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How To Solve It
私の場合、理系か文系かと問われれば、迷うことなく文系だと答える。問われなくても、根っからの文系である! と叫びまくっているかもしれない。それが、どーいうワケか魔が差して(笑)数学の本を買ってしまった。

●いかにして問題をとくか
How To Solve It〜A New Aspect of Mathematical Method
George Polya著・柿内賢信訳/丸善株式会社出版事業部/1954年刊(原著は1945年発行)
ISBN:4-621-04593-8
装幀:大熊喜英
1954年の初版以来、同じ装幀・体裁のままで半世紀もの間ずっと出版され続けている本なんて、いまの世の中ほとんどないはず(私が買ったのは2004年/第11版26刷)。まずそのことに素直に感動する。ちなみに、私がこれを見つけたのは丸善ではなくジュンク堂だった。さすがはジュンク堂ですなぁ。
高校生の頃だったか、あまりにも理数系科目がわからないので先生に相談しに行ったことがあって、そのときにこの本を見せてもらったような…気がする。というのも、ぱらぱらっとめくってみたはいいものの、内容がさっぱり頭に入らず、すごすごと本を返したからだ。表紙を見て「古っぽいデザインだなあ」と思い、奥付の年号を見てびっくりした記憶はあるからたぶんこの本だった筈なんだけど。ていうか、その頃からデザイン方面だけにしか関心が持てなかったのかよ、と今更ながら苦笑してみたり。
リベンジっていうか、今なら少しは理解できるかも、などと思っていそいそと買ってみたんだけども、や、やっぱり難しいわ(汗)。
ま、もともと、xだのyだのの入った数式なんかは、もう見た瞬間に目がうつろになってしまうのだけど(笑)、そういう人のために(かどうかは知らないが)この本の中にはいろんなタイプの問題が出てくる。たとえば…お、これなら自分にも解けそうかな。
われわれが4リットルと9リットルの2つの桶しかもっていないとき, ちょうど6リットルの川の水をくむのにはどうすればよいか.(61ページ)
さっそく本を閉じて30分ほど考えたですよ。ええ、考えましたとも。で、大きなタライに9リットルバケツで2回汲み入れて、そこから4リットルの方で3回汲み出せば、(9×2)-(4×3)=6。やったあ、できたー!と喜んだですよ。これは勝ったな、と思いましたですよ。ガッツポーズまで出ましたよ。ええ。
で、意気揚々とふたたび本を開いてみたら
われわれが4リットルと9リットルの2つの桶しかもっていないとき
…あ。
うん、どうやら私の場合は、理系/文系以前の問題として、そもそも文章読解力に著しい欠如が見られるな。Polya先生もこの本の中でくり返しくり返し強調しているではないか、<第1に問題を理解しなければならない>と。私の場合、そもそもその出発点からしてこのざまである。
もうね、100mが何秒という以前に、フライングで失格になっちゃってるというか。
マウンドで大きく振りかぶった瞬間に、ボークを取られちゃってるというか。
ところで、この問題。バケツ2つ以外に容器がないとなると、あっさりあきらめちゃう私である(だんだん開き直ってるな)。桶がなけりゃ近所のスーパー行って買って来いよとか思うんだが、そういうモンダイではないことくらい、さすがの私でもわかる。で、スナオに本書の続きを読む(どんどん開き直ってるな)。
…
……
………
読んだはいいけれど、それをちゃんと理解するにはさらに1時間(推定)かかってしまった。さらにさらに、本当にきちんと解ったかというと、実は今でもちょっと怪しかったりしている。うーん、こりゃ、間違いなく小学生の頃から考えてもずいぶん退化(当社比)してるな。
そうかと思えば、こういう問題もある。
一匹の熊が1点Pから南へむけて1マイルあるき, そこで方向をかえて真東に1マイルすゝんだ. そこでもういちど向きをかえて真北に1マイルすゝんだとき, ちょうど出発点Pにもどったとする. この熊はなにいろをしているか. (226ページ)
…ってオイ、問題は色なのかよ。こんなのワケわかんねえと速攻で解答欄を見たら、とてもテイネイな答えが書かれてあって、はぁ〜、こういう思考ができるのが理系なのねぇ、とさらに小一時間落ち込む私であった。
