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Around Europe of the Golden Twenties

以前このブログで、オスロ近郊の古道具屋で1930年代の絵本を見つけた話を書いたことがあります。実はそのとき他にも手に入れたモノがあって、上の写真のもそのひとつ。
本革の装幀で、それなりに年季が入っているとはいえボロボロにはなっていない。大切に保管されていたことをうかがわせます。
ちょっと気になったので、手に取ってみました。中身は、古いフォトアルバムです。誰のものかは、むろんわかりません。しかし、ページを繰っていくにしたがって、ひょっとするとこれは凄いモノかもしれないぞ、という思いが強くなってきました。というのも、撮影した年月がペンで記されているんだけれど、それがなんと、1920年代!
「うひゃあ」
思わず声を上げてしまった。

なにしろ1ページ目が1921年ではじまり、最終ページが1929年で終わっているんですよ。1920年代がすっぽり入っていて、しかも、どうやら撮影場所はヨーロッパ各地にわたっているらしい。このアルバムの持ち主は、当時それなりにお金持ちの部類に入るひとだったことでしょう。ふぇ〜。
このアルバムをつくったカメラマン氏は、夏と冬のバカンスを毎年欧州のどこかで過ごしていて、その様子を毎回写真におさめ、こうやって律儀にアルバムに貼り付けていったことと思われます。それが、子孫が売り払ったのか、あるいは家そのものが取り壊されたのかはわからないけれど、いつしか古道具屋に流れ、たまたま極東から来た旅行者の目にとまってしまった…というわけ。
冒頭の写真に示したように、私が手に入れたアルバムは2冊あるんですが、とりあえず1冊目、上の方から見ていきましょう。まずは巻頭、1ページ目(画像はクリックすると拡大します)。で、黒っぽい台紙に白インクでタイトルが書かれていて、撮影場所のメモだと思われるんだけど、どうも英語じゃなさげ(?)なのと、達筆すぎることもあって、私では判読できましぇん(恥)。
ここに写っている建造物は、先日厳かにローマ法王教皇就任式が執り行われたサンピエトロ大聖堂で間違いないでしょう。なるほど、上ふたつの写真につけられたキャプションをよく見ると、「St.Pietro」と読めますな。けれど、ページ上部左や、真ん中の「1921」の左の文字とかは、私にはお手上げ。真ん中のは、ひょっとして、「7月」って意味かな、とか想像してみるんですけど。で、ページ右上は「ローマ」かと(ちなみに、バチカン市国の誕生は1929年)。
アルバムはしばらく、コロセウムなどローマ遺跡の風景写真が続きます。市場っぽいスナップも数枚あって、それも興味深いんだけど、13ページ目にしてようやく、記念写真っぽいのが出てきます。この左下がそれ。カメラマン氏の奥さんでしょうか。場所は、トレヴィの泉…ではなさそうですな。でも、彼らはまだローマにいます。実はこのアルバム、1921年の分がもっとも多く、おそらくカメラマン氏はこの時期はじめてカメラを入手したのかもしれません。珍しさと嬉しさとで、思わず何枚もシャッターを切ってしまうその心理は、うん、よく分かりますぅ(微笑)。
ずずっと飛ばします。28ページ目。本当はここへくるまでにもたくさんの人物写真があって、そのファッションやヘアスタイルを眺めているだけでも全く飽きないんですけれど、全ページ掲載するわけにもいかず、泣く泣く割愛。で、このページ。場所はすでにローマからは離れているようですが、判読できません(泣)。ちょっと着彩写真のようにも見えるんですが、これはたぶん、変色しているだけでしょう。下2枚、手にしているのは葡萄? でも、背景はどうも葡萄畑ではなさそうですね。野いちごのたぐいなのかな。で、右上は、おそらくその摘み取りの情景でしょう。アルバム冒頭の頃のお堅い風景写真から、この頃にはずいぶん自然なスナップも撮るようになってきています。
またまたうんと飛んで、1924年の4月。「Svolvos」と読めるようなんですが、具体的にどこだかはわかりません。同年3月からこの地に来ているようで、雪景色の写真が延々13〜4ページ続いてます。やっぱ珍しい光景に出会うと自然にシャッターを切る機会が増えるようで。
北欧なんでしょうか、ここは小さな港町のようで、大量の魚が打ち上げられてる写真があったり、その魚を干している写真があったり、ビール工場らしき写真があったり、ロバの橇に引かれている写真があったり、スキーに興じている写真があったり。うーん、やっぱバカンスに来ているとしか思えない。カメラマン氏、職業はなんだったんだろう。かなり裕福であくせくしなくてもいい程度の社会的地位にあったと思われるんですが。
このアルバムは全98ページもあるんですが、飛ばしに飛ばして最終ページ。「Ramsen 1929」と読めます。でも、ラムゼンってどこだろう。どうやら湖が見える、高原の保養地っぽい。で、この地名で検索してみたらアルプス山脈のふもと、ライン川上流近くに同名の場所があるんですが、ここかなあ。
アルバムを少し遡ってみると、どうやら1926年頃から毎年避暑に来ているようです。
アルバム当初こそ、ひと気のない風景写真ばかりなんだけど、中盤から後半では人物スナップばかり。私にはそれぞれの写真を読み解く力はないですが、着ている服はどれも高価そうだし、宿だか別荘だかわからないけど室内インテリアの調度品も上品だし、冬はスキー、夏は乗馬にテニスに登山に海水浴と、やることなすこと全てが金持ちの道楽としか思えない。ま、この当時、個人でカメラを持ってるっていうだけで、かなり贅沢な趣味でもあったんじゃないでしょうか。
被写体も大勢いて、必ずしも家族・親戚だけではないでしょう。いずれにせよ、カメラマン氏の単独撮影行でないことだけは確かで、写真の中で笑顔を見せている紳士淑女たちの、誰もがなんと幸せそうなことか。
と、アルバムはもう一冊あるんでした。2冊目は次回エントリーにて。
2005 04 25 [wayfaring stranger] | permalink
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