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[books] 最近買った本とかいま読んでる本のことなど
どうにも忙しくって、なかなか読書もままならない。そういえば最近はCDもあんまり買ってないし、買ってもゆっくり聴くゆとりもないなあ。本も同じで、一冊をとことん味わい尽くすような読み方がぜんぜんできなくなった。悲しいことではあります。
と、そういえば「最近こんな本読んでます」ってエントリもしばらく書いてなかったなァ。2004年12月以来だ。半年ぶりに、ちょっとやってみましょうか。

【写真上から】
●英国人写真家の見た明治日本 この世の楽園・日本
ハーバート・G・ポンティング著・長岡祥三訳
講談社学術文庫1710/2005年5月刊
ISBN4-06-159710-8
カバーデザイン:蟹江征治
1910年のスコット南極探検隊にも同行したという、H・G・ポンティングによる20世紀初頭の日本の写真集。出版されたのがその1910年で、撮影自体は1902年頃から1906年頃までのようだ。ちょうど100年前の日本の姿がここに見られるということになる。
…で、実はまだ買ったばかりで1ページも読んでない(笑)ので、感想はパス。ぱらぱらみたところ文章が多く、どうやら写真集というよりも紀行文っぽいので、時間があるときにじっくり楽しもうっと。目次によると、東京・京都にはじまって阿蘇山から富士山まで、日本の各地を精力的に回っているようだ。
●フランク・ロイド・ライトの日本 浮世絵に魅せられた「もう一つの顔」
谷川正己著/光文社新書169/2004年9月刊
ISBN4-334-03269-9
装幀:アラン・チャン
建築家として著名なライトは、実は浮世絵のコレクターとしても有名だった、ということを書いた本。浮世絵と西欧社会とくればジャポニスムで、ここには写ってないがロートレック展に行ったときだったかに入手した『ジャポニスム入門』(ジャポニスム学会編/思文閣出版/2000年初版/ISBN4-7842-1053-9)と合わせて読んでいるものだからなかなかページが進まない。そこから連想ゲームのようにして万博方面の本も読んでいた(バンパクがイッパイ参照)ので、さらにらりぱっぱである(笑)。そろそろこちらも読み終えなくちゃ。
●進駐軍クラブから歌謡曲へ 戦後日本ポピュラー音楽の黎明期
東谷護著/みすず書房/2005年4月刊
ISBN4-622-07137-1
装丁者名記載なし
まだ全部読み終えてないけれど、すごく面白い。「たとえば戦後のポピュラー音楽は占領期に端を発しているという言説がある。だが、それを実証的に検証した学術研究はない。(本書序文・5ページ)」とあるように、この本は日本のポピュラー音楽史の「ミッシング・リンク」を埋めようとするものだ。関係者の証言も多数収められており、混沌とした、しかしだからこそあらゆる可能性に満ちていた「ひとつの時代」をくっきりと描いている。
●もやしもん(1)
石川雅之著/講談社イブニングKC106/2005年5月刊
ISBN4-06-352106-0
Design:ARTEN
大胆なブックデザインである。なにしろ、マンガ本なのにカバーに絵が使われていない。カバーの約半分を占めるオビを取れば、小さなイラストが発見できるのだが、コミックスはふつうビニール袋にくるまれているので、店頭でそれを確認することができない。しかも、オビの文言は大豆インクと古紙100%再生紙使用を謳っているだけで、作品の内容についての説明は一切なし。失礼な話だが、この作者が名前だけで売れるほどメジャーであるとも思えない。「中身を全くわからせない」戦略は面白いといえば言える(あとから見直せば、本書の内容ともなんとなくリンクしているように思えないこともない)んだけど、よくもまあ営業サイドがOKを出したなと思う。じっさい私も、買うのを躊躇した。この人の最初の作品集『週刊石川雅之』(講談社・2003年)を知らなかったらまず素通りしていただろう。だいいち「もやしもん」ってどういう意味なんだ。時代劇か現代劇か、コメディか社会派かはたまたアクションものなのか、さっぱりわからなかったのである。
で、どんな話なのよ、であるが、乳酸菌からO-157まで、肉眼で「菌」を見ることのできる能力を持つ大学生のおはなし。まだ第一巻だし、このあとの展開もわからないのでこれ以上は書かないけど、続刊が楽しみなマンガがまたひとつできちゃった。しかしコレ、第2巻以降のカバー(+オビ)デザインはどうすんだろな。
●モリスの愛した村 イギリス・コッツウォルズ紀行
斎藤公江著/晶文社/2005年4月
ISBN4-7949-6658-X
ブックデザイン:晶文社装丁室
なんとDVD付きだ。もちろんこの本のために制作されたオリジナルもの。これを観るためだけでも、本書を手に入れる価値はじゅうぶんあると思う。いや、だからといって、肝心の本文が見劣りするというわけでは全くない。DVDを観て、本を読んで、またDVDを観て…と、くり返し楽しめるのがいい。暑くて寝苦しい夜に静かに味わいたい、清涼剤のような一冊。
●東京命日
島田虎之介著/青林工藝舎/2005年1月刊
ISBN4-88379-177-7
装丁:南伸坊
「心静かに味わう」なら、このマンガもふさわしいだろう。真夏の夜が似合うかどうかはわからないけど。あり得たかも知れないもうひとつの20世紀を描き出した(といってもSFではない)デビュー作『ラスト・ワルツ』(青林工藝舎・2002年)に比べ、読後感はより静かに、より深くなっている。
前回と同じく、たった一度読んだだけでは物語の全体像がよくわからず、二度三度と読み直していくうちに、作者の仕掛けた細かな伏線がひとつずつ見えてきて、それがまたあらたな感動を呼ぶ。エンディングをきちっと見据えた上で全話を緻密に再構成する構築力が圧巻だし、その丁寧な語り口も新鮮。この作者はきっと相当の映画好き/文学好きなんだろうな、とも思う。前回も大活躍だった小林"エンリケ"清くんが、やたらハードボイルドでかっこいいぞ。もうひとりの主役・藪ケイト嬢と共に、その不機嫌な表情が物語にとてもよく似合ってる。
●ザ・ブルース The BLUES a musical journey
マーティン・スコセッシ監修・ピーター・ギュラルニック他編・奥田祐司訳
白夜書房/2004年7月刊
ISBN4-89367-947-3
デザイン:雨奥祟訓
「ブルーズ」ではなく「ブルース」なのね。ま、どうでもいいけど。で、これは言わずと知れたマーティン・スコセッシ制作総指揮の『The BLUES Movie Project』のオフィシャル・ブック。3月に出たDVDも全部見終えてなくて、だから本書もまだ開いてないページがある。ま、このプロジェクトは映像作品が主役だろうし、本の方はあくまで参考書。でも、この手の本って消えるのも早いから、とりあえず買っておかないとってことで。こういうの、貧乏性っていうのかな(笑)。
2005 07 02 [booklearning] | permalink
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