこやまあきこさん宛にメールを送り聞いたのですが、やはりストックはなく、唯一小石川図書館に寄贈したとのこと。でも図書館に問い合わせると、誰かに持ち去られたらしく、ここにはないとのこと。それを聞いた時は、もう笑ってしまうほどガックリしてしまいました。あのCDにはもう巡り合えないのか・・・。そう思うととても残念です。持ってらっしゃる方は本当に幸せです。どなたか、よい情報がありましたら、お教えください。切にお願い申しあげます。
posted: hiro matsuzaki (2004/09/13 20:00:01)
みなさん、コメントどうもありがとうございます。
数年前まででしたら、まれに中古店で見かけたこともあったらしいんですが、今はどうなんでしょう。
LP時代の「名盤」がたまにCD復刻されることがありますが、このアルバムもいつの日か復活して欲しいですね。
posted: とんがりやま (2004/09/14 13:12:14)
このCDを持ってる一人ですが、こちら様の書かれたレビューが短くしかし端的に述べられていてとても素晴しく思います。
CDを手に入れてから10年以上経ちますが、未だに私にとっては現役な曲たちです。
posted: menuet (2008/02/26 10:41:16)
CD持っております。未だに携帯プレーヤで聴いています。名盤です。
posted: あめんほてっぷ (2008/10/31 21:55:58)
