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ARTツーリング

 
 さすがに黄金週間、と言うべきか。2006年のゴールデン・ウイークは好天に恵まれたこともあって、どこに行っても人でイッパイ。私は京都国立博物館で開催中の『大絵巻展』を観に行くつもりだったんだけど、ズラ〜っと長ぁい行列が駐車場から見えたので、中に入る前に早々にリタイア(笑)。うーん、しかしこれ、会期中に行けるかなあ。ちと不安。
 
 しょうがないのでバイクを駆って一路、滋賀へ。滋賀県立近代美術館で開催中の『川端龍子展』に行くことにした。道中有料道路を使ったら案の定ノロノロ運転で、やれやれだったが、肝心の美術館の方はさほど混雑していなくて、ゆったりと絵に集中することができて嬉しかった。
 この『川端龍子展』は昨年東京で観ていて、感想はこのブログにも書いたことがあるのでくり返さないが、展示品に若干の入れ替えがあり、前回と違う作品を何点か観られたのはよかった。やはり「草の実」と「逆説 生々流転」は特に傑作だと思う。
 
 ここまで来たら、ついでなのでMIHO MUSEUMまで足を伸ばしてみようかな。ここは滋賀美から15キロほど離れたところに位置する、信楽の山の中[miho.or.jp=公式サイト]に建てられた美術館で、のんびりツーリングするにもちょうどいい。
 そういえば、バイクは最近はもっぱら通勤でしか乗っていない。信号のない山道を走るのも久しぶりなら、後続車も対向車もほとんどない道を一人っきりで走るのも実に久々だ。この孤独感がたまらなく嬉しい。鋭いカーブの連続っていう適度な緊張感も心地いい。なによりこの季節、新緑がとてもキレイだし、絶好のツーリング日和なのだ。ちょっと不安なのは走行10万キロを超えてさすがにエンジンがへたり気味なんだが、まあ無理をしなければ大丈夫でしょ。
 
 ついでだし道中写真でも撮りながら…とも思ったのだけど、ほとんどが狭い林道でバイクを停めるには危険そうなので、まじめにゆっくり走る。いやあ、やっぱり山はいいですなあ…などとよそ見をするヒマもない(そりゃあぶねーって)。
 
 で、着きました、MIHO MUSEUM。1997年オープンの、それはそれは豪華な美術館であります。さすが宗教団体がつくっただけのことはありますなァ。
 

Miho

 上の写真では閑散としているように見えるけど、実際は私の甘い想像を遙かに超えた人出で、やはりゴールデン・ウイークはあなどれない。
 
 ここではいま『ニューヨーク・バーク・コレクション展』をやっている。昨年(2005年)7月から岐阜・広島・東京と巡回してきて、ここ滋賀展が最後の会場だ。
 
Ny_burke

●日本の美 三千年の輝き ニューヨーク・バーク・コレクション展
 岐阜展 2005年7月5日〜8月19日 岐阜県美術館
 広島展 2005年10月4日〜12月11日 広島県立美術館
 東京展 2006年1月24日〜3月5日 東京都美術館
 滋賀展 2006年3月15日〜6月11日 MIHO MUSEUM
 
 実は私のお目当てのひとつ「石橋図」(曽我蕭白作/1779年)は5月下旬からの展示で、だから本当はもっとあとに来るつもりだったんだけれども、まあいいや。チャンスがあれば再訪しよう。
 白描画の愛らしい小品「源氏物語絵巻」(16世紀)や「阿国歌舞伎図屏風」(17世紀前半)、「百鬼夜行絵巻」(19世紀)など面白いものがたくさんあったけど、中でもいちばん惹かれたのが「大麦図屏風」(17世紀)。六曲一隻の屏風で、金地をバックに、下三分の二ほど一面に麦畑が描かれている。麦の穂の白い部分がリズミカルに配置されていて、とてもおしゃれな、そしてきわめてモダンな絵だ。
 作者は不明なんだそうだが、この作品は絵というよりもデザインと呼ぶ方がふさわしいんだろうな。たとえば光琳のような、観る人の感覚を研ぎ澄ませるようなところがないかわりに、眼にしっくりなじむ安心感がある。言うならば質の良い室内楽、といった感じだろうか。作品として「鑑賞する」というよりも、室内装飾として「使う」のにぴったりのテイストだ。こういう屏風なら、インテリアとして買ってもいいかなあ、などと思う(うちの部屋には似合わないけど)。
 それにしても、こういう作品はカタログに図版として納まってしまうと全然印象が異なるんだよなあ。図版で部分拡大して載せてくれる方がわかりいい作品(たとえば「洛中洛外図屏風」とか)、実物とカタログの縮小図版との印象にそれほど落差のない作品(たとえば光琳や宗達の作品群)など、ひとくちに絵画作品といってもいろいろあるのが面白い。どこにその差があるのかはわからないけど。
 
