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さよなら、丸善京都店。

 

maruzen

 というわけで、閉店間近の丸善京都河原町店に行ってきた。
 

 
 実はここのところ、京都市内ではこの手のニュースが相次いでいる。同じ河原町界隈では京都宝塚劇場(1935年〜)・京極東宝劇場(1954年〜)・京都スカラ座(1956年〜)の3つの映画館の閉館も決定(参照=京都新聞電子版)。すでに今年6月には大宮東映(1961年〜)もなくなっており、市内の映画館はほとんどシネコン化することになる。
 また、京都駅前では、PLATZ近鉄が2007年早々に閉店、そのあとにヨドバシカメラが出店することも決定(参照=京都新聞電子版)していて、1920年に「京都物産館」として創業以来、ずっと同地に続いていた(1931年丸物百貨店に名称変更、1977年京都近鉄百貨店に変更、2000年プラッツ近鉄に変更)百貨店も、その歴史を終えることになる(参考=Wikipedia:近鉄百貨店)。
 ランドマークとして長く存在していた商業施設が軒並みなくなることで、街の風景も今後大きく様変わりしていくことになりそうだ。
 
 
heiten その中でも、丸善京都河原町店は堂々たる<老舗>といっていい。閉店を伝える新聞記事(参照=京都新聞電子版)では1907年開設となっているが、店舗前や店内に貼ってあったお知らせによるとオープンが1872年(おそらく前身時代から数えているんだろう)、のち1940年に現在地に移転とある(写真左、クリックで拡大します)。年長の方にきくと、かつては日曜日が定休だった時代もあったそうで、良くも悪くもそういうおっとりした体質が時代についていかなかったのだろうか。しかしそれだけに、ここは他店にはない独特の雰囲気を持った場所で、私もずいぶんお世話になったものだ。
 
 それにしても残念だ。残念というよりも「悔しい」という感情が起こるほどである。ちょっと思い返すだけでも、たとえば私が持っているサンペの作品集のほとんどはここで買ったものだし(実は今日も一冊見つけてきた)、美術洋書をはじめこの店でしか見つけられなかった本は数え切れないほどある。
 また、甥っ子や姪っ子には毎年お年玉がわりに本を贈り続けてきたが、それも必ず丸善で購っていた。彼らがまだ幼い頃には絵本を、大きくなると写真集や洋書の図鑑などを選んでいたのだけれども、他のどの大型書店に行くよりも、ここ一店だけで目的を達せられたので、非常に重宝してきたのだった。年末の慌ただしいさなかに、わざわざ半日をつぶしてこの店に入り浸っている悦びを、もうかれこれ20年近くも感じ続けてきたことになる。
 
 本だけでなく、丸善オリジナルのスチール書棚も大好きだった。こちらはすでに何年も前に廃番になり、現在では入手不可なのが返すがえすも悔しい。廃止のニュースを聞いたときに、多少無理をしてでも余分に買っておくべきだった。あれに代わる書棚がなかなか見つけられないので、棚に入りきらない本が床に積んだままになっていて、なんとかしたいものではあるんだけれども、どうもいまだに他の書棚を買う気になれないのだ。
 それから…、あ、丸善の洋傘。購入してから10年以上たちずっと愛用し続けているけれども、現在でも購入時とほとんど同じ状態で、とても具合がいい。おそらく一生モノになるのは間違いないだろう。また、現在ではもう取り扱っていないようだが、ある年齢以上の方なら<バーバリーと言えば丸善>というイメージが未だに強いのではないだろうか。私もまた、カネのない学生時代からバーバリーのコートには憧れていたものだ。
 
 …ああ、こういう話をしだせばキリがない。なるべく早く再開という話もあるようだが、はやく再オープンしてもらわないと、たとえば来年のお年玉はどうしようとか、個人的にいろいろ困ることが多いのである。
 
 
 恒例の洋書バーゲンはもうはじまっていて、私もいつになくがっつり買い込んでしまった。バーゲン会場の8階で大きな手提げ2袋分をかかえることになってしまって、他の階をゆっくり見て回る元気がなくなってしまったのがちょっと残念(笑)。閉店までにまた行こうっと。
 
 で、京都の丸善といえばやはり梶井基次郎『檸檬』なわけで、もちろん各階のレジにはその文庫本が山積みである。

lemon

●檸(れもん)檬
 梶井基次郎著/新潮文庫/1967年初版(写真は2004年65刷)
 ISBN4-10-109601-5
 カバー装画:船坂芳助 デザイン:新潮社装幀室
 
 同書を買ったひとだけかどうかわからないが、オリジナルスタンプを押すことができる。記念にというわけで、なかなか粋なサービスだと思う。当然、私も押してきました。下の写真がそれ。記念スタンプマニアの方、今がチャンスですよ(^_^)。
stamp

 
【2013年6月追記】
 丸善京都店が2015年春に復活、とのニュースが流れてますね。あれから本をとりまく環境もかなり変わってきているので、どういうお店になるのか、楽しみでもあり不安でもあり。
→朝日新聞デジタル:「檸檬」の丸善、京に再び 「ファンの声に応えて」
 
