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At The Cross Roads

京都は黒谷塔頭、永運院というお寺で《AT THE CROSS ROADS》と銘打たれたコンサートを聴いてきました。何の交差点やねんというと、どうも今日はここでインド音楽とアイリッシュ音楽が交差するらしいです。さてその首尾やいかに。

どうやら Nantha Kumar さんのパーカッションが聴けるというのが今回のコンサートの目玉らしいのですが(2度目の来日で、まだ日本に着いたばかりなんだそう)、なるほどさすがに繰り出すリズムが鋭く、ほれぼれする太鼓です。
バンスリは Carlos Guerra さんという京都在住のスペイン人、Nanthaさんはシンガポール生まれのインド人で現在マドリード在住、タンブーラは日本人の中村徳子さんという国際色豊かな面々だからでしょうか、私はインド音楽は全く疎いのでアレですが、古典音楽そのままというよりも、楽器で会話をするフリー・ジャズを聴いている感じでした。変幻自在でスリリングなリズムの応酬が楽しく、かなりノリノリ。左の写真は、手前の楽器がタンブーラ、奥のは花を活けるんじゃなくて楽器として作られた素焼きの壷で、ガタムというんだそう。このガタムがとてもいい音してました。
続いてアイリッシュ組。Felicity Greenland さんというイギリス生まれの女性がバウロンを手に、ギターのJay Gregg さんとのデュオで登場です。
上の写真のチラシにも〈アイリッシュ〉とあるんですが、実はレパートリィはスコティッシュ中心でした。バウロンを鮮やかに叩きながら Felicity さんは Puirt a Beul (マウス・ミュージック)をぶっ続けで3曲歌い、観客の度肝を抜いておりました。声に艶があってドスもきいていて、それでいて軽やか。いやこれは凄い凄い。今日来た甲斐がありました。そのあとの、えーとあれは早口言葉ソングとでも言うのかな?〈Bog Down in the Valley〉では観客の外国人比率が高いこともあって大盛り上がり。いやはや楽しいのなんの。
休憩をはさんで Nantha Kumar さん再登場。南インドの小型タンバリン、ガンジーラの長い長いソロをぶっ放します。この曲もフリー・インプロビゼーション。 Felicity さんの口三味線に負けじと(?)こちらも口太鼓(っていうんですかね)が何度も飛び出す大熱演でした。
そのあとはいよいよ出演者勢揃いの大「クロスロード」セッション。 Nanthaさんが Felicity さんにジグのリズム(と歌)をリクエスト。笛とギターは二人の太鼓になんとか付いていく、という感じ。うーん、たぶんほとんどぶっつけなんだろうなあ。互いの手の内を探りあっているうちになんとなく終了。しかしなんですなぁ、アイリッシュのリズムもタブラが入るだけで見事にインド風になりますなぁ(笑)。
ラストは、Carlos さんが「インドのフォーク・ミュージックだ」と言って童謡風のメロディを吹き、それにパーカッションが付いていく。Nanthaさんはなんでも合わせることのできる人で、どんどん自分の世界を創りあげる。Felicity さんもちょっと困った顔をしながらもバウロンはすさまじく素晴らしく、お見事。この二人が並んで太鼓を叩いている光景は、かなり背筋がゾクゾクしました。
アンコールではFelicity さんが〈Twa Corbis〉を歌い、それにガタム(あれ、タブラだったかな)とバンスリ、ギターが絡みます。これもほとんどぶっつけに近い状態と思われますが、それでもなんとか合わせてしまうのは流石。
つーことで、インド×アイリッシュ(むしろスコティッシュですが)のクロスロード、無事交差したか、と言われるとちと苦しかったかも…ですが、もとより滅多に聴けない組み合わせはまことに新鮮。ビンビン響くタブラやガンジーラをすぐ目の前で聴けたこともいい経験でしたが、Felicity Greenland さんの堂々たるバウロンとマウス・ミュージックも聴き応えが十二分にあり、とてもいいひとときでした。
それにしても、こういう場では普通のアコースティック・ギターは不利ですねぇ。ギターが、というよりもフレット楽器が、というべきかな。今回のコンサートはタブラやバウロンなどのパーカッションが主役で、これらの楽器はリズムも音程も指先一つで自在に変化させられます。バンスリにしても西洋音楽の楽譜ではあらわしにくい音程をラクに出せる楽器ですし、歌だって同じ。みんな「その時の自分の生理」にいちばん近いものを出せるんですが、ギターだけが明らかに異質。Jay さんひとりがどうにも音楽の中に入りにくそうだったのが印象的でした。ま、拠って立つ体系が全く異なるのでしょうがないっていうのもあるんでしょうけど。
Nantha Kumar さんは月末まで日本に滞在するとの由。ワークショップの他、今日のインド組メンバーにベースを加えたユニットでのライヴなども予定されているそうです。
2006 07 10 [face the music] | permalink
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comments
黒谷さんの方へ行ってらしたんですね。わたしの方は、出演者とのン十年(?)のつき合いもあり、こちらの方へ。
http://www.hi-ho.ne.jp/gotta/tanabata.htm
今回はパスしてしまいましたが、Felicityさんは、昨年暮れに彗星のごとく京都に登場、祇園のタイグズ(金曜)やヒル・オブ・タラ(土曜)等のアイリッシュ・パブのギグに出演、聴衆を魅了しているシンガーです(バター・ドッグズと共演したこともあり)。
http://www.irishpubkyoto.com/
http://www.thehilloftara.com/
レパートリーは、アイリッシュというよりブリティッシュが中心のようですが、サンディ・デニーの歌を唄わせたら、もう素晴らしい! みなさま、ぜひ週末は京都のパブへ・・・と、Felicityさんファンクラブ会長(自称)の妄言でした。
posted: 熊谷 (2006/07/10 2:05:02)
コメントありがとうございます。週末に限らずですが、いろいろとイベントが重なると身体がみっつくらい欲しくなりますね、ホントに。
それにしても実にいいものを聴かせていただきました。サンディ・デニー! なるほど、それはぜひ聴かねばなりませんな。往年のフェアポートのコピーバンドとか、どなたかやってませんかねえ。
ファンクラブ、私も入りますっ! で、会費はギネス何杯でしょうか(爆)
posted: とんがりやま (2006/07/10 12:52:44)