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シャン・ノース・ダンスのビデオのこと

 
 前回のエントリで「アイリッシュの他のダンスと違ってシャン・ノース・ダンスは専門のビデオも(たぶん)まだ市販されておらず」と書いたけれど、「専門」がないだけであって、断片なら市販のビデオでも見られないわけではない。ついでなので、ここでそのいくつかをご紹介してみたい。ただ、今しばらくは時間がとれなくて、記憶だけで書いているのもあるのであしからず。ほんとうは全部見直してちゃんと再確認すべきなんだけど、ま、訂正や追記は随時やりますんで、ということで。
 
 
 ところで、なにを「シャン・ノース・ダンス」と言うかについては人によってさまざまな見方があるはずで、だからはたしてシャン・ノースとして紹介していいのかどうか悩むものも中にはある。とりあえず、例によって勝手に分類してみよう。
 
● A)狭義のシャン・ノース・ダンス - 1 -
 伝統主義的な立場から定義すると、シャン・ノース・ダンスは「アイルランド西部、カウンティ・ゴールウェイの、コネマラ地方に伝わる古いスタイルを保ったソロ・ダンス」だという。当然、ダンサーもコネマラ出身者、っていうかコネマラの人でなければシャン・ノース・ダンサーと名乗るべからず、という意見もありそう。
 
● B)狭義のシャン・ノース・ダンス - 2 -
 前回「コンペティション(競技会)」のテレビ放映を見たと書いた。競技会があるということは「募集要項」があり「競技ルール」があり「審査基準」があるということだ。ならばその要項なりルールなりをもってシャン・ノース・ダンスの定義とできるだろう。一曲のあいだに必ず○○というステップを含む必要があるとか、逆に△△ステップを使ってはならないとかあるかもしれない。ネットでそれらしきものを探し出すことが出来なかったのであくまで想像ですが。もしも参加資格が「コネマラ出身者に限る」だったらびっくりかも。
 
● C)広義のシャン・ノース・ダンス - 1 -
 テロップやパッケージに「シャン・ノース」と表記してあるもの。ジャンル付けというか名前付けみたいなのには、たぶん大半のアイルランド人はそれほどこだわりがないと思う。だから「コレはシャン・ノースなのだ」と自己申告すれば、そのままシャン・ノース・ダンスになってしまう…のかもしれない。
 
● D)広義のシャン・ノース・ダンス - 2 -
 シャン・ノースだかシャ・ノアールだか知らねェけどヨ、オイラはガキの頃からずぅぅぅっっっとこういうダンスをやッてたんでェ。え? なんて言う種類のダンスかって? さァて、わからねェなァ。単に「ダンス」って言っちゃってちゃいけねェってのかい?
 …くどいようだが、大半のアイルランド人は、おそらくジャンル分けだの定義だのにはあまり関心がないんである、たぶん。要するに「ソロ・ダンス」なんであって、しかもそれぞれ工夫したり独自性を出したりより個性的である場合、ある意味で一人いちジャンルというか、もしくは「その他のスタイル」としか括りようがないダンスになるのである。ひょっとすると、そういうのも「シャン・ノース」の中に入れてしまってもいいかもしれない(と遠慮がちに書いてますが、個人的には D がいちばんしっくりきてます、ハイ)。
 
 
 で、それぞれに対応するビデオソフトはというと。
 

 
 magicofIR●The Magic Of IRELAND
 OSSIAN/OSV 3/2001年?
 分類 A 。これはアイルランドの音楽とダンスを総花的に紹介したビデオで、お得な一本。セット・ダンスやモダン・スタイル・ステップ・ダンスに混じって、デッキブラシを小道具に使ったダンスが登場する。エプロンをつけて、いかにも従業員がステージを掃除してますよ、てな雰囲気であらわれて、おもむろにダンスを踊り始めるのだ。アクロバティックな小技が面白い。こういう宴会芸的な趣向もシャン・ノース・ダンスの楽しさのひとつだろう。このビデオには収録されていないが、玄関のドアを外して床に置き、その上で踊る<ドア・ダンス>というのもある。あらかじめドアの四隅にグラスいっぱいに注いだ黒ビールを置いておき、グラスを倒したりビールをこぼしたら負けなんだそうだ。あぁ、ビールがもったいないぞ。
 
 そんな余興的なダンスではなくストレートなシャン・ノース・ダンスというと、RTÉの名作ビデオ『Come West Along The Road』(VC56)の中に、確かそれらしきダンスが入っていたと記憶している。そのうち確認します。
 
 
 分類 B は今のところ、市販ものがない…と思う。前回書いたように、せっかくテレビ放送をやってるんだし、せめてダイジェスト版でも作ればけっこう売れると思うんだけどなぁ。
 
 
Mor ●Matt Cunningham and his Band『Come to the Céili Mór』
 Aínm Music/ARV 008/2003年
 分類 C 。全体としては、アマチュアのセット・ダンサーによるセット・ダンス・ケーリーを収録したもの。途中でデモンストレーションとして競技用スタイルのセット・ダンス(見応えアリ)と、5人のダンサー(Denis O'Connell、Marie Hannifan、Eilis Murphy、Patrick Gleeson、Gerard Gunn)によるソロ・ダンスがあり、ソロ・ダンスの方に「sean-nós」のテロップが入る。本格的なシャン・ノースというよりも、ケーリーの合間のお楽しみ的なもの。フツーのモダンじゃん、というものからかなりぐにゃぐにゃ(笑)なへんてこなものまで、なんでもアリ。5人も登場する割にはちょっとしか映ってないけど、長々とやるようなシロモノでもないように思う。
 
 
 Dervish_MsNS●ダービッシュ『ミッドサマーズ・ナイト・セッション』
 TRVH0090/トリニティ・エンタープライズ(2002年)
 (右の写真はオリジナル版 Dervish:The Midsummer's Night Session/Whirling Discs/WHRL VC 001/1999年)
 分類 D としておこう。ダービッシュの白熱した演奏が繰り広げられるなか、エンディング近くになって、演奏陣の熱気に煽られて思わず躍り出たという感じでダンスが登場する。一見、正式に習ったダンスというよりも自己流で好き勝手に踊っているように見えて、実は…やっぱり自己流でしょうな(笑)。けれども、これぞダンスの原点というか、良い音楽に自然に身体が反応してしまった、というストレートさがあって、これはこれで素晴らしいダンスである。
 
 分類 D には、おそらくエーデン・ヴォーハンお得意のソロ・ステップも含めてもいいんじゃないだろうか(もう5年も前なんで恥ずかしいんだけど、こういう記事を書いたことがあるのでご参考までに)。市販ビデオでは上記RTÉの『The Pure Drop』シリーズのどれかに、エーデンのそのステップが収録されていたんじゃないかという気が。すんません、これもいつか確認しときます。
 

2005 02 25 [dance around] | permalink このエントリーをはてなブックマークに追加

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