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1+1は2になるか(2)
いわゆる「ケルト音楽」をいろいろ遊んでみよう、という試みとしては、前回挙げたサルサバンドの他にもブルターニュのヒップ・ホップ・グループとか、あるいはスコットランドにはテクノ/ハウス的アプローチをやってみるミュージシャンが結構いたりとか、あ、あとカナダのランキン姉妹が、さりげなーく琴を使ってた録音もあったな。まあ、私はめずらしモノを特に意識して集めているというワケでもないので、このへんあまり突っ込んでは語れないですが、中でもかなり「キてる」部類に入るのではないかと思われるアルバムをひとつ。
●CELTIC SKA
The TROJANS
GAZ'S ROCKIN' RECORDS/CD GAZ011
1994年
Sleeve Desgin:Ska-tistics Graphics
前回「対抗しているワケはない」と書いたのは、制作年代がまるで違うから、というのもあります。このアルバムには、古くは1987年に録音されたものも収録されているそうで、時系列的にいうなら前回取り上げた SALSA CELTICA よりもそうとう前から「中南米ケルト」をやっていたことになります。
そういう「時代の違い」もあるのかな。この<スカ・ケルト>はヘンさが違う。もっと正確に言えば、ヘンさの濃度が違う。
そういえば、実は私がこのアルバムを買ったのはCD専門店ではなく、アクセサリーや輸入写真集も扱っている、京都のナウなヤングが集まるオサレな雑貨ショップでした。そういう店で売っている「ケルト」ってどうよ。ということで、試しに買って聴いてみると、これがあーた、チューニングは狂ってるわヴォーカルの音程は外れてるわのシロモノで、なんとか一通りは聴いたものの、ダメだこりゃあ、と放っておいたんですね。
そのまましばらく忘れていたんですが、つい先日、大阪のナウなヤングのミナサマが集うような、オサレなカフェに入ったところ、どこかで聞き覚えのある曲が流れてきた、ト。で、ちょっとざわざわした店内でBGMとして流れていると、なんだかとても面白そうだぞ、ト。で、慌てて家に帰って、ひょっとして、とこのアルバムを聴いてみたら、ピンポーン、だったわけであります。
「ほうほう、こういうのがイマドキのオサレな店でかかる音楽かい。するってえとナニかえ、こういうのがハヤりの『かへ・みゅーじっく』とやらかえ?」などという「先入観」のもとに聴き直した…というのではないですが、改めて聴いてみると、コレはコレで面白いのかも。という気になってきたからアラ不思議(笑)。ワタシって単純なのかしらん(爆)。
前回書いたお酒関係の喩えでいうと、こっちは原材料の味がそのまま、樽の中で熟成もしてなければ蒸留もなし、ってな感じの、どぶろくみたいなテイスト。もういちど聴き直してみても、やっぱり演奏自体も荒っぽいし、ハイランド・パイプスの Anton Ban O'Dochartaigh は別として、ホイッスルもフィドルもお世辞にも上手いとは言えません。にもかかわらず(いや、だからこそ、なのかな)、前回書いたような「違和感」がずっと残って、なーんか気になるんですよねえ。
ヘンなCDであることには違いありません。「いい音楽だけを厳選して聴きたい」という方にはまずおすすめできないでしょう。しかしまあ、そういうカタいハナシはこの際ワキへ置きましょう(といっても、この種の変わりダネしか聴かないって趣味もどうかと思いますが)。
…それにしても、前回の SALSA CELTICA と同じく、こちらもアルバムの締めくくりは〈Auld Lang Syne〉なんですよね。誰にでもわかりやすいとか、さまざまなアレンジが効きやすいとか、たぶんいろいろ理由があるんでしょうか。このアルバムでは、トラディショナルなナンバーとしては他に〈Scotland the Brave〉や突然「ジングルベル」が乱入する〈Brave Bells〉、歌詞をオリジナルなもの(よく分からないけど、多分に政治的なことを唄っているのかな?)に変えた〈Whiskey in the Jar〉などをやってます。メンバーのオリジナル曲も、メロディラインを取り出せばストレートなスコティッシュ/アイリッシュとしても演奏できそうなものが多く(どれもどこかで聴いたようなメロディでありフレーズだぞ、という意味でもありますが/笑)、なかなか楽しめます。もっとも、いちばん勢いがあって聴いていて楽しいのはやはり1曲目の〈Gaelic Ska〉とそれに続くダブ・ヴァージョンで、あとの曲はまあオマケみたいな感じではありますが。
とりあえずは、いかがわしさたっぷりの一枚、と言っておきましょう。あ、もちろんコレはホメ言葉で(笑)。
2004 10 26 [face the music] | permalink Tweet
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