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アイーダ・ゴメスの新作“カルメン” GOMEZ/CARMEN(追記)

●アイーダ・ゴメス スペイン舞踊団 2006年日本公演プログラム
発行:株式会社東急文化村/2006年4月
デザイン:西村恭平(triple-o)
アイーダ・ゴメス Aída Gomez 舞踊団が、2004年に続いて2度目の来日ツアー中だ。今回は、初来日時に上演した『サロメ』と、今年3月に地元スペインはヘレスで初演されたばかりの新作『カルメン』の、ふたつのプログラム。ツアーは東京をはじめ埼玉・大阪・愛知・山口・岩手・茨城の7会場で公演があるが、4月21・22日の東京公演以外は全て新作プログラム。私は大阪公演を観に行ってきた。
一昨年の初来日公演は観ていないので、私にとっては今回が「初ゴメス」となる。もっとも、名前は聞いたことあるけど…という程度で、なんの予備知識もないまま前売りチケットを買った。演目が『カルメン』だということは事前に宣伝チラシで知っていたけど、中身をよく読んでいなかったので、これが新演出の新作舞台だということは知らなかった。もっとも、日本公演の宣伝をしはじめた昨年末の時点では、この「新作」はまだ公開されてないから、宣伝文句にも具体的なことを書けるはずもなかっただろう。今あらためてチラシを見直してみたら、案の定、特に何も書かれていなかった。
ま、とはいえ『カルメン』だ。ストーリィは誰でも知っている。彼女がこの有名作品をどう料理するのか。ストレート真っ向勝負で来るのか、あるいは奇抜な解釈の変化球で勝負するのか。おおかたの観客の興味は、たぶんそこいらへんにあるに違いない。
開演前、座席に座って買ったばかりのプログラムをパラパラ眺めつつ、大急ぎで予習。『カルメン』といえばカルロス・サウラ監督のあの映画だよなあ…と思いながらページをめくっていると、どどんとサウラ監督の顔写真が出てきたのでびっくりした。なんでも前作の『サロメ』はサウラ監督が演出を手がけたんだそうで、そのドキュメンタリー映画も同時に撮っていて、2002年のモントリオール映画祭で受賞していたんだとか。帰宅してから海外通販サイトをざっくり検索してみたけど、まだDVD化されてなさげ。いやしかし、これはぜひ観たい。
『カルメン』に先だって、10分足らずの短いプログラムが踊られる。日本初演となるこのダンス作品は、カルロス・サウラ監督の2005年の新作映画『IBERIA イベリア 魂のフラメンコ』からのものなんだそうで、おお、だとするとこちらもいつかはパッケージソフトで手に入れることができるのかな。楽しみ楽しみ。それにしても、アイーダ・ゴメスってサウラ監督とけっこう仕事を一緒にしてるのね。知らなかったぁ。
さて、いよいよ『カルメン』だ。音楽はどうするのかな、と思っていたら、おなじみのビゼーを随所に使いつつ、全体としては今回のために新しく作られた音楽を使用していた(作曲:ホセ・アントニオ・ロドリゲス)。うーん、これはどうなんだろう。最初から最後までぜんぶオリジナルで貫き通してもよかったような…。ロドリゲスのシャープな音楽の間にいきなり懐メロが混じり込む感じで、私はこれには最後まで違和感を感じたままだった。せめて現代風にアレンジされたサウンドだったら、それはそれで新鮮だったかもしれないんだけれども。
しかし、気になったのはそれくらいで、全体としてはとても楽しめた。1時間20分、途中休憩なしのステージは本当にあっという間。
群舞がただの群舞でないところがいい。冒頭の女たちのとっくみあいのケンカの場面や、中ほどの居酒屋でのどんちゃん騒ぎの場面なんかが良い例なんだけど、脇役がそれぞれ凝った芝居をしているので、ステージを観る眼がとても忙しい。主役のダンスに目を奪われつつも、視界の端で脇役たちがちゃんとキャラクターに合わせた振付で踊っていて、そちらに気を取られているとまた別の脇役がなにやら楽しいダンスを…といった感じで、細部まできちんと役割が性格づけられ振付がなされているのがたいへん面白かった(デブのオカマキャラを演じた Eduardo Carranza なんぞは実に爆笑ものだった)。この公演をもしカメラに収めるとしたら、主役のダンスをメインにしつつも、サブ・キャラたちをめまぐるしくカットインさせる手法しかないんだろうが、でもそういう風に撮ると主人公の感情表現だとかの重要な流れが寸断されることにもつながりかねないわけで、編集がなかなか大変そうではある。かくいう私もたった一度だけしかステージを観ていないから、とうぜん見逃している部分だらけで、この群舞の場面だけでもいいからあと3〜4回くらいは観たいぞ、と思ってしまった。
椅子やテーブルといった必要最小限の道具をわずかに使ってはいるものの、ほとんどは照明とホリゾントや緞帳を活用したシンプルな舞台。しかしながら、上にも書いたようなダンサー各自の芝居の細かさを含めて、的確な視覚設計とていねいな演出が実に効果的だったように思った。それにしても、ひとりひとりのダンサーのもつ、表現力の豊かさの素敵なことといったら! さすがフラメンコの国だなぁ。
(2006年4月8日 大阪フェスティバルホールにて)
【4/20追記】
おや、アクセスが急増してる…と思ったら。
し、社長…参りました(^_^;;)。
2006 04 10 [dance around] | permalink
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