【2015年8月追記】
 2015年、春ではなく夏になりましたが、無事復活しました。ということで記事を書きました。
おかえり、丸善京都店。
 
 

2005 08 14 [living in tradition] | permalink このエントリーをはてなブックマークに追加

「living in tradition」カテゴリの記事

comments

はじめまして。

9月にはこちらでこの記事を見て、スタンプを押してきました。
丸善が閉店して、もう4日。
河原町の魅力がまたひとつなくなってしまい、本当に残念です。

昨日はBALビルに一部オープンしたジュンク堂を見に行きました。
本格オープンは2月だそうで、今のところ洋書と医学書だけが
入っています。洋書といっても英語だけですが、
思っていたよりも冊数は多く新聞や雑誌は品揃え豊富です。
ここがいつか丸善のように愛される書店になるかどうかは
まだわかりませんが。。

(ところでこちらのタイトルの写真は、いったい何通りあるのですか?
開ける度に違う写真で、数え切れません)

posted: antoinedoinel (2005/10/14 14:28:21)

はじめまして、コメントありがとうございます。

私は閉店の瞬間に立ち会うことがなかったんですが、きっと涙ぐんでいたかもしれません。そちらのブログ記事を読ませていただきましたが、ちょっとうるうるしてしまいました。

>昨日はBALビルに一部オープンしたジュンク堂を見に行きました。
あ、BALにジュンク堂が入ったんですか!それは見に行かねば。四条通の店との差別化は図られるんでしょうか。


>(ところでこちらのタイトルの写真は、いったい何通りあるのですか?
>開ける度に違う写真で、数え切れません)
そうですね、いくつあるんでしょうねぇ(^_^;)。

posted: とんがりやま (2005/10/14 19:48:49)

 私も幼い頃から通った者ですが、みなさんとは意見が違います。丸善閉店は当然でしょう。
 丸善は生涯を通じてつきあいたい書店ではない。これが、30年間通い続けて出た結論です。サービスも、接客態度も悪いし、高飛車なのです。おっとりしているのと逆です。一番大切なことを忘れてしまっているように見受けます。その点、京都ではジュンク堂が群を抜いていい書店だと思います。
 アマゾンコムで注文すれば、電車賃もいらないし、重い本を持って帰らなくても無料で配送してくれるご時世に、私は約30年間同じ洋書を買いに丸善へ通い続けていました。けれども、ある日、以前丸善で購入した同じ洋書があまりに買った当初から黄ばんでいたため、のちにまとめ買いしに行ったついでに、1冊替えていただけませんか?とお願いしました。すると、一切自分の非を認めず、受けつけないどころか、問答の末に申しわけございませんの一言もありませんでした。あまつさえ、大口の客と一個人の客とを差別する言葉さえ口にしました。そのくちぶりだと、大口の客なら替えよう雰囲気でした。
 店員と管轄の人の言葉から察するに、その本は新版になる手前、手元にあったものを黄ばんでいても返品不可の品だったため、完売までねばったのだと思われます。そして、急いでいた私にはそれらを買うしか仕方がありませんでした。人さまに渡す本なのに選択の余地がなかったのです。
 ジュンク堂なら替えてくれていたと思います。一生、つきあいたい本屋だと思わせる店員さんたちです。これは不必要な本だった、こちらが入用だったなというとき、普通本は取り替えなどしてくれません。でも、私の顔をきちんと覚えていてくれていて、「今回だけですよ」と言いつつ、数回取り替えに応じてくれました。リニューアルして少し不便になりましたが、すごいスピードで解消しつつあります。できれば、各階にカウンターを復活させてほしいかなとは思いますが、丸善の店員さんと接することを考えれば何の苦もありません。
 どこに再び丸善ができようと、たとえ梶井や湯川秀樹のふるさとであろうと、それの上にあぐらをかいているようなところに、私は足を運びません。河原町BALにオープンしたジュンク堂を応援しています。いつも河原町へ行ったときには寄っています。

posted: ゆき (2005/12/07 4:03:21)

はじめまして、コメントありがとうございます。
経営が傾いていくにはそれなりの理由がある、ということなんでしょうね。私は幸いにも、丸善京都で嫌な思いをしたことは一度もありませんでしたが。
BALのジュンク堂、本格オープンが待ち遠しいですね。個人的には、洋書のアート関係の棚はもっともっと面積が欲しいところですが(丸善はDover社のものを常備してあったのでたいへん重宝してました)、今後の拡充にうんと期待したいところです。

posted: とんがりやま (2005/12/07 14:57:57)


2006年2月16日に頂いたコメントは、下記に移動しました。
The comment that had been gotten on February 16, 2006 moved to the following.


http://www.tongariyama.jp/weblog/2003/12/my_photo_collec.html

posted: とんがりやま (2006/02/16 17:23:10)

 

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