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深遠なるトリセツ・グラフィックスの世界

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 この世には「トリセツ」というモノがある。正式名称は「取扱説明書」だ。家電品やちょっと複雑な構造の日用品を買ったら、パッケージの裏面やあるいは別冊のパンフレットとしてもれなく付いている、アレだ。
 その製品の正しい使用方法を説き、上手な使い方のコツを教え、間違った使い方を諫める。これが取扱説明書に科せられた使命である。
 
 もっとも、それが隅々までくまなく読まれているかというと、答えはたぶん「否」だろう。トリセツなんて読んだことがない、と豪語して平気な人種は世界中に多数存在する。そういう手合いに限って、久しぶりにテレビ番組を録画しようとしてタイマーの設定方法がまるでわからず、あわててどこかにしまいこんだトリセツを探して右往左往大騒ぎし、押入の奥の奥からようやく引っぱりだしてきたころには、すでに番組が終わっているのだ(どーだ、身にオボエがあろう)。
 
 ヒトはトリセツを読むのが嫌いである、たぶん。これほど必要とされていながら、これほど読まれていない文章が、世界中の他にあるだろうか。いや、決してない。
 
 そこで、「絵」の登場である。およそ「トリセツ」と名の付くモノで、「絵」のないやつは、おそらく存在しないのではないかというくらい、トリセツと「絵」は切っても切れない関係なのだ。トリセツの文章は読まれない。だったら「絵」なら、まだ眺めてくれるヒトが、少しくらいはいるかもしれない。そんな微かな希望を胸に抱いて、トリセツには「絵」が付いているのである。
 もっと深刻な問題として、もともと文章が読めない、またはその国の言葉がわからない、そういうヒトのためにも、トリセツの「絵」は存在する。われわれが輸入品を買って、そのトリセツにまったく日本語がないとき、手がかりになるのは唯一「絵」だけなのだ。そいつを頼りに、我々はその製品を末永くご愛用しなければならないのだ。
 だから、「絵」は重要なのである。特にトリセツにおいては。
 そんなトリセツの生命線、解説と教示の総本山、マニュアルの真骨頂であるトリセツの「絵」にスポットライトを当てたのが、この本なのである。…前説が長いっちゅーねん<自分。
 
●OPEN HERE The Art of Instructional Design
 Paul Mijksenaar and Piet Westendorp
 Joost Elffers Books, NY / Distributed by Stewart, Tabori & Chang
 ISBN1-55670-962-5 / Published in 1999
 Designed by Bureau Mijksenaar, Amsterdam
 
 
 上の堅ッ苦しい前置きはもちろん半分冗談で、いくら「絵」がトリセツにとって大事であろうとも、それだけを取り出してみてその使い方が完全に理解できるかというと、やっぱりそれは難しい問題だ。この本には、飛行機の救命具の装着の仕方、シャープペンシルの芯の出し方、目覚まし時計のベルを止める方法、ネクタイの結び方、サリーの巻き方、あるいはネコのトリートメントから鼻毛の抜き方まで、さまざまなトリセツから集められた「絵」が、前後不覚、じゃなかった、百花繚乱、でもないや、ええとそのう、要するに何の脈絡もなく並べられている。ずーっと眺めていると、いやはや現代において文明人として生きるためには、いったいどれほどの道具を使いこなさなければならんのだ、という気分にさえなってくる。
 
 いかん、また堅苦しくなった。えーとですね、図解があるとわかりやすくなるのは事実です。でもねえ、なにもこんな絵を載せなくってもいいじゃないか、ってえのもあるんですよね。トリセツってえ奴は根が真面目だから、もちろん冗談なんか言わないワケですよ。いつだってマジメ一本槍。で、マジメに絵解きすればするほど、余計におかしくなってしまう物件だって、中にはあるワケですよ。いや、決してトリセツ君をバカにしてるんじゃあないんですけど。
 
 たとえば、救命具関係のこんな「絵」。

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 万が一飛行機が着水したら、救命具を付けて海面に出て、救助がくるまでみんなで手をつないでがんばろーね、てなことを言いたいんだと思うんですが。
 
 これがなぜか楽しいフォークダンスに見えてしまうのはワタシだけなんでしょうか?
 
 
 あるいは、こんな「絵」はいかがか。


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 目薬の差し方の図解だと思うんですが…
 
 目がイッちゃってます。かなり怖いです。
 
 
 他にも紹介したい図解はたくさんあるんですが、キリがないのであとひとつだけ。


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 おそらく「お口くちゅくちゅ」の図なんでしょうが、
 どーやったらこんなに器用に口の中で
 
水をロータリーさせられるんでしょうか。
 
 
 …トリセツの「絵」はシミジミ奥が深いです。
 
 

2004 08 31 [design conscious] | permalink このエントリーをはてなブックマークに追加

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comments

トリセツ嫌いを自負する私も、この本にはときめきますね!
うわーめっちゃ欲しい!

かつて自分のエントリでもネタに書いたことがあるんですけど、
本当に楽しいトリセツってのが出来ないもんですかね。

posted: すてら (2004/08/31 0:35:39)

コメントありがとうございます。
製品作ってるヒトは、本当はトリセツなんて必要のない、誰でも触るだけでパッと使い方がわかる、そんな製品作りを目指してるんじゃないでしょうか、究極の理想としては。けれども、ケータイ電話でメールができたり写真がとれたりテレビが観られたり、っていう風にいろんな機能をくっつけたがるヒトがいて、またそういうのを買いたがる奴がいるから、やっぱりトリセツが必要になってくるんでしょうねえ。
>本当に楽しいトリセツ
笑いあり涙あり、スリルと迫力満点の壮大なアドベンチャー・ストーリー、ってことでしょうか(笑)
そういえばSF映画の登場人物は、誰一人トリセツを読むことなく複雑で近未来ちっくな道具をどんどん使いこなしてますね。いいなあ。

posted: (2004/08/31 23:58:38)

 

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