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[DVD]:International Art Animation Index

ArtAnimation

●国際アートアニメーションインデックス
 広島国際アニメーションフェスティバル傑作選
 発売元:TDKコア/販売:キングレコード
 
 Vol.1 TDBT-0114
 Vol.2 TDBT-0115
 Vol.3 TDBT-0116
 Vol.4 TDBT-0117
 
 配給:トーキョーヴィジョン
 カバーデザイン:WORKS(若菜啓)
 
 2005年8月に1,2巻が、10月に3,4巻が出て、今月(12月)には5,6巻が出る予定のDVDシリーズ。
 最近は「アート・アニメーション」と呼ぶのだそうだが、個人的になじみのない言い方なので、ここでは単に「アニメーション」と表記する。ちなみに、津堅信之『アニメーション学入門』(平凡社新書291/2005年9月刊/ISBN4-582-85291-2)にはこう記されている。

「アート・アニメーション」はいわば俗語で、明確な定義をすべき語ではないが、「主として非商業の立場で、キャラクターやストーリーよりも、映像の美的・造形的な価値を追求することで、作者の個性が強く現れたアニメーション」とでも言えばよいだろうか。結果的にアート・アニメーションは文字通り「アート」として手間をかけて制作されることが多く、10分前後の短編がほとんどである。(67ページ)

 
 このDVDシリーズは、副題からわかるとおり、過去の広島国際アニメーションフェスティバルに出品された作品のなかから厳選されたものだ。1985年の第一回からほぼ2年に一度開かれているこの映画祭、存在は知っていたものの、私は一度も見に行ったことがなく、それゆえとても気になっていた映画祭だった。だから、こういう形でDVDが発売されるのは非常にありがたい。
 
 各巻5篇収録。国別ではドイツ4(1巻、2巻、3巻、4巻)・フランス4(1巻、2巻、3巻、4巻)・韓国2(1巻、3巻)・カナダ2(2巻、4巻)・アメリカ1(1巻)・オーストリア1(3巻)・オーストリア+ルクセンブルグ1(1巻)・イタリア1(2巻)・日本1(2巻)・ニュージーランド1(3巻)・エストニア1(4巻)・ラトビア1(4巻)という構成で、フランスはともかくドイツがけっこう多いのがちょっと意外だった。
 短いもので約4分、長いものでも最長14分足らずという短編ばかりなので、いきおいその内容は寓話もしくは寓意的で象徴的な作品が多い。また、1作を除いて全て2000年以降に制作された作品ばかりで、最新のアニメーション事情を俯瞰することができるシリーズとなっているのも特徴か(個人的には古い作品も見てみたかったが)。
 
 以下、各巻からひとつずつ、好きな作品を挙げてみる。

 
●Le Processus(フランス・2000年制作)——Vol.1に収録
 Xavier de L'Hermzière監督作品。
 黒い服、山高帽を深くかぶった人間たちがどこからともなくあらわれ、どこかへ行進していく。その足取りは軍隊の行進のように規則正しく、「個人」であることを自ら放棄したかのように無個性な大集団が、道という道を埋め尽くす。あるとき、ひとりの男が転んでしまい、帽子を落としてしまう。無帽になった男はたちまち集団から排斥され、追われてしまう。逃げまどう男が最後にとった手段は…。
 白/黒2階調の、コントラストの効いた画面が鮮烈。カラフルでなめらかな動きの3Dアニメーションが多いなかで、こういうスタイルはかえって新鮮だった。8分3秒。
 
●Au Premier Dimanche D'Août(フランス・2000年制作)——Vol.2に収録
 Florence Miaihe監督作品。英題は〈A Summer Night Rendez-vouz〉。
 南仏のとある夏祭りの一夜を描いたアニメーションで、特にストーリィはない。ダンスに興じる女たち、酒を飲み交わす男たち、はね回る子供たち、そしてカップルたちの熱い抱擁など、祭りの喧噪と熱気、そして甘い官能が見事に描写されている。監督は油彩画家としても著名なんだそうで、さすがに人物造形も色彩もきわめて美しい。リミテッド・アニメーションだけどダンスシーンがとても素晴らしく、アニメーションってタイミングなんだなあと感心することしきり。付属のブックレットにも「ヨーロッパで大絶賛」とあるが、さもあらん。Vol.1〜Vol.4までの計20作品の中でも、もっとも好きな作品であります。10分40秒。
 
●Copy Shop(オーストリア・2001年制作)——Vol.3に収録
 Virgil Widrich監督作品。
 ひとりの男がいつものように目覚め、いつものように職場のコピーショップに行き、次々とコピーとりの仕事をしている。たまたま間違えて自分の手のひらのコピーを取ってしまったところ、いつのまにか男の複製がまるごとできてしまう。複製男は自分のベッドで同じように目覚め、同じように職場に行き、コピーをとり…と、時間までコピーされてしまったようだ。二人が四人、四人が八人と、コピー男がどんどん増えていく…という悲劇。
 実写映像がもとになっているが、映画の画面じたいがコピーされた画像のようなテイストになっていて、虚実の境がますますわからなくなってしまう作品、見ているうちにクラクラしてくる。同監督の作品はもうひとつ収録されていて、Vol.1収録の〈Fast Film〉(2003年)がそれなのだけど、これも大量のコピー用紙をコマ撮りした独特の映像。11分33秒。
 
●Aiz Devini Ezerini(ラトビア・2003年制作)——Vol.4に収録
 Rose Stibra監督作品。英題は〈Across Nine Lakes〉。
 どうやらラトビアのトラッド音楽らしい曲にあわせて素朴なアニメーションが展開される。先端的な技法でもなんでもないが、べつに最先端でなければいけない理由はない。トラッド音楽好きとしては、珍しいラトビア音楽に触れることができただけで満足なんであります。ラトビアの言葉はさっぱりわからないのだが、冒頭に「Walda Muktupavela/muzika/izpilda grupa/"RASA"というタイトルが入る。ひょっとすると、これが演奏者名もしくは曲名なのかな? ラトビア共和国のサイトラトビア音楽のサイトなどをざっくり眺めてみたけど、とりあえず今のところは手がかりを発見できず。3分55秒。

2005 12 03 [design conscious] | permalink このエントリーをはてなブックマークに追加

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