原題を見ればわかるとおり、これはいわゆる「How To」本だ。しかし、その内容は、実に濃い…と思う。って、こんな私が言ってもまったく説得力はないのだが。数式の入った箇所は全部飛ばして読み進めてもそう思う。ここに書かれていることは、単に数学の問題を解くためだけでなく(実際、上の熊問題なんかは数学じゃないと思うしぃ)、幅広くいろんな場面で有効だろうとも思う。そういう意味では、本来は理系だの文系だのとは関係なく、「現在問題に直面している人」なら誰が読んでも、どこかのページが必ず役に立つはずだ。仕事であれなんであれ、なんらかの問題を抱えていない人などまずいないと思うから、つまり、誰もが読んでおくといい本、ということになるだろう。
この本がくり返し説いている方法論、つまり「問題点をじゅうぶん整理し、与えられた条件をよく吟味し、問題の本質を見極め、仮説をたて、実行してみて、その結果を検証する」…というやりかたは、一見地味だし、時間もかかり根気も必要なことではある(そういえば小学校の頃、通信簿に「落ち着きがない」「注意力散漫」などとよく書かれていたっけなぁ。すでにそこからして人生間違っていたのかもしれない…orz)。けれど、人が生きていく上でのさまざまな局面において、こういう「態度」をきちんと貫ける人こそがエライのである、と、著者は説くのである。この本が半世紀もの間ずっと読み継がれてきた理由は、おそらくこのあたりにあるのではないだろうか。
それにしても、理系のヒトの書く文章は構造がすっきりしていて要点が明確だなぁ。少なくとも、私が今書いている文章のような、ダラダラしたところがない。文中、重要な部分は太ゴチック体で強調され、他のページの参照すべき項目が適宜記される。ちゃんと読もうとすると、当然その指示に従ってあっち行ったりこっち読んだり、ページを何度も繰らなければならないので少々面倒なのだが、そうすることによって大事なポイントがイヤでも頭に残ることにもなる。あ、今気がついたけど、こういう記述法って、要するにリンクを張り巡らしたHTML文書だよな。ということは、現在なら書籍よりもウェブサイトで発表する方がよりしっくりするのかもしれない。ていうか、そもそもこういう風に項目をリンクしていくことを可能にしたHTML自体、やっぱ理系の発想の産物なんだなあと改めて感心してみたり。
ともあれ、今度生まれ変わったら絶対理系に生まれるぞぉ。と、カンとその場の気まぐれのみで行き当たりばったりな出たとこ勝負人生を歩んできた私は、深く固く決意するのであった。あはは…はは……、はぁ。
2005 06 04 [booklearning] | permalink
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comments
ある映画館の入場料は、大人950円、子供450円。切符売り場は、お金を渡す入り口があるだけ(つまり、お客さんと切符売りの人は、お互いの顔は見えない)。
ある日のこと、男が黙って、1000円をその入り口に入れたところ、大人の切符が一枚でてきた。お互いの顔もわからず、「大人一枚」とも言ってない。
ではどうして切符売りの人は、1000円をもらって、大人の切符一枚を渡したのだろうか?
posted: ヘルガ♀ (2005/06/20 14:23:17)
そりゃ、その日の上映作品が18禁だったからですよ。ええ、そうに決まってますとも。
ということでヘルガ♀さん、ブログ開設おめでとー。
posted: とんがりやま (2005/06/20 17:35:36)
>そりゃ、その日の上映作品が18禁だったからですよ。ええ、そうに決まってますとも。
うははははは!!!
実は、上のコメントを書き込んだときに、仕事の同僚(女性)に同じ質問をしたら、「それって、成人映画だからでしょ」と一言で片付けられてしまいました。
ポイントは「1000円」を払ったというところです。「1000円」というと、「1000円『札』」をイメージするところがみそなんですね。
答えは、「500円玉2枚」で1000円払った、ということです。
>ということでヘルガ♀さん、ブログ開設おめでとー。
ありがとうございます。まだブログといえるレベルではないですが、ぼちぼちとやっていきます。
posted: ヘルガ (2005/06/21 10:57:13)
うん、その同僚の方と気が合いそうですね〜(笑)
私がその映画館の切符売り場の係員だったとして、500円玉2枚を出されたら、「子供二枚」差し出しちゃうかも、とか思いました。
ま、何にせよ、口頭できちんと確認するというのは大切だよね、というのがこのお話の教訓ということで(違)
posted: とんがりやま (2005/06/21 12:07:08)