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古楽とアイリッシュ

 

ostravaganza

 
●O'stravaganza:
Fantasie autour de Vivaldi et des celtiques d'Irlande
545494-2/virgin CLASSICS/2001
Produced by Hughes de COURSON + Youenn Le BERRE
Photo and design:Layrent Seroussi
 
 2001年にフランスで制作されたこのCDは、副題から推察できるように、ヴィヴァルディとアイリッシュ/ケルティック・ミュージックとのフュージョンアルバムだ。
 アントーニオ・ヴィヴァルディ Antonio Vivaldi(1678-1741)は、言わずと知れた後期バロック時代の大家。その同時代人としてアイルランドには、トラッド好きならどなたもご存じの盲目のハーパー、オカロラン Toirdhealbhach ÓCearbhallán(1670-1738)がいる。この人の作った曲は今なお人気が高く、アイリッシュ・ハープ演奏家の定番チューンにとどまらず、日本のアイリッシュ・パブ・セッションでも毎晩必ずどこかで演奏されている。じゃあ、同時代のヴィヴァルディだってアイリッシュと親和性があるはず——という発想なのかどうか知らないが、実際に聴いてみると、笑えるくらいに違和感がない。いや、一番最初に聴いたときはホントに笑ってしまった。おおっ、そうきたか! てな感じ。
 これまでも、アイリッシュ・トラッドはヒップホップやラテンやアフリカンをはじめ、実にさまざまな「異種交配」実験の素材になってきたけれど、このアルバムのようなバロック音楽との融合は、「異種」というよりも「先祖返り」という方がしっくりくる。
 
 演奏は Ensembre baroque "Le Orfanelle della Pieta" とあって、何人くらいの編成なのか見当がつかないが、古楽器を使用したアンサンブルらしい。これにゲストとして、Noleg Caisey ほか10名がフィドルやイーリアン・パイプスやバウロンなどのアイリッシュ楽器で加わる。上に「笑える」と書いたけれども、とてもまじめに作られたCDだし、ふつうの古楽ファン、アイリッシュ音楽ファンともに楽しめる一枚ではないかと思う。なによりも、演奏が実に堂々としていてかっこいいのだ。
 
 オカロランのナンバーに限らず、アイリッシュ・トラッドの音楽がバロック期の音楽と一緒に演ってさほど違和感がないのは、おそらく根っこが一緒だからなんだろう。このあたり、厳密に考証したわけではないので大口を叩くのは控えておくけれども、アイリッシュ・ダンスとバロック・ダンスにも共通性が少なからずあったんじゃなかろうか(An American Ballroom Companionのヴィデオ・ライブラリィを観る限りでは、むしろルネサンス・ダンスのステップの方が、はるかにアイリッシュ・ダンスに近いけど)。ならば、古楽界とアイリッシュ界との接近の試みは、もっと活発になされていてもおかしくないはずなのだけど、ここにとりあげたアルバムの他にもたくさんあるのかな。そういやチーフテンズあたりが何か録音してなかったっけ?
 

2005 11 20 [face the music] | permalink このエントリーをはてなブックマークに追加

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comments

おおっ、これは。さっそくタワーで注文しました。古楽とアイリッシュの親和性ってとても気になっていたので、このCDが糸口になったりしないかなと期待してます。お久しぶりのbeeswingでした。

posted: beeswing (2005/11/26 23:19:00)

どうもです。お聴きになった感想、いつかお聞かせくださ〜い。ワタシはここんところ毎晩寝る時に聴いてます。バロックって落ち着きますもんね。

posted: とんがりやま (2005/11/28 11:23:42)

 

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