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[book]:The Last Flower
あまりにも有名なのでここで取り上げるのもどうかなという気もするが、2005年の年頭にふさわしい本だろうと思うので、えいやっとエントリ。

●そして、一輪の花のほかは…
ジェイムズ・サーバー作・高木誠一郎訳
篠崎書林/1983年5月初版 ISBN4-784101586
装丁者名記載なし
原題は「THE LAST FLOWER」。1939年の作品である。ジェイムズ・サーバー James Thurber (1894.12.8〜1961.11.2)は雑誌 The New Yorker で活躍した人で、不思議な味の短編小説やスケッチみたいなタッチのカートゥーンをたくさん遺している。
この絵本は、上に書いたように1939年の作品だが、話は第十二次世界大戦が終わったところからはじまる。といって別に未来SFではない。敢えていえば寓話であり、寓話とは時代を超越するものでもある。だからこれは、過去の話としても未来の話としても、そしてもちろんいま現在の話としても通用する。
しつこいようだが1939年の作品だ。何月頃に制作されたのかまでは知らないが、ちなみにドイツ軍がポーランドに攻め込んだのはこの年の9月1日。2日後には英国とフランスがドイツに宣戦布告し、ここでようやく正式に第二次世界大戦が始まった。とはいえ、もう何年も前から世情は殺伐としている。大恐慌から数えても10年近い。いつ戦争が始まってもおかしくないような、そんな雰囲気が、この時代を生きる人々の間に充満していたに違いない。ともかく、サーバーはこの作品を「第十二次世界大戦の終結後」からはじめるのである。単純に、寓話性をより高めるための手法に過ぎないのかもしれないが、1939年のサーバーの胸中に去来していたかもしれない「深い諦念」と「わずかな希望」への錯綜した思いを、この書き出しから感じ取ることができる。
戦争が終わり、文明も芸術も音楽もこの世から消滅し、愛さえ失われた地上。わずかに生き残った人々は、しかしやがて生命の幸福を見出し、歌う喜びをとりもどし、ふたたび文化をつくりだしていく。だが、仕立屋や車大工や画家や詩人や奇術師が生まれていく一方で、兵隊や大尉や元帥や民族解放者も生まれることになり、そしてやがて…。
2005年、今この時代を、いつか来た道だと感じている人は多いようである。「もはや戦前ではなく、戦中である」という趣旨の文章さえ、最近どこかで読んだ気もする。サーバーの作品では、結局「第十三次世界大戦」が勃発してしまうことになるのだが、たとえ地球のどこかが未曾有の大災害にみまわれようとも、同じ地球の別のどこかでは相変わらず凄惨な争いを止めない現実をみるにつけ、「世界はやっぱりサーバーの言うとおりになってしまうのか」と暗澹たる気分に陥ってしまわざるを得ない。
上に掲げた書影は1983年に出版された日本語版だが、実はとっくに絶版となっている。ネットで古本を探すと、今ならまだ入手は不可能ではないようだ。残念ながら原書の方も現在は「Out of Print」となっており、両者とも復刊が望まれるところでもある。
なお私自身は未聴だが、関西合唱団が依頼し外山雄三さんが作曲した混声合唱組曲に、この「そして、一輪の花のほかは…」が使われている由(1983年)。
作者および作品への参考・関連記事として、以下の2つのサイトをご紹介させていただきます。
Centaury:極私的アメリカ文学ファイル:James Thurber
Spaceintro:Bookofdreams:そして一輪の花のほかは・・・ / ジェイムス・サーバー
2005 01 04 [booklearning, design conscious] | permalink
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