 
 MIHO MUSEUMではまだ桜も咲いていた。それにも増して緑が美しい。ゆっくり深呼吸するだけで、なんだかシアワセな気分になれるんであります。
 
 実はこのあと信楽の陶器市をひやかしながら帰るつもりだったんだけど、街中はえらい渋滞だったのでうんざり。日も暮れかかって肌寒くなってきたので、そそくさと帰路につくことにした。ま、この次来る時はもう少し時間に余裕を持つべきですな。
 
 以下、オマケ。写真は全てMIHO MUSEUM内にて。
 
Miho_flower_1

Miho_flower_2

Miho_flower_3

Miho_flower_4

 きっと紅葉の季節もきれいなんだろうな。
  

2006 05 06 [design conscious] | permalink このエントリーをはてなブックマークに追加

「design conscious」カテゴリの記事

comments

 あの「大麦図」はぼくも気に入りました。若冲の「梅」も良いし、凄い。
 デザインとおっしゃっているのはその通りで、あそこに出ていたのはほぼ全部芸術品として作られたのではなく、実用品ですね。で、音楽もそうですが、芸術のための芸術よりも、実用品として作られた方が長く残るし、影響も大きいんではないかと、あの展覧会を見てて思いました。

 それと、あの図録は出色で、もちろん出品者がアメリカと言うこともありますが、一枚ずつの解説まで英訳されているのはエライ。一種の日本美術史として外国人にあげるのに最適です。

 しかし、いーなー、MIHO MUSEUM。行けるかと思ってたんですが、無理そうです。

posted: おおしま (2006/05/06 21:36:35)

 コメントありがとうございます。
 「実用品」の中でも作家性が前面に出たものとそうでないものとあって、その濃淡が楽しめた展覧会でした。たとえば本文中に例に挙げた光琳や宗達も、芸術家と言うよりデザイナーもしくはアート・ディレクターなんだと思いますが、現代でいうとイッセイ・ミヤケや倉俣史朗クラスになるのかな、ブランドで勝負する感じですよね。一方、我らが「大麦」は、作者名こそ分かっていないそうですが、それは実力がないから無名なんではなく、そもそも最初から名前など必要としなかったんじゃないかという気がします。おっしゃる通り音楽、それもトラッド音楽のありかたにも通じる部分があるのかもしれませんね。
 
 MIHO MUSEUM、関東からでしたらやっぱり一泊コースになりますかねえ。関西圏でも、兵庫・大阪あたりからだと結構気合いが要るかもしれません。まあ、コンセプトとしては来訪者に「遠路はるばる」っていう気分を持たせたいんでしょうね。
 そうそう、館長があの辻惟雄さんというのは知らなくて、図録を見てびっくりしました。

posted: とんがりやま (2006/05/07 1:30:21)

 そうそう、アート・ディレクター。工房の主宰者ですね。
 で、どうも光琳のような大手よりも「大麦」氏とか、どうも個人経営だったらしい蕭白とか、あっちのほうに惹かれます。実用品にも「大量」生産品と、個人の注文に応じたものとあった感じです。
 音楽もトラッドだけじゃなくて、バッハとかモーツァルトとか、ベートーヴェンだって、注文に応じて作ったわけです。
 実は東京都美術館ではあの「バーク」展を出たところで、隣で現代作家の作品を集めた展覧会もやってて、吹抜けの上からちょっと見えたんですよ。そちらは個人がいわば「芸術のための芸術」として作ったものなわけでしょうが、何だかすごくちゃちいものに見えました。それはそこに出展していた人たちの芸術家としての器が小さいからだと言われればそれまでなんですが、余計に落差が大きく感じた次第。

