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ジュンク堂京都店大リニューアル
ここんとこアイリッシュなイベント続きで、3月に入ってからゆっくり本を買うこともままならなかったんだけれど、久しぶりにジュンク堂京都店に行ったらびっくり。リニューアルをしていたのだ。これほど大がかりな改装は、ひょっとして1988年の京都店開店以来はじめてなんじゃないだろうか。
1階から5階まで各フロアの書棚を全て2メートル超の背の高いものにかえ、以前の見通しの良いゆったりとした雰囲気はなくなったものの、その分蔵書量は確実に倍増している。もともとジュンク堂は、部数の少ない本でも確実に手に入る店として重宝していたのだけれども、これでますます利用頻度が高くなることだろう。
と、さも「ジュンク堂マニア」みたいな書き方をしてるけれど、私は堂島の大阪本店と天満橋の旧松坂屋にあった天満橋店ぐらいしか行ったことがない。神戸の三宮センター街(確かあそこが本社だったはず)に最後に足を踏み入れたのはそういえば震災以前(ちなみに、ジュンク堂の全国的な開店ラッシュは1990年代後半からではなかったか)。ということで、実質上大阪の2店舗と京都店だけしか知らないんだけれども、まぁこの3店の品揃えをだいたい知っていれば充分でしょう。
リニューアルした(正確には、19日(土)まではまだ2階が工事中)ジュンク堂京都店は、それまであった喫茶コーナーがなくなったのが残念なんだけど、その分商品をめいっぱい詰め込んでいるんで、本好きならたっぷり一日遊べることでしょう。とりあえずは棚構成を覚えるために、私もしばらく通い詰めになりそう。
少々驚いたのは、レジが各フロアごとにはなく、全精算を1階に集中させていること。各フロアに買い物かごがあるから、買う本を持ってフロアを行ったり来たりするのには支障はないんだけれど、書店経営の最大の敵<万引き対策>は大丈夫なんだろうかと、他人事ながらちょっと気になる。日本ではあまり事例を聞かないけれど、入り口で客のカバンを預かるぐらいはした方がいいんじゃないのかな。ま、そんな馴染みのないことをしたら面倒がって誰も来ないのかもしれませんが(この店は客を信用しねえのかよぅ、とかいう罵声も聞こえそうだし)。
それにしても、こういうメガ書店に来ると、いま出版点数ってものすごく増えてるんだなあと改めて思う。これって一見、景気のいい話に見えるんだけれど、出版業界がいかに自転車操業なのかがかえってよくわかるという話でもあったりするのだ。本に囲まれてるのが大好きな私ではあるけれど、「一冊の本と出会う」ためにこれだけの大きな空間が必要になるというのは、読者にとっても出版社にとっても「良いこと」だとはあまり思えないのである。
さらに新刊出版点数は1982年に年間30000点を突破。その後15年で倍以上(62000点)へと増加した。一年間に今では7万点を越える新刊が出版されているのですぜ旦那!? しかし一点あたりの平均発行部数は年々減少しており、2001年にはついに一点あたり2万部を割り込んだ。これはどういうことだろうか? つまり、前の項でお伝えしたような、タイトル数が増えてはいるものの、小部数で寿命の短い、いわば「Hit&Away」つまり「出して、その時売ったら終わり」というものが増えていることも事実だ。簡単に言えば粗製濫造というわけですな。(白取特急検車場:「出版不況」--細く長〜く…ではダメか? その2)
引用させていただいた白取千夏雄さんのエントリには、日本一の売り上げを誇る「書店」は実はコンビニだ、という事実も紹介されていたりして、いろいろと考えさせられることが多い。個人的には、ネット書店よりも路面店、大型店よりも中小店、雑誌ならコンビニよりも個人経営店で買うようにしたいんだけど、今や週刊誌を買おうにも個人規模の店がほとんどなくなったし、残業続きの身には終夜営業のコンビニが助かるのもまた事実。
思い返せば、退屈しのぎの雑誌買いは真夜中のコンビニで。気合いを入れて本を探したいときは半日ツブしてジュンク堂のようなメガストアで、という風に、本を買う「場」が完全に2極化している今日この頃だったりします(アマゾンなどのネット通販を使うのはギリギリの最終手段というか、ここ2年ほどは全く利用しなくなった)。
…もっとも、これ以上新刊を買う前に、まず本とCDにあふれた自分の部屋をなんとかしろよゴルァ、って声も聞こえてきそうで。幸いなことに、床はまだしばらく抜けそうにはないですが(爆)。
2005 03 18 [booklearning] | permalink Tweet
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comments
TBありがとうございました。
中小・零細書店が苦しいのは淘汰だという説もありますが、大きな、それもメガ書店クラスの書店が読者に対しての環境整備など、顧客を向いて商売をしているのは事実なので、いい悪いという単純な話ではないのが現実ですね。魅力のある書店、であればそれが大きい小さいではなく、お客は来ると思います。
posted: 白取 (2005/03/18 16:29:02)
コメントありがとうございます。
単なるノスタルジーなのかもしれませんが、ちょっとした時間つぶし、たとえば次の予定までに20分ほど空いちゃったぞというときに、なにげに立ち寄れる小さな本屋さんが少なくなったのは、いささか残念な気もします。
売れ筋の雑誌と小・中学生向けの参考書とほんの少しの文庫本とごくわずかの新刊コミックス、という(どこでも)似たような品揃えで、さして特色もなければ営業努力なんぞとも無縁の、店内が薄暗くなんとなくカビくさかったりするような店(でもご近所の住人の顔は全部覚えてたりする)…。そんな本屋さんが、かつては私鉄の駅前なんかには必ず一軒くらいあったんですが、今はほとんどコンビニに取って代わられているかのようです。でも、コンビニはやっぱりコンビニであって、そもそも本屋さんとは役割が違いますしねえ。
>魅力のある書店
仰るとおりですね。私のアタマの中にも、規模の大小に関係なく大好きな書店はいくつかマッピングされてまして、忙しくてそうしょっちゅう立ち寄れないかわりに、久しぶりに行くときには、まるで中学生の初デートみたいにワクワクドキドキしてしまいます(笑)。
posted: とんがりやま (2005/03/18 17:37:21)