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[DVD]:PULSE

●pulse a STOMP Odyssey
ストンプ・オデッセイ〜リズムは世界を巡る〜
Sony Music Direct(Japan)/MHBP 58/2005年10月発売
GL Visual / Giant Screen Films(2002年)
Written and Directed by Steve McNicholas and Luke Cresswell
2003年にサントリーミュージアム[天保山]のアイマックスシアターで上映されていた映画の、待望のDVD化。本編が始まる前に上映されていた、ホンダの愉快なCFもそのまま収録されている(映画のスポンサーだし当たり前か)。
もとがアイマックスのような超巨大スクリーンでの上映を前提にしているからだろう、この作品は全体にロングショットの絵が多く、家庭用の小さなテレビ画面で観ると少々物足りなさを感じると思う。ずばり、このDVDはプロジェクターと大型スクリーンを持っているような<ホームシアターが趣味>な家庭向きだ。内容的にもいわゆる「エデュテインメント」っぽい、家族中で楽しめるものだし、本編40分程度と短いからいつでも気軽に観ることができるし。それにこの映画のとびきり鮮やかな色彩とクリアな画質、音質のよさ(リニアPCMステレオとドルビーデジタル・5.1chサラウンドが選べる)は、いかにもオーディオ・ビジュアル雑誌が喜びそうでもある(新製品レビューや評価記事を書く際の試視聴ディスクにぴったりじゃないかな)。
もちろんSTOMPファン、パーカッション好きには言わずもがな、いわゆる「民族音楽」「民族舞踊」愛好者にもたまらない映画だろう。たとえばトニー・ガトリフ監督の映画『LATCHO DROM ラッチョ・ドローム(1993)』に感動した人なら、たぶんこちらもイケるはず。
そのガトリフの名作と同様、本作にもストーリーはない。ただしあちらがインドからスペインへと、ひたすら西を目指していた直線的な構成だったのに対し、こちらは地球のあちこちを、イメージしりとりのようにシーンをつないで“リミックス”しているのが大きな違い。ガトリフが垂直性(歴史的連続性)を強く意識しているとするならば、STOMPは水平性(というか横の広がり)を強調しているように思える。
主な撮影場所はニューヨーク/ハリウッド/レッド・ロック・キャニオン(以上USA)、南アフリカ、コルカタ(カルカッタ)/ケララ州(以上インド)、ウィンチェスター(イングランド)、グラナダ(スペイン・アンダルシア)、サルバドール(ブラジル・バイーア州)。出演者も多彩で、日本からは鼓童が出ている(ニューヨークで収録)他、アフリカ各地やインドのミュージシャン、さらにネイティブ・アメリカンやブラジルの楽団たちが、それぞれ美しい「民族衣装」に身を包んで大地を踏みならす。
マーチング・バンドがブルックリン橋を行進したり、フラメンコのエバ・ジェルバブエナがアルハンブラ宮殿の屋根の上(!)で踊ったり(彼女はAntología del Flamenco[tongariyama.jp]よりもこちらの方が数段かっこいい)と、意表をついたシチュエーションも多く、けっこう笑わせてくれる。
そんなさまざまな「世界の民族の祭典」に対し、STOMP側も自分たちの得意なパフォーマンスを次々繰り出す。営業中の床屋で突然ストリートダンスを踊ったり、地下鉄でカホン・セッションしたりと、頑張ってます。中でも真骨頂は、大きな水槽にボウルや一斗缶などの金属製のモノを沈め、それを潜水服姿の男たちが叩いてゆく“水中ストンプ”だろう。このシーンはSTOMPらしさがいっぱいで、観ていてたいへん楽しい。
また、ボーナストラックではお約束の「メイキング」「監督コメント」の他、本編ではカットされていた演奏/ダンスもいくつか観られる。
先にも書いたが、この作品はロングショットが非常に多い。またほとんどのシーンでヘリコプターによる空撮が行われているようで、短い映画だけれどもお金と手間は非常にかかっていると思う(撮影開始から完成までに2年半かかったそうだ)。その分、雄大かつ壮大な映像の連続なので、ぜひ可能な限り大画面でご覧になることをおすすめしたい。後半のケララの象祭りやサルバドールのカーニバルなんか、ホント圧巻の二文字なんだから。
…と、かく言うワタクシは、プロジェクターだのデジタルサラウンドAVアンプだの120インチスクリーンだの、そういった凝った機材をナニひとつ持っておりません。どころか、ショボい7インチ画面のポータブルDVDプレイヤーで再生しながら、このエントリを書いているのでありました(笑)。
【関連サイト】
・STOMP公式サイト[stomponline.com](英語)
・ストンプ2005年日本公演公式サイト[stomp-japan.com](日本語)
・DVD『Pulse』プロモーションサイト[sonymusic.co.jp]←製品版にも収録されていない予告編などが観られます。
2006 02 03 [face the music] | permalink
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