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[CD]:An Historical Recording of Irish Traditional Music

 そういえば、ここんとこ新しいCDをほとんど聴いていない。もっとも私の場合、バリバリの新譜よりも旧譜や復刻盤を買うことが多いから、どっちにしろ「最新鋭の音」からはすっかり足が遠のいているのだが。
 トシだろう、と言われれば、まぁそうなんだろうなあ。古い録音の方が、耳に心地いいのだ。聞き飽きないし、聴き疲れもしないし。それに、好んで聴くジャンルが伝統音楽系だと、なおさら昔の演奏の方が良い場合が多かったりするという事情もある。もちろんこれは、ノスタルジーではない。
 
 そんな長年の愛聴盤を、一枚取り上げる。なお、ここから下の文章は、メールマガジン『クラン・コラ』誌2001年9月号に書いたレビュー記事の再録であることをお断りしておく。…げ、もう3年も前なのかあ。いやはや。
 
 

AnHistrical.jpg
    *****

永遠の<エヴァー・グリーン>

●An Historical Recording of Irish Traditional Music
From County Clare And East Galway Shanachie 76001/2001年

 《An Historical Recording of...》という題名で復刻されたアルバムではあるが、『歴史的録音』という先入観はとりあえず捨ててかかった方がいい。なんと若々しく、なんと瑞々しい音楽か。<エヴァー・グリーン>とは、まさにこのアルバムのことを指すのだろう。

 1959年の録音。原題も長くて《All-Ireland Champions-Violin Paddy Canny and P.J.Hayes accompanied by Peter O'Loughlin, concert flute and Bridie Lafferty, piano》という。メンバー紹介までやってるから長いのだが、それはともかく、メインである2人のフィドラーとフルート奏者については Tulla Céili Band という共通項でくくることができるので、まず当時のバンドの歩みを簡単に振り返ってみたい。

 Tulla Céili Band は1946年結成。フィドルの Paddy Canny も P.Joe Hayes も創立メンバーである。1957年に初の全愛チャンピオンのタイトルに輝く。翌58年はカーネギーホール公演を含む初のUSAツアーと、NYでの初のLPレコーディング(このツアーでバンジョー奏者がアメリカに残ったため、替わって入団したのが Peadar O'Loughlin である)。さらにその後、1960年にもバンドは二度目の全国制覇を果たしている。
 日の出の勢い、向かうところ敵なし。なんとも颯爽としてカッコいい様子が伺えるではないか。1921年生まれの P.Joe はアルバム制作当時38歳、Paddy が40歳、そしていちばん若い Peadar が30歳になるかならないかの頃。働き盛りで、気力体力ともに充実していて、青臭くもないが枯淡の域にもまだまだ早い、そんな年代と言っていい(ちなみに、RTÉ から出ているビデオ《COME WEST ALONG THE ROAD》には1963年の Tulla Band の映像があり、この3人もアップで見られる)。この録音から受ける若々しさや瑞々しさという印象は、おそらく“人生のなかでもっとも勢いのある時期の記録”でもあるからではないか。
 
 だが、このアルバムの聴きどころはそれだけではない。これが40年以上を経た今でも現役として通用する、極上の“踊れる音楽”でもあることの方が、実ははるかに凄味があると思う。特筆すべきは Bridie Lafferty のピアノが構築するしなやかなグルーヴとあの絶妙のアクセント! アイルランド伝統音楽の生命力の水源地そのもののようなこのリズムこそが「凄味」の正体なのである。と、この際言い切ってしまおう。
 
 伝統とは永遠に若々しい存在なのだということを教えてくれる、これはまたとない名盤なんであります。
 
*****

 なお、P.Joe.Hayes は2001年5月6日に、80歳の生涯を閉じていることを付記しておく。
 
【関連:同アルバムの詳細なレビュー記事(但し英文)】
Musical Traditions Internet Magazine:Review 1, 2

2004 08 21 [face the music] | permalink このエントリーをはてなブックマークに追加

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comments

Jさんに教えてもらったRTEのケーリー・ハウスという番組,聞いてます?先週がクレアの特集で,Paddy Canny,Junior Crehan らのノリノリの演奏が聞けました。(1950年代?) さて,今週は↓

http://www.rte.ie/rams/radio/latest/rte-ceilihouse.smil

posted: わたなべG (2004/08/21 21:32:01)

 

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