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モダンな街・心斎橋

 

sinsaibashi

“大大阪”誕生80年記念 モダニズム心斎橋〜近代大阪/美術とシティライフ〜
■会 期:2005年1月15日(土)〜3月21日(月・祝)
■休館日:毎週水曜日
■開館時間:午前11時〜午後7時(入館は6時30分まで)
■会 場:大阪市立近代美術館(仮称)心斎橋展示室
■参 考:ストリート・アートナビ

 実に興味深く、かつ面白い展覧会でした。私にとって大阪という街は知らないことの方が多い(いまだに難波駅で迷子になってるし)謎めいた街なので、こういう展覧会はたいへんありがたいです。
 
 私の場合「心斎橋」と聞いてすぐに思い浮かぶのが大丸百貨店だったりゴミゴミと狭い商店街の賑わいだったり高級ブランド店が立ち並ぶ長堀通周辺だったりアップル直営店だったりアメリカ村の三角公園だったりします。で、展覧会の最初にまず「心斎橋の変遷」が掲示してあって、ようやく「あ、そういや《橋》だったんだよな」と。なにせ長堀川が埋め立てられる前の時代なんて全く知らないもので(汗)。
 江戸時代の木造橋→明治初期の鉄橋時代を経て、明治末期に石造りが完成するんですが、その渡り初めの式典風景が、4コマの連続写真みたいな絵はがきになって残っています。ものすごくたくさんの人がわらわらと群がって、橋をあっという間に埋め尽くしてしまう写真は思わず笑えます。ここは江戸の昔から大阪随一の繁華街だったんですね。
 
 昭和初期には高島屋・そごう・大丸が軒を並べていて<百貨店の街>だった心斎橋(江戸時代はみな呉服屋ですね)。そういえば大丸心斎橋店の内外装には、今もその名残りが見られます。エレベーターの表示板とかがまんまアールデコで、すごくかっこいいです。今回も展覧会を見た後に寄りましたが、改めてしげしげと眺めてみると外装にも昔の風情がたくさん残ってるんですね。古いものを残しながらの補修・改装は、手間や費用が余分にかかるでしょうが、貴重な文化財でもありますし、なんとかビル全体がこれからも長生きして欲しいものです。
 会場では、かつてそごうで使われていたエレベーター扉(なんと螺鈿ですぜ)や看板や広告チラシ類も展示されていて、当時の最先端だった日本風アールヌーボー/アールデコ・デザインを堪能できます。
 
 戦前は<東の銀座・西の心斎橋>と並び称されるほどだったというから、単なる商業の街という以上に、心斎橋はまた<アートの街>でもあったそうです。一流の日本画家・洋画家が百貨店の宣伝部で筆をふるっていたかと思えば、丹平ソーダ・ファウンテンには前衛写真家たちが集まっていたり(ちなみに、そんな写真家の一人にあの手塚治虫さんのお父さんもいたとか)、とにかく多彩な才能が往来していたようです。うーん、なんだか想像するだけでワクワクしてきます。
 
 
 
 戦前の街並みや、古いお店の写真を無心に眺めていたら「わたし、この時代のこと覚えてますのよ」と声をかけてきたご婦人が。生粋の心斎橋生まれで、ご実家が帽子屋さんとのこと。1920年代のお生まれというから、まさしくこの展覧会の時代の方じゃないですか。「いちばん最初の地下鉄は梅田から心斎橋までだったんですよ」とか、戦前の商店街の様子とかをお話してくださいました。こちらにもう少し基礎知識があればもっといろいろ楽しいお話を伺うこともできたんでしょうが、いかんせんこちとら大阪モンじゃないもので、はぁはぁと聞いているだけだったのが残念。でも、展示物のアレコレを本当に嬉しそうに観てらっしゃる様子が、とても印象的でした。
 
 
 専用の図録はなかったんですが、その代わりに雑誌『大阪人』が展覧会に合わせた特集をしているので購入しました。展覧会に出品されたもの以外の写真も載っています。
 こんな面白い展覧会を観た後は、やっぱり<心ブラ>したくなるのは当たり前。で、ぶらぶら歩いていたら心斎橋アセンスの店頭に『心斎橋筋の文化史』なる本があったので、ついでに購入しました(平成9年に大丸心斎橋店で催された同題の展覧会の図録を兼ねていたとのこと)。こちらは歴史や沿革などをより詳しく知りたい人向け、かな。大阪といえば今ではうどんですが、昔はそば屋の方が多かったとか、なかなかトリビアルなネタも拾えますよ(笑)。
 
【写真上】
●大阪人 2005年2月号(vol.59-No.2)「特集・モダニズム心斎橋」
 発行/財団法人 大阪都市協会
 アートディレクター:塩川章
 
【写真下】
●心斎橋筋の文化史
 橋爪紳也監修/1997年5月刊
 発行/心斎橋筋商店街振興組合
 装丁者名記載なし
 
 

