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"The Cartoon"〜The New Yorker 誌の80年(1)
前回エントリのジェイムズ・サーバーつながりで、The New Yorker の話題など。
特に意識してコレクションしているつもりはないのだが、気がつけばThe New Yorker 誌のカートゥーン・アルバムがいくつか溜まっている。別にマニアックな自慢をする意図ではなく、こういう本もあるということだけ、少しご紹介したい。
同誌は1925年創刊というから、もう80年にもなる。同誌に掲載されたカートゥーンはときどきまとめて出版されており、それはそれでなかなか貴重な資料集ともなっているのだ。
そこで、私の手許にあるものを並べてみよう。おそらくここに挙げる以外にも同種の本が多数出ていると思うが、ま、率直に言ってよほどの研究者でもない限り、一冊見ればそれで充分だろう。
●The New Yorker Twenty-Fifth Anniversary Album 1925-1950
Originally published : New York : Harper & Row, 1951
Reprint : Perennial Library, 1986
ISBN0-06-091357-6
Design and Layout by Carmin Peppe
1951年のオリジナル版はハードカヴァーだったそうだが、これは1986年に再版されたペーパーバック版。雑誌創刊時からの四半世紀分の掲載漫画を集めたもので、収録作家は46名。ただし、索引がないので、誰がどの作品を描いているのかとか、特定の作家の作品ばかりを集中して追いかけたいとか、そういう面でまるで役に立たない。また、5年区切りで計5章にわけた編集になっているが、それぞれの作品の正確な掲載年月等は一切記載されておらず、結局のところこの一冊は「アメリカにおける1925年から1950年」をざっくり俯瞰するためのものでしかない。
とはいえ面白いもので、ゆっくり眺めていると、たとえば絵のスタイルひとつとってもあぁいかにも戦前だなとか思うし、第二次大戦中の漫画はやはりどこか暗さが漂うなというのも感じられる。
漫画というのは anonymous の手によるものであり、その無名性の故に世相を穿ちうる存在である…とThe New Yorker 誌が主張しているのかどうかは知らないが、少なくともこの本をつくった1951年の同誌(もしくは編集者)は、個々の作品の作家性云々にはあまり関心がなかったとみえる。さしずめ「漫画で読む社会世相史」のごとき編集で、当然のことながら異国の、それも同時代を生きたことのない人間が読んでも、ほとんどピンと来ない(つまり、笑えない)。
もっとも、カートゥーンとはいえ、ふた昔前の日本の新聞に載っていた政治風刺漫画のようなものはここには載っていない。それが The New Yorker 誌の方針なのか、アメリカ漫画の特徴なのかは知らないけれど。セリフやキャプションのついていないナンセンスものも多数あるし、のちの時代のような「タッチの画一化」もまだ少なく、個性的で面白い絵が多いから、たんにぼんやり眺めているだけでもそれなりに楽しめる。サーバーはもちろん、チャールズ・アダムス Charles Addams やソール・スタインバーグ Saul Steinberg の作品がたくさん収録されているのも非常に貴重。というか、この3人の作品をたっぷり見られるという点だけでも、この本を手に取る価値はある。スタインバーグはやはりこの時代のがいちばんだなぁ。
●The New Yorker Album of Drawings 1925-1975
Originally published :1975
Published in Penguin Books, 1978
ISBN0-14-004968-1
Design and Layout by Carmin Peppe
1975年にアメリカとカナダ、1976年に英国で出版され、78年にはペンギンブックスからも出されるようになったというから、いかに人気が高かったかがわかる。私の手許にあるのはペンギンブックス版だが、1981年の時点で三版を重ねている。
先の四半世紀から、今度は一気に半世紀分である。総ページ数がその分倍になってる、ということはないので、収録作はかなり厳選しているのだろう。1950年以前の漫画は、もちろん前の本と重複している作品も多いけれども、こちらでしか見られないものもけっこう多い。いったい、The New Yorker って一冊あたりどれくらいの漫画を掲載しているんだろうか。
収録作家数は一気に倍増で、93名。相変わらず索引もなければ掲載年も不明だから、本格的な研究資料としてははなはだ不十分。ま、そういうことは一般的には別に気にならないものなんだろうか。(この項、続きます)
2005 01 06 [design conscious] | permalink
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