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[DVD]:The Best of Riverdance【追記】

 

TheBestofRD

 
●THE BEST OF Riverdance™
 TYRDVD 006/TYRONE PRODUCTIONS/2005年
 Designed by Rattigan at Zeus Creative Dublin
 
 アイルランド生まれで、日本を含むワールドワイドなヒットを飛ばしたダンス・ショウ《Riverdance™》の10周年記念DVD。All Regions で、日本の再生機でも問題なく視聴できます。
 
 《リヴァーダンス》ってなーに、という方には、Air:コラム:Riverdanceって何?をご紹介させていただくことにして、先へ進みます。本DVDはこの10年のあいだに断続的にリリースされた4種類(ユーロビジョン版、ダブリン版、ニューヨーク版、ジュネーヴ版。ダブリン版には2ヴァージョンあるから、正確には5種類)のビデオを元に再構成された<集大成版>です。
 
 びっくりしたのは、いくつかの演目で、違う公演のパフォーマンスを一曲の中で細かくカット割りしてつなげていること。これ、上記 Air の moriy さんも同DVDのレビューでお書きですが、それぞれテンポとかが微妙に違う筈なのにキレイにつないでいて、けれどもダンサーはもちろん、背景のセットや衣装なんかは全て異なっているし、収録画質もそれぞれ違うから、なんというか、違和感ありまくり(笑)。せっかくのDVDなんだから、ヴァージョン違いはメニューで選択できるとかしてくれたらよかったんだけど。全てのビデオを見てきた熱心なマニアならともかく、初見の方だとなにがなんだか、てなことにもなりかねません。
 
 とまあ、本編の方は初期の頃からずっと追っかけていた人向きということで(これはこれで新鮮な発見があったりもするんですが)、このディスクには特典映像として《Special Olympics Opening Ceremony》(2003年6月21日)が収録されているのが嬉しい。
 この時のパフォーマンスを観た感想を、かつてメール・マガジンクラン・コラに寄稿したことがあるので、ここに再掲しておきます。リヴァーダンスが三度目の来日公演を終えた、2003年12月号に掲載された文章(の一部)です。再掲にあたって、若干加筆修正していることをお断りしておきます。
 
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 2003年6月、ダブリンでスペシャル・オリンピックスが開催された。その開会式典に『リヴァーダンス』が登場したことは、週刊文春など日本の週刊誌でも紹介されたのでご存知の方も多いと思う。現地のテレビ局が収録したその模様を眺めていて、ああ、ようやくこれでひと区切りついたのかな、と思った。

 1994年、ユーロビジョン歌謡祭というテレビ番組のアトラクションとして誕生したリヴァーダンスは、めでたく丸10年を迎えた。2004年には本国ダブリンで10周年記念の公演も行われて、「ひと区切り」にはそんな意味も含まれるのだが、それ以上に、リヴァーダンスが他のイベントに登場する図というのが新鮮だった。これほど大規模なイベントへの参加となると、ひょっとしてあの歌謡祭以来なのだろうか。

 スペシャル・オリンピックスの開会式典では、ダンサーもミュージシャンも、みないきいきと輝いていた。まるでこういう場こそが我々の本来の居場所であるとでも言いたげに。そうなのだ。リヴァーダンスはイベントに始まって、この10年のあいだに世界中をぐるっと一回りし再びイベントに帰ってきた。これでようやく、ひとつの大きな環を閉じることができたのではないか。

 思えば当初、7分間余のパフォーマンスを創るにあたり、スタッフはあれこれ頭をひねったに違いない。ヨーロッパ中に放送される歌謡祭というイベントにふさわしく、明るく華やかな仕上りにしたい。その上で、アイルランドの過去と未来も語らせてみたい。それも、今まで誰も観たことがないようなやり方で…。

 その目論見は大成功で、以後のアイリッシュ・ダンスの歴史を塗り変えるほどの影響力を持つまでになったのは、みなさんご存知の通り。とはいえ、まさかここまでの存在になろうとは、当時は誰も思っていなかっただろう。なにしろ、コレはあくまでイベントを盛り上げるための「余興」に過ぎなかったのだから。
 

 神話的とも言うべきリヴァーダンスの成功を受け、この数年間に多くのダンス・ショウが誕生した。超絶的テクニックを持ったスターを擁したり、古い伝説を題材にドラマティックな舞台を構築したり、開拓者に追いつき追い越せとばかりに様々な試みがなされてきたが、どの作品も何かが違っていたように思う。そのあたりが今までよくわからなかったのだが、スペシャル・オリンピックスの式典を見ているうちに、ふと「根本的なスタンスが全く異なっていたのではないか」と思った。

 なるほどリヴァーダンスは革新的な表現テクニックを誇ったし、またアイドルやスターも生みだした。それに自国の歴史をモチーフにしたドラマティックな要素もあり、いずれも後続の良き手本となっただろう。しかし、これらはみな、リヴァーダンスにとってはあとから付随した枝葉のようなものである。そもそもの始まりであるユーロビジョン歌謡祭の時点では、歌謡祭というイベントを祝い、かつアイルランドという国を言祝ぐというコンセプトが最重要だったはずである。リヴァーダンスにあって他のショウにないポイントは、ここだ。つまり、この作品の主成分は「祝福」でできているのだ。そしてこの「祝福成分」は、独立した舞台作品となった後でもショウの全体に浸透し、作用し続けているに違いない。

 アイルランドの伝統音楽やダンスに「芸能」という概念はあまり似合わないようにも思うのだが、他に適切なことばが見つからないから使わせていただくと、リヴァーダンスは一種の「祝福芸」だと言っていいのではないだろうか。「祝福芸」とは、日本で言えば尾張や三河の万歳のように、新年を言祝ぎ、その家の発展を願う芸能を指す。リヴァーダンスもまた、主体となるイベントを祝い、アイルランドという国を賞賛し、そしてその場に集まった観客全員を祝福するという役割の下に生まれたものである。

 作り手がはたしてどこまで意識していたかどうかに関わらず、このダンス作品は“その場をセレブレートする”働きをもつ。何十人ものハードシューズによる圧倒的な迫力やセクシーさ、音楽の素晴らしさなど、従来語られてきた様々な魅力はあくまでもディテールであり、必ずしも本質的なものではないはずだ。そう考えて初めて、なぜこの作品を何度でも観たくなるのか、その回答が見つかるような気がするのだ。つまり、何十回観ても興奮し幸せな気分になれるのは、この作品によって私たち全員が「祝福される」からではないか、と。
 
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 おまけ。久しぶりにCDラックを整理していたら、リヴァーダンスのサントラCDが出てくる出てくる(笑)。いやはや、いったい何種類出せば気が済むんだ。ていうか、それをせっせと買ってる自分も相当どうかと小一時間(以下略)。
 

RD_CDs

 
 内容がびみょーに異なっていたりいなかったりするんですが、その違いを全て答えられる人って、何人くらいいるんでしょ(汗)。
 
【2005.04.28追記】
4度目の日本公演が決定したもよう。ひゃっほ〜い!
大阪公演の会場は、嬉しいことに1999年の初来日以来となるフェスティバル・ホールで、10月25日〜30日まで。一般発売日は6月4日だそうです。S席11,000円/A席9,000円/B席8,000円。
 

2005 04 24 [dance around] | permalink このエントリーをはてなブックマークに追加

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