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楽器がいっぱい!

大阪音楽大学の付属施設、音楽博物館[daion.ac.jp]の収蔵資料の一部を展示している。メインは標題通り吹奏楽に使用される楽器群で、前半は大量の木管・金管楽器。後半は世界の民族楽器から笛・喇叭・太鼓と、明治時代中期〜大正期に関西で活動していたという陸軍第四師団軍楽隊の資料を見ることができる。
大阪音大の博物館は、土曜日開館の日もあるとはいえ、原則月〜金曜日オープンなので、一般の社会人はなかなか見に行く機会がない。だからこういう外部施設での展覧会はとてもありがたい。また、フラッシュと三脚の使用は禁止だけれども撮影自体はOKなのも嬉しかった。

いずれも、より正確な音程とより効果的な音量を求めた試行錯誤の結果、木製の管にたくさんのキーを附けたり、金属の管を複雑に曲げて組み合わせるなど、さまざまな加工が施されているのが特徴。しかし、自然素材を使用したものはともかくも、設計からオリジナルで創り出す金属製楽器となると、精緻を通り越して奇っ怪な形状になってしまうことも珍しくなく、思わず笑ってしまう(写真右はフランスのA・サックス作の「テナー・ヴァルヴ・トロンボーン」。1860年代)。機能美の追求かもしれないが、エスカレートしすぎるにも程があるってば(笑)。それにしても、いったいこの「奇妙な情熱」はどこから来るんだろうな。

例えて言うなら、食材に非常に手の込んだ調理をしてソースの美味しさで魅了する料理と、天然の食材をできるだけそのままの状態でいただく料理の違い、みたいなものだろうか。どちらがどう、という比較はあまり意味がないかもしれない。奏法は必然的に変わってくるだろうし、出てくる音だってまるで違うだろう。私は管楽器の演奏経験がまったくないので想像でしかないけれども、キーがたくさん附いたフルートは一見難しそうに思えるけれども、いったん操作方法さえ覚えてしまえば素人でもそれなりに音が出せるんだろうか。逆に、木をくり抜いて孔を開けただけの民族系フルートだと、誰にでも取っつきやすそうでいて、実は単純な音を出すことからしてなかなか難しいのかもしれない。
演奏者の技量がそのまま出るのが民族系楽器、技量もそれなりに必要だがレベルを比較的平均化させるのが西洋系楽器——という理解でいいのかな。人々、というよりそれぞれの社会の、音楽に対する考え方の違いが透けて見えるようで面白い。

この展覧会には専用の図録は用意されていないが(一覧リストは貰える)、大阪音大が発行した3冊の資料を会場で手に入れることができる。一冊は全所蔵品を網羅した目録で、掲載写真が小さくしかもモノクロなのがちと残念。研究者向けなんだろうけど、素人にはやはり大きなカラー写真がたくさん載っている方がうれしい。

あとの2冊はそんな素人ファンの期待に応えてくれるもので、楽器のもつ手工芸品的な美を捉えた写真集として眺めることができる。写真右『SEMBIANZA』は民族楽器系が多く収録されている(1995年初版/装丁:山本誠一)。本文32ページで、55点の楽器を収録。欲を言えばもっともっと多く載せて欲しいところではある。写真左はサントリーが同大学に寄贈した弦楽器コレクションの目録(1999年発行/デザイン:山本グラフィック事務所)。今回の展覧会では弦楽器はひとつも出展されてないが、弦楽器好きの私としては、ぜひいつかこちらも実物を観てみたいなあ。
展覧会の最後の一角には、陸軍第四師団軍楽隊の使用していた楽器や楽譜が展示されている。楽譜がどれもとても小さいのにびっくり。楽器に取り付けて、見ながら行進するためなのかな? 見づらくてかえって苦労したんじゃないかなぁ。どうなんだろう。
2006 03 19 [face the music] | permalink
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