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"The Cartoon"〜The New Yorker 誌の80年(3)
そういえば、そもそも The New Yorker ってどんな雑誌なのさ、という説明が全く抜けている。実は私はまともに読んだことがないのである。だから説明のしようがない(開き直ってどーする)。
ということで、ネットで検索したいくつかの記事を紹介リンクして、解説に代えさせていただきたい。
●萬晩報:「ニューヨーカー」と反戦の歴史(2004.05.11)
●萬晩報:日本の現代の寓話がアメリカに上陸した日(2004.08.23)
雑誌「ニューヨーカー」がどういう性格の雑誌なのか、このふたつのエッセイに端的に描かれています。
●Sheemer's Weblog:ニューヨーカーマガジンの表紙(2004.05.14)
表題通り、表紙絵について詳しい言及がなされています。
●モーツァルティアン 4月号(続):ニューヨーク便り(2) カートゥーン館設立趣意書(2000.04.16)
「ニューヨーカー」掲載の漫画に対する愛情あふれる文章です。そうか、作品集はかつては毎年出版されていたんだ。なぁるほど。
* * *
…ということで、本題。

National Academy of Design, 1984
Designed by Derek Birdsall
ISBN記載なし
これはニューヨークの National Academy of Design が作った大判の画集。1925年から1983年にかけて同誌の表紙を飾ったイラストレーションから、季節感を感じさせるものを中心にセレクトしている。原画を大きく、その対向ページに誌名等が入った完成型を小さく掲載するなど、いかにもデザイン専門書らしい編集がいい。原画サイズや使用画材、もちろん制作年(掲載号)などのスペックもしっかりしていて、さすがは National Academy、アートとしての敬意をしっかり払ったつくりだ。
掲載図版は80点。作家数は36名で、ここでも Charles Addams, Robert Day, Charles E. Martin, Geroge Price, William Steig, Saul Steinberg などの常連作家の名前を見つけることができる。
この5年後に、それまでの全ての表紙絵をまとめた決定版が出版される。

●The Complete Book of Covers From The New Yorker 1925-1989
Alfred A. Knopf, 1989
ISBN0-394-57841-4
Jacket art by Rea Irvin
Jacket Design by R. D. Scudellari
全点フルカラー掲載の美しい大判画集。序文はジョン・アプダイクが書いている。さすがに全作品を大きく収録というわけにはいかないのだが、いやいや、何度眺めていても全く見飽きない。索引もしっかりついていて、資料的価値は非常に高い。
「Complete」だからもちろん全作品収録(計3,277点だそうな)で、もうここまで来ると作家数を数えるのはメンドウなのだが(笑)、えーとおそらく総勢161名。
雑誌の表紙という性格上、単純に考えると明るく楽しい図柄が多い筈だが、やはり暗い時代だと色遣いまで暗く重苦しく思えるのは、気のせいだろうか。1920年代から30年代の、いわゆる「アール・デコ期」の装飾的なグラフィックは今みると非常に新鮮で、一転して40年代はリアリズム(むろん戦争テーマも非常に多い)。1950年代もまだまだしっかりと力強いタッチの絵が続くが、60年代から徐々に軽くなり、70年代後半以降は、ほとんどの表紙がとても明るい色彩ばかりで描かれるようになる。
ここに描かれたテーマを細かく分析していけば、これ一冊からアメリカの市民生活史を読み解くことすら可能に違いないし、その種の論文はとっくに誰かが書いてることと思う(調べてないけど)。
いずれ近い将来、1990年以降を網羅した作品集も出るに違いない。今からとても楽しみだ。(この項、さらに続きます)
2005 01 08 [design conscious] | permalink
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