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[CD]:ハルノヒ

Haruno_Hi.jpg

 「笛の詩人」きしもとタローさんの初アルバム。全曲オリジナル作品で、多彩な“タロー・ワールド”が楽しめます。
 
●ハルノヒ  タロー
 AYNI RECORDS/AYCD001  2004年

タロー/ケナ、チョケーラ、ミヤコオチ、ウッド・フルート、ティン・ホイッスル他
くぬぎたけひろ/フィドル
岡崎泰正/ギター
田中良太/カホン、ボンボ、ボンゴ、ドゥンベック他

All Tracks Composed by Kishimmoto Taro
Design : Yoshida Sachiyo

 オフィシャル・サイトで試聴できます。→タローの世界
 
 
 タローさんを悪く言う人間には会ったことがない。ワタシなんかは「あぁ、自分もこんなふうなまろやかな人になりたいなぁ」とこの人を見るたび思い、胸に手を当て日頃の自分を海よりも深く反省したりするワケなんであります(^_^;)。
 で、タローさんの待望のファースト・アルバムは、ぜんぶ自作曲ということもあって、そんな彼の人柄がフルに表現された一枚になっています。
 
 
  
 そういえば、笛吹きさんには「吹けるモノならなんでも吹いちゃるぜ」ていう人が多いんでしょうかしらん。他の楽器よりも<音楽ジャンル>には柔軟に対応できるタイプのように思うんですが、どうなんでしょう。要するに、ジャズだロックだクラシックだワールドミュージックだ、という風な一般的な<音楽ジャンル区分>ではなく、彼らの場合は<笛が吹ける音楽か・そうでないか>という独自のジャンル分けでモノゴトを見てるんじゃないかと。
 
 いわば、包丁一本ならぬ“笛一本、サラシに巻いた渡世人”ってとこでしょうか。これって裏を返せば、ある意味ものすごい自己主張というか、過激な笛至上主義とも言えるんですけどね。
 にもかかわらず、というか、だからこそ、というか。笛を吹く人は、普段は人当たりがとてもマイルドで、腰が低くて、とても穏やかな方が多いような気がします。実は過激なんだけど、見た目おだやか。ソフトに見えて、存在感じゅうぶん。一見すると相反するかもしれない要素が同時に存在しているのが、なんだか面白いなあ、と。
 ひょっとすると、笛をやっていると「おまーら、細けぇ<ジャンル>なんかの中でアーだコーだ言ってんじゃねーよ」というふうな、超然さが自然と身に付くのかもしれません。それに、ピーンと鋭い高音から足元を揺るがすような低音まで、自分の息ひとつで自在に操れますからね。ハーメルンの有名な男の話を思い出してもらえればおわかりのように、笛吹きにはもともと不思議な魔力が備わっているんでしょう。
 

 
 で、CDの話に戻ります。これは一見(ていうか一聴)ソフトで、やわらかな笛の音色が誰にでも聴きやすく、表題通り「春の日差し」を感じさせるような、そんなアルバムです。
 けれども、なにせこの人は「ミヤコオチ」という名のオリジナル笛まで創作してしまうほどの(詳細はオフィシャルサイトの楽器のページ参照)、 筋金入りの過激な笛至上主義者ですからね。CDを聴けば聴くほど、上に書いたような「おだやかだけど、実は過激。まろやかに見えて、存在感じゅうぶん」っていう気分になってくるのですね。ヤバイなあ。
 
 というわけでこのファースト・アルバムは、やっぱりタローさんの人柄がとぉぉぉってもよくにじみ出ている一枚なんだなぁと思いましたです、ハイ。
 
 

2004 08 26 [face the music] | permalink このエントリーをはてなブックマークに追加

「face the music」カテゴリの記事

comments

とんがりやまさん、こんにちは。
(お名前がとんがりやまさんでいいのでしょうか?)
タローさんのファンで、ファーストCD[ハルノヒ」もとても気に入っているので、丁寧で素適な解説をされているのを見て、うれしくなりました。本当にこのCDにはタローさんの音楽への想いが、いっぱい詰まっているようですね。
タローさんの温かさ、優しさ、ユーモラスな部分、ちょっと哀しい想いもみんな一緒にはじけているみたいです。
CDがたくさん売れて、タローワールドが拡がっていくといいですね。

posted: non (2004/09/05 17:45:36)

はじめまして、コメントありがとうございました。
名は体を表す、ではないですが、音って「その人」が出るんだなあと、このCDを聴いていて改めて思いました。

大阪・堂島の新星堂で試聴機に入っていたのを見ました。多くの人に聴かれるようになったら嬉しいですね。

posted: とんがりやま (2004/09/06 0:09:42)

ヘルガ♀です。
岸本さんの今回の作品ですが、笛吹きにとっては絶句のCDですね。
テクニック的な面は非の打ち所がないのはもちろんですが、僕が特に気に入ったのは、その演奏の表情がものすごく全面に出ているということです。これまでティン・ホイッスルやアイリッシュ.フルートのCDをたくさん聴いてきましたが、ここまで笛で表情をつけて吹ける人はそんなにいないと思います。
「楽器が歌っている」というのは、岸本さんの演奏のようなことを言う表現だと思います。

posted: ヘルガ♀ (2004/09/24 7:26:06)

>ヘルガ♀さん
 コメントありがとうございます。おお、さすがプレイヤーならではの評ですね。なるほど〜。

 楽器、特に笛は人間の声の延長のように思うんですが、タローさんのこのアルバムでは、各種の笛がそのまんまタローさんの歌声のようでもありますね。

posted: とんがりやま (2004/09/24 11:47:30)

とんがりやまさん、こんにちは。
こちらへは初カキコです。

岸本さんの演奏は、今年の7月にタラ丘で初めて聴きました。

一応、私も笛吹きのはしくれ、人の演奏を聴く時はやっぱり細かいところ(装飾、ブレスポイント、メロディーラインのアレンジ等)を注意して聴いてしまいます。

でも、岸本さんの演奏を聴いているうちに、そんなことはどーでもいいや、と思うようになりました。
ギネス片手に、彼の笛の音に身を委ねる、もうそれで十分!
幸せな時間を過ごせました。

もう一度生で聴いてみたい"アーティスト"のおひとりです。

話は少しズレますが、昨日から村上"ポンタ"秀一さんの自伝を読んでます。
彼、音楽に対して、「壁」がないのです。
J-Pop、フォーク、ジャズ、クラシック、ジャンルに関係なく、いいものはいい!と。
それから、ドラムに大切なのは"歌心"だと言ってます。(少なくとも、私の理解する限り)
ドラムを叩くには、譜面はいらない。歌詞カードがあればいい、と。
なかなかおもしろい本です。

岸本さんの笛の音、やはり"歌心"にあふれていると思います。

とりとめのない文でした。お許しを。ではでは。

posted: のすけThe笛吹きのはしくれ (2004/10/03 16:10:45)

>のすけさん
コメントありがとうございます。なんだか、思わぬ方々からゆっくりとしたペースでコメントを頂けるのが、いかにもタローさんのCDらしいなあ、と妙なところで感心しています(^_^)。
ポンタさんの本、面白そうですね。今度本屋で探してみます。ご紹介ありがとうございました。

posted: とんがりやま (2004/10/03 17:23:32)

 

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