 MIHO まで日帰りはちょっときついです。やってできないことはないでしょうが、そういう強行軍で行くのも味気ない。せっかく俗界から離れるのですから、ゆったりした気持ちで行きたいです。それに、どうせ行くなら、琵琶湖にも回りたいですしね。

posted: おおしま (2006/05/07 18:39:13)

 まあ、いわゆる「芸術」の概念じたい、所詮はパトロンを失った近代以降の産物じゃないかとも思うんですよね。作家の拠って立つところが自分の内面しかなくなってしまったことの当然の帰結というか。このへん、きちんと議論しようとするとキリがないかもですけど。
 少なくとも、現代作家の作品を観るときと同列には考えられないというか、こちら側の目を切り替える必要があるような気もします。
 
>実用品にも「大量」生産品と、個人の注文に応じたものとあった感じです。

 MIHO MUSEUM自体も「個人の注文」によって生み出されたスペースですが、あの空間はおっしゃるように「俗界から離れる」ためのもので、そこらあたり、ひょっとすると客を選ぶというか、好き嫌いがわりとはっきり分かれる場所かもしれないなあとも思います。
 実は、個人的にはあそこをあまり手放しで賛美したくない気分も持っています。もちろん、MIHOは万人に向け効率性を考えられた公立の美術館などとはいろんな意味で対極にありながら、中に入ってしまえば設備などそんじょそこらの公共施設以上の快適性を有していますし、実際、建設段階でも完成後の運営上でも最新テクノロジーをかなり上手く利用していることでしょう。
 ただ、そのあたりの、建築物を含む敷地全体の「作品」としての隙のなさというか、上手く言えませんが「あざとさ」のようなひっかかりを、わずかながら感じてしまいました。このことと「大麦」が好きという感想とが、私の中でまっすぐつながっているのかどうか、ちょっとすぐには答えが出ませんが。
 
>どうせ行くなら、琵琶湖にも回りたいですしね。
 なんなら例のアイリッシュ・ミュージック・キャンプとセットでいかがですか(^_-)。もっとも、同じ滋賀県内といっても琵琶湖をはさんでおよそ正反対の場所ですが。 

posted: とんがりやま (2006/05/08 0:52:10)

 ふうむ、そう言われると、やはり一度見てみたいですね、MIHO MUSEUM。

 確かに現代作品とは同列に見てはいけないんでしょうが、見る方はそう簡単にスイッチを切りかえられない気もします。蕭白のドキュメンタリーに出てきたアーティストたちも、やはり自分たちのコンテクストで見ていましたし(あれは、まことにありがとうございました)。
 現代作品も、一度「実用」にたちかえってみてもいいんじゃないか。「デザイン」とか、レコードや本のジャケットが、蕭白なんかの後継者になるのかな。

 ミュージック・キャンプもですが、琵琶湖水族館でしたっけ、あそこが面白そうです。

posted: おおしま (2006/05/10 18:47:42)

>琵琶湖水族館
 ここですね。
http://www.lbm.go.jp/
 私は行ったことないですが、聞いた話だとけっこう面白かったとか。
 タイプは違うかもしれませんが、長浜の海洋堂ミュージアム「龍遊館」もなかなか楽しかったそうです(先の連休中に、うちの親が孫を引き連れて行ってきたらしい)。
http://www.ryuyukan.net/index.html
 そろそろバイクを買い替えるつもりなので、夏になったら琵琶湖を一周しよっかな〜。
 
>現代美術と「実用」
 そういえば連休前、京都国立近代美術館で開催中の「フンデルトヴァッサー展」を見て、いろいろ思うことはありました。今すぐブログに自分なりの感想をアップできるかと言われるとちとアレですが、この問題は引き続き、少しずつでも考え続けていこうと思ってます。

posted: とんがりやま (2006/05/10 21:43:13)

 

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