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1962年の、パリ(オペラ座)のアメリカ人

 クロード・ベッシーといえば長くパリ・オペラ座バレエ学校の校長だったことで知られているが、個人的にはNHK教育テレビで年1回だか2回だかやっていた「ローザンヌ・バレエ国際コンクール」での、爆笑ものの辛口コメントが真っ先に思い浮かぶ。テレビ番組なので字幕ではなく吹き替えなのだが、翻訳調の言い回しとあいまって、肝心のバレエよりも「今の演技は、さぁてベッシー先生なんて言うのかな」の方についつい期待してしまうのだった。この番組、残念なことにここ数年はいつも見逃してしまっているのだけど、まだベッシーさん出演されてるんだろうか?
 
 そんな(?)クロード・ベッシーにスポットライトを当てた、50分ほどのドキュメンタリーがDVDになっている。どうやらもとはテレビ用っぽい。

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●クロード・ベッシー 〜パリ・オペラ座にかけた夢と軌跡〜
 MISS BESSY A Life in Dancing
 TDKコア/TDBT-0092/2004年7月発売(オリジナルは2002年制作)
 
 クロード・ベッシーは1932年パリ生まれ。パリ・オペラ座のエトワールもつとめ、頂点を極めた時代にはブリジッド・バルドーとも比べれられるほどのスターでもあった。40歳で強制的に(?)引退させられ、73年からはオペラ座バレエ学校の校長に就任、2004年7月に退任。あ、このDVD日本語版の発売はその「退官記念」でもあったのかも。

   ともあれ、50分では短すぎる。DVDはモーリス・ベジャールが振付を担当した『コンクール』という作品のリハーサル風景からはじまり、やがてオペラ座の思い出をからめつつ、彼女のダンサーとしてのキャリアを紹介…と続くのだが、どのシーンももっと見たくなるものばかりだ。
 それにしても、若い頃のベッシーさん、すっごく綺麗である。スタイルもいいし、そこにいるだけで「スターとしてのたたずまい」を感じさせる存在感の持ち主だったんだろう。
 
 
 オペラ座の舞台裏などもふんだんに出てくるからのんびり楽しみつつ観ていたのだけれど、途中で意外な人がでてきてビックリ。
 1950年代初頭、ベッシーさんは当時のオペラ座の芸術監督にあまり好かれていなかったらしく、しばらくアメリカに渡っていたことがあった。ブロードウェイやハリウッドで仕事をしていたらしい。やがてパリに呼び戻され、アメリカ帰りということもプラスして彼女は一躍「時の人」となっていくのだが、アメリカ時代にやっていたダンスをオペラ座でもやろう、ということになって企画したのがガーシュインを踊る、というものだった。そのために彼女はアメリカからジーン・ケリーを呼ぶ。
 ををを、である。ジーン・ケリーってオペラ座で踊ったことがあったんだぁ。いやあ、このDVDを観るまで全く知らなかった。1962年というから、ハリウッドではもう既にMGMスタイルのミュージカル映画が下火になっている頃である。
 
 ということは、だ。ジーン・ケリーとクロード・ベッシーの接点となった作品といえば『舞踏への招待 Invitation To The Dance』(1956年公開)に違いあるまい。この作品は、制作してから4年ほど後に公開されたものの、興行的に大失敗し、批評も振るわなかったという、全編セリフなしのダンス・オムニバス映画だ。私もテレビで1、2度観たものの、どうにも暗く退屈だった印象しか残っていない(個人的にもともとジーン・ケリーの「芸術指向」が苦手で、かの『巴里のアメリカ人 An American In Paris』(1951年)すらあまり好きじゃない、ということもある)。『舞踏への招待』にクロード・ベッシーが出ていたかどうかなんて、まるで覚えがないのだ。慌てて調べてみると、確かにふたつめの「Ring Around The Rosy」に出演している。もっとも、主役級の扱いではないし、言われてはじめてああ、あの人がそうだったの、と気づく程度である。
 
 上で「あまり好きじゃない」と書いた映画『巴里のアメリカ人』だが、この映画は当時大ヒットした(確かアカデミー賞も取ってなかったか)。ジーン・ケリーはこの作品のミュージカル場面をパリで撮影したがったが、予算の都合で実現しなかったという経緯がある。その約10年後、自分がパリに来て、しかもオペラ座のために作品を創るなんて想像だにしなかっただろう。さぞかし感慨深かったにちがいない。
 
 このDVDには、そのジーン・ケリーがクロード・ベッシーとパリ・オペラ座のために振り付けた作品『パ・ド・デュ Pas de Dieux』も、一部分収録されている。フィルムの保存状態がよくないのか、非常に不鮮明なのが残念ではあるが、貴重な映像であることには間違いない。
 同時期につくられたとおぼしい、これはテレビ・ショウ向けの作品だろうか、観客の笑い声付きのショート・コントのようなダンス『コーヒー・ショップ Coffee Shop』も収録されている。こちらは『バンド・ワゴン The Band Wagon』(1953年)でフレッド・アステアとシド・チャリーシが踊った、あの「ガール・ハント・バレエ」の冒頭部分をそのままなぞったかのようなダンスだった。
 

2004 10 30 [dance around] | permalink このエントリーをはてなブックマークに追加

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