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“飛び出す”生命の絵本

 

LIFE01

 
●The Facts of LIFE A three-dimensional study
 Jonathan Miller and David Pelham
 Jonathan Cape Limited /1984年初版
 ISBN0-224-02242-3
 
 このエントリを書くために、まずとりあえず「The Facts of LIFE」でグーグル検索[google.com]してみたら、581,000件もヒットしてびっくり。なんだなんだと見てみると、アメリカのテレビに同題の人気コメディ・ドラマシリーズがあるんですねぇ。へぇえ。でも今回はそのドラマとは(たぶん)何の関係もないはずです。
 
 では上の本、中身はなにかというと、pop-up book、いわゆる「飛び出す絵本」と呼ばれるアレです。飛び出す絵本というとふつう小さな子供向けの絵本に多いですし、この本もいちおう子供を対象にしているらしいんですが、実際はもう少し上の年齢の人向けかもしれません。なにしろ作りがとにかく精巧、というか凝りに凝った絵本なんですね。全12ページというと少ないと思われるかもしれないですが、そのぶん各ページの完成度が異常なほど高いので、圧倒されます。
 
LIFE02 左の写真は、最初の見開きを開けたところ。いきなり胎内の赤ちゃんの様子がどどーんと飛び出してきますから、本屋さんで何の予備知識もなく手にしたときは、かなりビックリしました。
 本の地色が黒色なのでわかりにくいかと思いますが、右側には染色体に関する知識を、これも飛び出したり簡単に動いたりするような仕掛けを用いて説明しています。
 
 この調子で全ページ紹介したいところですが、そうもいかないので全体の流れをざっと。次ページは男性器、その次は女性器についての、それぞれ飛び出す解剖図がふたつ続いて、さらにページをめくるといよいよ受精の瞬間。あのですね、ページを開け閉めするとですね、その動きにあわせて、精子がうにょうにょと動くんでありますよ。それがまたリアルというかなんというか(って、その瞬間の実物をこの目で実際に視たことはないですけどね)、いやあ、よくできてます。
 
 
LIFE04 最後からふたつ前のページ。無事ヒトのかたちになりつつあります。半透明の膜のように見えるのは「羊水の中」を表現しているのでしょう、紙ではなくPET素材を使用するというこだわりぶりが凄いです。つづく最後のページでは臨月間近の、おなかの中にいる状態の赤ちゃんが飛び出してきますが、ここも本の開け閉めの動作に応じて絶妙な動きをします。
 
 良いポップアップ絵本はどれもオリジナリティあふれる仕掛けがあって、そのアイディアにはいつも感心するんですが、この作品も神業的。内容もさることながら、その内容を見事にカタチにした制作陣に拍手です(ちなみに、paper engineering としてクレジットされているのは、John Strejan, James Diaz, David Rosendale の3人とDavid Pelham、そしてハイパーなイラストレーションは Harry Eillock という人)。
 
 この絵本、ひょっとして以前日本版も出てなかったですか? なんか記憶にあるような、ないような。英語版の方も、もう絶版かなと思ったら、どうやら現在でも入手可能のようです[allbookstores.com]。
 
miller_lg 私がこの絵本を手に入れたのはずいぶん昔で、このエントリを書く今の今まで著者名を全く気にしていなかったんですが、試みにグーグルで「Jonathan Miller」を検索してみたらこれまたびっくり、501,000件もヒットしました[google.com]。そんなに有名な方だったとはつゆ知らず。ということは、この絵本も相当有名なものなんでしょうか。
 ジョナサン・ミラーの経歴に関しては、とりあえずWikipedia のページにリンク[en.wikipedia.org]しておきます。英語なんでよくわからないですが、どうも医者であると同時に演劇やオペラの演出家でもあるなどとあって、なるほど「演出効果を考えることのできる医者が作った本」と考えると、この絵本はまさにその通りのできばえですね。改めて感心してしまいました。

2006 02 20 [booklearning] | permalink このエントリーをはてなブックマークに追加

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