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[live]:Celtique Baroque

 
 フルート+ハープ+チェロというちょいと珍しい編成の、デビューコンサートを聴いた。グループ名を「セルティック・バロック Celtique Baroquue」という。
 その名前の通り、音楽的指向性はアイルランドやスコットランドの「ケルト音楽」と「バロック音楽」を融合させたもの。この種の試みはそう多くないはずで、新鮮で心地いい2時間を過ごさせてもらった。
 
 「バロック×アイリッシュ」ということでは、以前このブログでも古楽とアイリッシュというエントリで触れたことがあるけれど、両者は親和性が高い。にもかかわらず、そこんとこをいっちょ一緒にやってみよーじゃねーの、と思う人はそれほど多くない。いや、単に私が無知なだけっていうこともあるんだろうけど。
 クラシック畑、とくに古楽を専門にやっている人ならオカロランをレパートリーに加えていることもあるし、イングランドのバラッドを好んで取り上げる声楽家もいる。かつて、そういう類のレコードを何枚か聴いたこともあるんだけれども、どうもピンと来ないことが多かった。こちらの耳がトラッド方向に大きく偏ってしまっているせいもあるだろうが、譜面に忠実に正確かつひたすら美しく演奏されてしまうと、どうもなんだか落ち着かない。ましてや、コンサートホールできちんとかしこまって聴かなきゃなんないとなると、ますます座り心地が良くない。
 
 セルティック・バロックは、同じくバロック期の音楽を取り上げるといっても、主に伝統音楽をずっとやってきた人たちからのアプローチである。当然、表現が大きく異なる。
 楽器の違いもあるんだろうか。しかしチェロは共通だし、フルートもこの日主に使用されていたのはバロック・フルートとのことだから、古楽の人が使うものとは共通だろう。ハープはクラシックで使う大きなグランド・ハープではなく、アイリッシュ・ハープである。今回のライブではゲストにフィドルとソプラノが参加していたが、フィドルもクラシックのヴァイオリンと楽器そのものは同じものである。
 結局、奏法が違う、ということになる。だが奏法というより、“ノリ”とか“グルーブ”が大きく異なる、といった方がより正確かもしれない。まずは“ノリ”あっての奏法だろうから。
 クラシックの演奏家がクラシックの“ノリ”でトラッドを演ってみたよ、というのと、アイリッシュ・ミュージシャンがアイリッシュの“ノリ”でバロックを演りました、というのの違い…ということなんだろう。で、聴いていてどちらの方がより面白いと感じるかどうか、なのだ。
 
 私には——先に書いたように、私の耳はトラッド仕様になっているので——断然、後者の方が面白い。スリリングであり、非常に熱い。
 たとえ同じ曲を演奏しても、古楽の人がやると「舞曲」になり、トラッドの人がやると「ダンス・チューン」になるんである…って、こういうたとえは余計にわかりづらいかな。要するに、音楽がより生身のものになっているように、私には感じられたのだ。
 

Celtiquebaroque

 メンバーは以下の通り(プロフィールはこちら)。
 hatao…アイリッシュ・フルート
 今尾 公美…アイリッシュ・ハープ
 星 衛…チェロ
 
 ゲスト:河原 のりこ…ソプラノ
     さいとう ともこ…フィドル
     
 スコットランドの作曲家、ジェームズ・オズワルド James Oswald(1710-1769)とアイルランドのハーパー、オカロラン Toirdhealbhach Óearbhallán(1670-1738)の作品を中心に、「スカボロー・フェア Scaborogh Fair」や「シューリ・ルゥ Siúl a Rúin」などなじみ深い歌や伝承曲のダンス・チューンなどを盛り込んだ多彩な構成で、聴き飽きさせなかった。前後半あわせて2時間があっという間だった。
 
 
 同じコンサートをどこか公立の小さなホールでやってもそれなりに面白かったはずだが、この日のライブが他ならぬアイリッシュ・パブで行われたということが、実はもっとも凄いことだったかもしれない。というのも、この店でのライブは、終了後に大セッション大会になるのが通例だからだ。それまで楽しくコンサートを聴いていた観客数十人が一斉に自分の楽器を取り出し(パブのオーナーも含む)、出演者と一緒になってノリノリのダンス・チューンをガンガン演奏しまくる光景は、圧巻の一言である。残念ながら私は、終電の関係もあってセッションが始まってまもなく中座せざるを得なかったが、自分の生活圏にこういう音楽空間があることの贅沢さを、車中で改めて噛みしめていた。正味の話、こういうのに身近に接していたら、高いCDなんて買うのがアホらしくってしょうがない。
 
 メンバーが関西と関東に分散しているので、このグループのライブはそんなにしょっちゅう聴けるというものでもないらしい。次回は秋ごろを予定しているという。今度はどんな音楽を聴かせてくれるんだろう。今からとても楽しみだ。
 
(2006年6月3日・Irish Pub fieldにて)

2006 06 04 [face the music] | permalink このエントリーをはてなブックマークに追加

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comments

ライブレポートしていただき、ありがとうございます。
そして、ライブに来ていただき、どうもありがとうございました♪

写真など、メンバーからメールで送っていただき、拝見させて頂きました。
私もホームページ&ブログしていまして、
是非写真を使わせていただきたいのですが、よろしいですか?

(・・・というのも、私のデジカメからパソコンにつなぐ線がを紛失中であります・・・汗)

またライブする時は是非いらしてくださいね。頑張ります。

posted: ともこ (2006/06/08 21:28:18)

 こんにちは。コメントありがとうございます。
 
 ライブお疲れさまでした! とても充実したひとときでした。ゆったりと浸らせてもらいました〜。
 写真の件、あんなんでよろしければご自由にお使い下さい。つーか下手な写真でスミマセン。
 近場とはいえfieldにもなかなか行けない今日この頃ですが、なるべく足を運びたいです。またライブなどされるときは教えてくださいね! よろしくお願いしますです〜。

posted: とんがりやま (2006/06/08 21:51:33)

 

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