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春を告げるハーディングフェーレの音色
昨日、3月26日は「比良八講」でした。琵琶湖に春を告げる伝統行事で、これが終わると比良山からの冷たい風が止むと言われています。平安時代、比叡山の僧侶が行った法要がその起源なんだとか。
私はその日の昼下がり、その琵琶湖からちょうど比叡山を越えたあたりに位置する京都・北白川の小さな喫茶店で、ハーディングフェーレのコンサートを聴いてきました。
ハーディングフェーレ Hardingfele はノルウェイの伝統楽器。ヴァイオリン(フィドル)とほぼ同じ大きさ・形をしていますが、実際に演奏に使う4本の弦の下には5本の共鳴弦が張られていて、そのため普通のフィドルよりもはるかに豊潤かつ繊細、そしてダイナミックな響きがあります。
上のリンク先に楽器の写真が掲載されていますが、ボディから糸巻きに至るまで細かな装飾が施されていて、それだけでもたいへん美しい工芸品。その音色も、外見からの想像以上にとても奥行きのあるものです。
日本人ハーディングフェーレ奏者がどれくらいいるのか知りませんが、樫原聡子さんはたぶん数少ないであろうその中のひとり。今回は、先日のポール&ハリー来日ツアーに同行された赤澤淳さんのブズーキとのデュオ・ライブでした。
コンサートはもちろんノーマイクで、楽器本来のもつ艶やかな音色を存分に味わうことができました。選曲はノルウェイの伝統曲が中心で、スウェーデンものも少しあったかな。舞曲(ダンス・チューン)が大半でしたが、なかでもゆったりとした三拍子のものが多かったのは三拍子好きとしては嬉しい限り。もっとも、ノルウェイのダンス・チューンでは三拍子といってもリズムが少し複雑で(2拍目が跳ねるような感じ?)、ぼんやり聴いていると何拍子なのかわからなくなってきそうなのも楽しい。
樫原さんはフェーレ、つまり普通のフィドル(ヴァイオリン)も演奏されます。曲に応じて2台の楽器を使い分けていましたが、ハーディングフェーレ用とフェーレ用では曲の構造などに違いがあるのかしらん。
バラッドも2曲。樫原さんの MC によると、そのうちひとつは Child #10「The Twa Sisters」とそっくりな内容だったのでびっくりしました。今回は器楽演奏のみなので歌までは聴けませんでしたが、うーん、タイトルや収録レコードの有無を詳しくお聞きしとけばよかったなぁと、あとで後悔。
実は樫原さんは、一方ではアイリッシュ・フィドラーでもありまして、第二部の途中でアイリッシュ・チューンも数曲登場。その中には、つい先日ポール・オショネシーも演奏していた「Geroge White's Favourite」もあって、赤澤さんのブズーキともども懐かしく思い出したり。…そんなこんなで、「一粒で二度」ならぬ「三度も四度もおいしい」コンサートでありました。
京都は、25日の金曜日はものすごく冷え込み、また冷たい風が吹き荒れていました。土曜日には天気は少し和らいだとは言え、まだなんとなく底冷えもしていました。けれども、会場となった「お手紙カフェ coari」の中は暖かく、柔らかな午後の日差しをバックに演奏するお二人の音楽がなんとも心地のよいものでした。お隣の琵琶湖の比良八講に負けじと、京都にも本格的な春の訪れを告げてくれたかのようです。
樫原聡子さんと赤澤淳さんのデュオ・コンサートは、次回は大阪・寝屋川で行われます。
2005年5月15日(日) 15:00〜
大阪・寝屋川 flower & zakka F's life
1,200円
※案内ハガキによると「席に限りがありますのでなるべくご予約をお願いします」とのこと(問い合わせ:nospam_infohardingfele@yahoo.co.jp
注:クローラー対策のため先頭に余分な文字列を附け加えています。アンダーバーから後がアドレスです)。
また、6月には東京で「日本・ノルウェー音楽家協会による特別演奏会」があり、樫原さんも出演されるそうです。
そういえば、今年はノルウェー独立100周年なんだそうで、日本でも関連イベントがいろいろあるようですね。
2005 03 27 [face the music] | permalink
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