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バンパクがイッパイ

 
 愛・地球博効果でしょうか、とうとう大阪万博の公式記録映画までDVD化されました。この作品は1971年度の邦画興行成績第一位だったということですが、私は観るのは生まれて初めて。いやあ、終始アツい映画でした。
 
●公式長編記録映画 日本万国博
 総監督:谷口千吉
 企画:財団法人 日本万国博覧会協会
 製作:社団法人 ニュース映画製作者連盟
 音楽:間宮芳生
 ナレーション:石坂浩二・竹下景子
 173分(1971年4月3日公開)
 
 発売:ジェネオンエンタテインメントGNBD-1101
 
 3時間近い長編、それも「文部省特選」をはじめ関係省庁の「お墨付き」の公式記録映画とあって、万国博の全体像は一通りつかむことができます。各パビリオンも、おそらく残らず紹介しているんじゃないかな(もっとも、濃淡はあって、残念ながら外観の映像だけであっさりスルーされてる館も多いです。アイルランド館もそのひとつ…('A`))。期間中には、クラシック・ジャズ・ロック・シャンソン等ジャンルを問わずたくさんのコンサートがあった筈なんですが、そっち方面の記録は一切なし、ですが、お祭り広場などでの民族系音楽やダンスなんかはそこそこ収録されているのが嬉しい。
 35年前の普通の日本人の姿…ファッションだけでなく、体格や顔つきも含めて…がたっぷり観られるのは貴重かもしれません。プロの俳優の演技や話し方なんかは古い日本映画のビデオを探せばいくらでも観られますが、市井の人々の動く姿・しゃべり声っていうのは、観る機会はそんなに多くないですからね。このあたり、当時を知る人にも知らない人にも、ともに新鮮な印象を与えるのではないかと思います。
 
 
 ところで、「万博ブーム」は今年になって急にわきおこったものではなく、数年前からぼちぼちと関連書籍などが出ていたと思います。とはいえ、やはり2005年がひとつの区切りであることは間違いなく、今年に入ってからは「万博」と名の付く出版物がひときわ増えているような。…というわけで、私の手元に集まったモノをちょこっと並べてみました。
 

 

expo70

 
 手前のフィギュア群は、もうすぐ関東・甲信越、静岡地区でも発売されるというタイムスリップグリコ・大阪万博編より(コンプリートではありませんが)。エキスポタワーとか出してくれたらなあ。
 『日本万国博』DVDの下にあるのは、『ドキュメント a LIFE of EXPO』というDVDです(2004 a LIFE of EXPO実行委員会製作・2004年?・品番記載なし)。2003年にエキスポタワーが解体されたことを受けて、2004年3月28日に行われたトークセッションと万博公園でのライトアップイベントを記録した映像。今はなきエキスポタワーの、解体直前に撮影された内部の写真(廃墟同然で、怖くもあり美しくもあり)なども満載の、貴重なレポートとなっています。トークセッション出席者はエキスポタワー設計者であり愛知万博の総合プロデューサーでもある菊竹清訓氏、建築家の竹山聖氏、アーティストのヤノベケンジ氏、建築評論家の五十嵐太郎氏の四人。このイベントの時点でも愛知万博はまだまだ先行きがはっきり見えていない感じで、そのあたりの対話も、愛知博開催後の現在から見るとあらためて興味深かったりします。
 
 その下の書籍は椹木野衣『戦争と万博』(美術出版社・2005年2月刊・ISBN4-568-20174-8)。70年万博に当時の前衛芸術家がどう関わったか。日本での万国博覧会の開催は、太平洋戦争以前からのある種の人たちの悲願でもあったわけですが、そういう「国威発揚」の場とアナーキーな「前衛芸術」がどうぶつかり合い、あるいは呑み込まれていったかを描いた本。興味深く読み終わったけれど、読後感はあまり良いものでもなかったかな。戦争にしろオリンピックや万博にしろ、結局のところ日本人って、右も左も保守も前衛もひっくるめて「大イベント好きのミーハー」なだけなんじゃないの、とも思ったり。ふと小林信彦の小説『ぼくたちの好きな戦争』(新潮社・1986年)のあの苦みを思い出してしまった。
 
 
 後へとんで、串間務『まぼろし万国博覧会』(ちくま文庫・2005年4月・ISBN4-480-42078-9/オリジナルは1998年7月・小学館刊)。現在につながる「万博再評価」の先駆的作品だと思いますが、実はまだ読み終わってません。文字多すぎ(笑)。ま、この本からも伝わってくるとんでもないほどの熱気は、公式映画にもちゃんと「記録」されているのではないかな、と。記録映画の副読本として読むとさらに面白いでしょう。
 
 吉見俊哉さんの新書を2冊。『博覧会の政治学 まなざしの近代』(中公新書1090・1992年9月刊・ISBN4-12-101090-6)と『万博幻想 戦後政治の呪縛』(ちくま新書526・2005年3月刊・ISBN4-480-06226-2)。『—政治学』の方は1851年のロンドン博からはじまる欧米先進諸国の近代化と、博覧会がそのために果たした役割を考察した本。大阪万博のことにも少し触れているけれども『—幻想』の方が、まるごと日本で開催された万博(大阪万博・沖縄海洋博・つくば科学博・愛知万博…で、大阪花博は一言もなし)について書かれているので、よりリアリティがあるかも。愛知万博開催までの紆余曲折とドタバタ騒ぎの一端も描かれていて、面白いです。ただ、ちょいと気になるのは、大阪万博についての記述のうち、大部分の原稿が両著で重複してるんですよねえ。原稿の二重売り? こういうのってアリなんでしょうか。もうひとつ、相当ひっかかったのが『—政治学』にやたらでてくる「まなざすまなざされる」という言い方。「まなざし」の活用形のつもり? こんなコトバ、初めて目にしたぞ。勝手に日本語を作るんじゃありませんっ。
 
 写真右手奥、一番下にちょっとだけ見えている本は、これだけは日本の博覧会とは何の関係もありません。井上さつき『パリ万博音楽案内』(音楽之友社・1998年4月刊・ISBN4-276-33082-3)。パリで開催された5つの万博(1855年・1867年・1878年・1889年・1900年)での音楽の扱われ方を紹介しています。先に挙げた『戦争と万博』では美術/建築が主題で、こちらは音楽ですが、万国博覧会という国家レベルでの芸術示威活動には、19世紀も20世紀も本質的に違いはないなあ、という気が。21世紀初の万国博覧会となった愛知博は、さて、後年どういう風に回顧されることになりますやら。
 
 

2005 06 01 [living in tradition] | permalink このエントリーをはてなブックマークに追加

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