« もみじのにしき かみのまにまに | 最新記事 | [DVD]:ブルキナ・ファソのドラムとジェンベ »

[DVD]:舞・長い袖のチベット舞踊

 

DancingLongSleeves.jpg

 
 
 中国制作のテレビドキュメンタリー作品。ナレーションは実に10ヶ国語から選べるというから、DVD時代にふさわしい製品だ。
 
●舞 〜長い袖のチベット舞踊
 A Colour TV Documentary Dancing with Long Sleeves
 DNN-695/2004年発売(2000年度作品)
 製作:中国中外文化交流中心(原題:袖舞凌空)
 発売:コニービデオ
 30分/リージョン:All/NTSC
 
 ちなみに、収録言語は北京語/英語/フランス語/スペイン語/アラビア語/日本語/ロシア語/ドイツ語/イタリア語/ポルトガル語の10種。残念ながら日本語のナレーションはプロフェッショナルなものではなく、原稿の棒読みに終始する。原稿じたいがはなはだ堅いものということもあって、1、2度聞いただけでは何を言っているのかさっぱりわからないのが困りものである。特殊な専門用語を駆使した学術論文を、耳で聞いただけで理解できると思ってんのかコノヤロ、という感じだ。
 なにしろ「え、今なんて言ったの?なんて書くの?それどういう意味?」な固有名詞がたて続けに出てくるから、チベットとその文化に対して何の予備知識もない私には、日本語とは言えほとんど異世界の言語のように聞こえる。たとえば、こんな感じである(以下、聞き取り書き)。できるだけ抑揚のない平坦な調子で、しかも少々早口で読んでいただくと、DVDの雰囲気に近づくと思う。
 チャンムとは主に寺院舞踊を指すので、ホーブまたはカミオロシとも呼びます。チャンムは八世紀後半、サンナジが完成したとき生まれたそうで、千年の歴史があります。
 コーショーによると、チベットの原始宗教のボンキョーギシキにはもうカミオロシオドリがありました。この踊りを系統化・格式化したのはレンゲショーホーシがチベットに入ったあとのことです。ハダマサンバーはボンキョーのけものの仮面踊りとチベット密教のムジョーユカブのコンゴーオドリの一節をミックスしてジンゴホージを行い、ソーヤジのカイガンクヨーをしました。

 …わ、わからねえって(苦笑)。ペラ一枚の簡単なものでいいから、用語解説書が欲しかったなあ。
 とまあ、文句をいいたくなるような製品ではあるけれども、やはり滅多にお目にかかれない貴重な映像が詰まっていることには間違いない。だからこそ、もったいないなあと思うんですけどね。
 上のナレーションのあとに紹介される「チャンム」(日本語ナレーションではチャームとも聞こえる。ちなみにこのDVDとは関係ないが、ちょっと調べたところ、国立民族学博物館の藤井知昭教授は「チャム」という表記を採用している)は、ラマ教の僧侶による仮面宗教舞踊だ。神々の仮面の造型は大らかだけれど威厳があって、見飽きない。
 
 続いて宮廷舞踊の紹介。さきほどのチャンム踊りが男性舞踊手による力強い宗教儀式であったのに対し、ここで紹介される「シヤン踊り(鮮舞)」は女性も交えた静かなもの。ダンスというよりも歌が基本で、歌いながら静かにステップを踏む。全体的に祝賀・祝福の意味があるらしい。
 
 
 衣装や仮面が豪華な宗教舞踊や格調高い宮廷舞踊もいいが、個人的には民間伝承の舞踊が、やはり観ていていちばん楽しい。牛革で造ったボートをかついで踊る「牛皮船舞」や、ヘルスセンターの歌謡ショーみたいな格好の(笑)ラサの「ナンマ踊り」、ブーツでの高速ステップ・ダンス(タップシューズこそ履いてないが、見た目はほとんどタップ。見応えあり!)、一度に数千人が参加する、チベットでいちばん古いダンスという壮大な「チュジェ(鍋庄)」など、それぞれわずかずつの紹介だけれども、とても楽しい。
 
 ラスト近くに出てくる勇壮な空中旋回舞踊「ルバ」に似たダンスは韓国の農楽やサムルノリでも見られるし、原色の衣装や仮面、シンプルな楽器とそのリズムなどなど、このディスクで見られる風景は、もしかすると遠いどこかで自分とつながっているかのような、そんな気分にさせられる。
 アジアって広〜い地続きなんだねえ、ということを、改めて認識できるかもしれない一枚だ。
 
 

2004 11 24 [dance around] | permalink このエントリーをはてなブックマークに追加

「dance around」カテゴリの記事

comments

 

copyright ©とんがりやま:since 2003