2005 01 24 [design conscious] | permalink このエントリーをはてなブックマークに追加

「design conscious」カテゴリの記事

comments

興味深い展覧会ですね。
ぼくにとっては心斎橋というと、まず阪根(さかね)です。某き○んさんと初めて会ったのもそこですし、アウレリオ・セジェスのLPを買ったのもあそこでした。
記事を拝読して、また出かけたくなりました。

posted: Micheal (2005/01/24 18:16:34)

コメントありがとうございます。
余所者の私でもすごく興味深かった展覧会でしたから、大阪にゆかりのある方、思い入れのある方がご覧になったらもっと面白いんじゃなかろうかと思います。3月まで開催してるようなので、ぜひぜひ。

阪根は、私は名前しか知らないんです。楽器と輸入レコードのお店なんでしたっけ。70年代ごろの心斎橋もさぞ面白かったんでしょうねえ。。。

posted: とんがりやま (2005/01/25 13:19:44)

ちょいと話題がそれるかもしれないですが、心斎橋関連ということでお許しを。
昔「百貨店」と言うと、大阪では心斎橋辺りがメインで、扱っているものが呉服などがほとんどで、今のように何でも売っているわけではなかったそうです。ですから心斎橋の百貨店=高級感ってイメージだったそう。
それに目をつけたのが、阪急電鉄を大きくした小林一三。彼は日本で始めてターミナル百貨店を作った人です。梅田駅に大きな阪急百貨店を作ったのです。呉服などがメインであったイメージを壊して、庶民が一般的に利用できるようにと、地下街に食堂を作ったりしていました。これが大当たり。「ソーライス(ご飯にソースをかけたもの)が人気メニューだったそうです。今ではターミナルとなる駅に百貨店があるのは普通ですが、小林一三の先見の明はすごいですね。

posted: (2005/01/27 14:39:35)

コメントありがとうございます。
余所者の与太な印象に過ぎないですが、梅田ってどうも薄っぺらいイメージがあります。で、お話を伺って、ひとつには歴史の長さが違うっていうのはあるかもしれないな、とふと思いました。梅田に人が集まるようになったのは、やはり電車が通ってから以降のことなんでしょうか。

posted: とんがりやま (2005/01/27 15:08:58)

さらに余所者の私には,どの辺りを「梅田」と呼ぶのかさえ全く分かってないので勘違いなど許しを。米朝師匠の『米朝ばなし・上方落語地図』は「堂島~新町~北新地~鶴乃茶屋」から始まりますが,堂島は米相場で儲けた旦那衆が住み,新町は日本三大遊郭のひとつ(戦後の復興が遅れたのはその「格」のせいだったとか)で,北新地は富豪や役人の遊ぶ遊興地だったそうで。で,梅田は明治の中頃まで美しい野原で,茶屋の並ぶ大阪三郷の人々の憩いの場だったとか。それぞれの土地に色々な歴史が刻まれているものなんですねー。こちらに住み始めた頃ミナミはコワイ所と思い込んでいて心斎橋方面へは長いこと行きませんでした。今となっては笑い話です。

posted: わたなべG (2005/01/28 2:13:31)

キタとミナミでは、歴史的に見るとミナミの方が古いと言われていますね。キタは梅田周辺から天満、堂島、中之島の辺りのこと。ミナミは、南波から千日前、道頓堀、心斎橋筋近辺をさします。
梅田の名前の由来ですが、池や沼を埋め立てて作った水田なので、埋田(うめた)と読んでいたこともあるそうです。
Gさんのおっしゃる通り、キタは色町でした。でも元々はミナミに色町があって、それからキタが開発されてから、そちらへと移って行ったそうですよ。

「キタは大阪の顔である。ミナミは大阪の内蔵、その中の胃腸である。ついでに船場は心臓である」(「大阪学」大谷晃一著、新潮文庫)

PS:
>私の場合「心斎橋」と聞いてすぐに思い浮かぶのが大丸百貨店だったりゴミゴミと狭い商店街の賑わいだったり高級ブランド店が立ち並ぶ長堀通周辺だったりアップル直営店だったりアメリカ村の三角公園だったりします。

あそこのアップルのお店はスタイリッシュですね。立ち寄った時にiPodを衝動買いしました(苦笑)。
最近アメ村を歩いていると、「ああ、ここはもう自分の年齢には合わないな」とちょっとした寂しさを覚えます。

posted: (2005/01/28 9:21:35)

梅田で一言。東のほうに歩けば、今でも野っ原の感覚があるように思います。G さんのおっしゃるような歴史は知りませんでしたが、昔からそう思ってました。特に、阪急東通商店街を東へ抜けるあたりと、太融寺のあたり。
先日、所用で太融寺の先へ行き、用を済ませたあと、同寺の淀君の墓に参りました。あそこの境内は無秩序のへんてこりんな空間で、歩いている誰とでも話ができそうな不思議な感じです。もっと昔、同寺界隈を歩いていたら、ぶつぶつ口の中で言いつつ歩きながら修業する枝雀さんとすれ違ったこともあります。

posted: Micheal (2005/01/30 21:49:38)

 

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