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[CD]:Mari Boine / Leahkastin

 
 

Leahkastin

 
 寒くなってくると、北の国の音楽が無性に聴きたくなる。もっとも、この冬はまだ身を切るような寒風をほとんど味わっていないのだが。それはともかく、これからしばらくは、CDラックから取り出すアルバムも北のものが増えてくる。たとえば、こんな一枚はどうだろうか。
 
●Leahkastin / Unfolding
 Mari Boine
 Verve/PolyGram, 523889-2, 1994年
 
 マリ・ボイネ Mari Boine はノルウェイ北部はラップランドの人。私がこの人の声を最初に聴いたのは、同じノルウェイのジャズ・サックス奏者ヤン・ガルバレク Jan Garbarek の1993年のアルバム『Twelve Moons』(ECM 1500 , 519500-2)で、彼女はその中のたった一曲に参加しているだけだったが、あまりに強烈なその声のせいでガルバレクのサキソフォンよりも遙かに強く印象に残ってしまった。
 ていうか、私のいつものパターンなんだけど、ファースト・インプレッションが拒否反応を起こすくらい強烈なものだった場合、少し時間をおいてから再び聴き直してみると一転して大ファンになってしまう。私にとってマリ・ボイネもそんなひとりだ。
 
 『Twelve Moons』では、マリ・ボイネは8曲目の「Daravánan」という曲にヴォーカリストとして参加している。ちなみに、彼女のオリジナル作品。
 しかし、これが「ヴォーカル」なんだろうか、と当時の私はアタマを抱えた。咆吼というかうなり声というか叫び声というか。スマートな言い方をすれば「ヴォイス・パフォーマンス」になるのだろうけど、そんな「音楽」に慣れていない耳には、なんだか動物的な、つまりは不気味な「音」にしか聞こえなかった。…と、当時の印象をできるだけ再現しようとして書いてみた。今聴きなおすと別にどうってことないのだが、「慣れ」というのはおそろしいというか、それとも、それだけ自分の感受性が鈍ってきたというべきか。
 
 
 さて、表題のアルバム。1994年の作品だが、私が入手したのはずっと後になってからだ。「ヨイク」の存在を知ったのと、ほぼ同時期だったか。
 もっとも、ヨイクはマリ・ボイネのバックグラウンドではあるけれども、イコールではない。という気がする。彼女の声はクラシックやポップスのようなわかりやすい発声方法ではないにせよ、サウンドそのものはうんとポピュラリティを持つものだし、ヒットチャートを賑わす音楽ではないだろうけれども、聴けば誰の耳にもずっと残ってしまうはずだ。ま、まさにそのあたりが「ワールド・ミュージック」たる所以なんだろうけど。
 
 冒頭で私は「寒くなってくると、北の国の音楽が無性に聴きたくなる。」と書いた。といって、このCDを聴いて寒さを感じるかといえば、必ずしもそうではない。ちょうど一年前にも書いたことがあるけれど(なんともマグマな夜だった。参照)、私は北欧の音楽には根っこの方にマグマのような熱い塊があるような印象を持っている。そのくせ同時におそろしく理知的でクールな一面もあって、すさまじい冷気とものすごい熱気が不思議に調和している、そんな奇妙さに惹かれるからこそ私は北欧の音楽を聴いているのだろう。マリ・ボイネなどは、まさにそういう音楽だと思う。track01「Gumppet Holvot (The wolves howl)」やtrack03「Cuovgi Liekkas (Radiant Warmth)」の妖しい透明さから始まって、track06「Mielahisvuohta (Lunacy Lunacy)」のような迸る疾走、そしてtrack11「Dá Lean Mun (Here I Am)」のような静謐さまで、全11曲59分の緊張感あふれるショート・トリップ。…うん、やっぱりこれは、ピンと張りつめた冬の夜の冷気の底で聴くのが、もっとも似合うのかもしれない。
 
 

2004 12 15 [face the music] | permalink このエントリーをはてなブックマークに追加

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comments

明けましておめでとうございます。
初めましてです。
知人からマリ・ボイネの事をちらっと聞き、
いろいろ検索していてこちらに辿り着きました。
今日はこのCDを購入しようとあちこち廻ったのですが、探し当てることができませんでした。
(他の盤は発注可能でしたが、どうしてもこれが聴きたくって。。。)
今度はネットで探してみようと思います。
早く聞いてみたいな。
私はHPを持っておりませんので、覗きにくるばかりですが、これからも楽しみにしております。
またこっそり覗かせて頂きますね♪

posted: (2005/01/04 23:52:37)

はじめまして、コメントありがとうございます。
ここで取り上げている本やCDは、今では入手が困難なものも多いのですが、あきらめずに探してみてください。思わぬときにおもわぬところでひょいっと出会うこともありますし。

>またこっそり覗かせて頂きますね♪
ありがとうございます。とっちらかったウェブログですが、今後ともよろしくお願いします。

posted: (2005/01/05 10:44:21)

 

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