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昔はよかったなあ

 「オレたちの若い時分は」とか「あの頃はよかったよなあ」などというセリフがつい口に出てしまうと、もうしっかり年取った証拠なんですが、さてそれでは、日本人はいつ頃からこういうセリフを言っていたんでしょうか。
 
 明治時代には、間違いなく言っていたように思います。いえ、べつにちゃんと調べたわけではないですが。「御一新このかた、世間の風が冷たくなっちゃったねえ。人情も地に落ちたものですよ」などと、煙管をぽんと叩いて嘆いてる横町のご隠居さんって図は、簡単に目に浮かびますね。
 
 ぐっと遡って「平家物語」のあたりはどうでしょう。そりゃあもう平家ファミリーだって、自分たちの権勢がピークだった時代をひどく懐かしんだに違いありません。なにせのっけから“諸行無常”などと言ってるくらいですから、無念のキモチがありありです。
 
 平家とくれば「源氏物語」はどうだったかな? これまたよく調べずにあてずっぽうで書きますが、宮廷の女房連中が「先の帝の頃にはこんなことはなかったのに…くくく」とか嘆いているシーンなんかが、きっとあったはず。
 
 では、この際もっと遡ってみましょう。「竹取物語」はどうでしょう。成長したかぐや姫との別れが迫り、おじいさんとおばあさんは楽しかったあの頃を懐かしんで毎日涙ぐんでおりました、ってな場面があったような。
 
 いや、ワタシ国文学ってまともに読んだことないんで、この辺すっかり当てずっぽうで書いてるんですけどね。でもなんとなく、どれも「そういうシーン」があってもおかしくないって思いませんか。
 
 
 
 これがしかし、「万葉集」あたりになるとちょっと想像しにくいです。当然ワタシは読んだことがないですが(イバるな)、きっと防人の歌あたり、望郷の思いをうたった歌のなかには「Good Old Days」をテーマにしたものだってひとつやふたつくらい混じっているはずだぁ、と決めつけてしまいましょう(いいのか、おい)。
 
 さらに「古事記」となると、もうなにがなんだかです。えーと、天の岩戸のお話とかってここらあたりなんでしたっけ。イザナギとイザナミだとか、あるいはイナバの白ウサギもそうだったのかな。で、果たして彼らは過去をしみじみと振り返っていたのでしょうか。「古事記」がまったく分かってないのに、登場人物の心情なんて想像できるはずもない(だからイバるなって)。そこんとこ、どなたか国文学に詳しい方、どうなんですかっ。
 
 
 でもって、完璧に想像できないのが弥生時代です。はたして弥生人は「わしらの若い頃は」なんて言っていたのかどうか。たとえば最新流行の弥生式土器をしげしげと眺めながら「なんだねえ、若い連中が作ってる今どきの土器てえのは品がないねどうも。ああ、縄文時代に戻りたいねえ」なんて言ってくれてたら最高に愉快なんですが。そこんとこ、どなたか考古学に詳しい方、どうなんですかっっっ。
 
 
 
 
 今日のエントリも、なんだかすっかりわけのわからん記事になってしまいましたが、ええと実はワタクシ、本日付けでひとつ年を取ってしまったわけであります。
 そこで一言、謹んで申し上げます。
 
 「昔はよかったなあ。」
 
 

2004 07 13 [living in tradition] | permalink このエントリーをはてなブックマークに追加

「living in tradition」カテゴリの記事

comments

えっと、古代西洋史では如何?
ちょっと違いますが、『人類最古の文字を解読したら「近頃の若い者は・・・」と書いてあった』らしいです。
いや、眉唾マユツバ、、、時に「粘土板」だったり「石版」だったり「パピルス」だったり"ギルガメシュ"に書いてあるとか。。。
ジョークですけど、妙に説得力があるというか、'さもありなん'的なネタですよね。
(どれか一つくらいは本当の話なんだろうなぁ、などと思う私はもう完全に・・・)

> 本日付けでひとつ、、、(以下略)
おめでとうございます。
一説によりますと今日の花は「テッポウユリ」
花言葉は「純潔」でございます。\(^^)/

posted: Fujie (2004/07/13 23:56:15)

じゅ、純潔ですかぁ。うわあ。
…などとテレてみたりして(^_^;;;

Fujieさん、お祝いコメントどうもありがとうございました。本当に嬉しいです。
西洋といえば、そういや「ルネサンス」って人類史上最大規模の懐古趣味って感じですねえ。

posted: とんがりやま (2004/07/14 0:34:08)

わあ!お誕生日おめでとうございます!!!
・・・ちょっと、遅くなっちゃいましたけど(汗)。

「昔は良かった」というのは、
何々時代ということではなく
きっと自分の子供の頃、あるいは若すぎてまだおバカだった
時代のことを思って出てくる言葉なんでしょうね。
社会のしくみも全然分かってなくて
周りのことを考える余裕もなく、
目先のことだけで精一杯だった時代。
たわいもないデカイ夢を持って、
真剣に「自分はそうなる」と根拠もなく信じられた時代。

大人になって、周りのことも見渡せるようになり
社会的にも責任を持たされるようになったときに
無責任でも生きてこられた若い頃を振り返って
「昔は良かったなあ」というセリフが出てくるのかなあと。
節度ある大人になった、という証拠なのかも知れませんね。

私としては、少年のような心を持ち続けるのは大切だけど
いつまでもガキのように
他人を思いやれない人の方が問題かなとも思います。
人は悲しみが多いほど人に優しくなれるものです。
と、金八先生もおっしゃっています(笑)。

posted: しのぶ (2004/07/14 12:44:37)

>しのぶさん
うわぁ! ありがとうございます〜(感涙

> 節度ある大人になった、という証拠なのかも知れませんね。
>
> 私としては、少年のような心を持ち続けるのは大切だけど
> いつまでもガキのように
> 他人を思いやれない人の方が問題かなとも思います。

い、痛すぎです(笑
グサグサと突き刺さりまくってます。

節度ある大人…ううむ。道は遠いですぅぅぅううううう(冷汗

posted: とんがりやま (2004/07/14 13:43:56)

 

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