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海を見に行く・2006年夏(2)

 

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 事前に綿密な計画を立て、スケジュールをきっちりこなしていく旅行もいいけれども、出たとこ勝負の気まぐれ旅行も悪くはない。私は出不精で、旅行など滅多にしないからいろいろ不慣れなところもあるんだけれども、人里離れた山奥ならいざ知らず、コンビニがある場所ならたいていのことはなんとかなる…はずである。
 荷物といえばカメラと小さなツーリングマップだけ。近くに本屋があればガイドブックなりもう少し詳細な地図なりが手に入るんだろうけれど、まぁあってもどうせあんまり見ないし。
 
 というわけで日本海を見に行くプチ旅行、思いがけずも2日目である。
 
 昨日はその気だった蘇洞門めぐりだが、そのためにわざわざ小浜まで戻るのが面倒臭くなって早々にパス。またいつかでいいや…とか言ってると、たぶん一生行かないんだけどね。
 朝イチから走れる、一番近い観光地は三方五湖が一望できるレインボーラインだ。通行料は二輪車700円ナリ。高いのか安いのかよくわからない。
 山間の国道やこういう観光道路を走っているといつも思うのだが、よくもまあこんなところにこんな立派な道路を建設したもんだ、としょっちゅう感心する。人間のパワーってすげーよなあ、と、今どき小学生でも言わないような感想がつい出てしまうのだ。
 
 まだクルマも少ない快適な道路は、梅丈岳の展望台へと続く。
 
 ところで日本の観光地って、どんなに大勢の人で賑わっていても必ずどこかしら昏さを孕んでいるような気がする。一昨年に行った伊勢志摩も、時期はずれだったこともあってかなりうら寂しい感じだったが、シーズンまっただ中であっても雰囲気は大して変わらないだろう。だから私は、いわゆる観光地は昔からあまり好きになれなかったのだが、トシをとるとそういう寂寥感もそれなりに面白く感じられるようになった。いま、一部で廃墟が人気を集めているらしいが、観光地の施設などはさしずめ“生きてゐる廃墟”とでも言えないだろうか。
 たとえば、ここでみつけた物件はこれ。
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 山頂の展望台へはケーブルカーとリフトが動いているのだが、裏側に第二リフトがある。現在は使われていないようだ。明るい日差しを浴びて、あっけらかんと静止したままのリフト。うん、コレですよコレ。
 
Nihonkai06 今はまだ“廃墟”とまでは言えず、一夜干しのナマに近い状態だが、このままあと2〜3年も野ざらし雨ざらしになれば周囲は雑草に覆い尽くされ、鉄柱には錆が浮きまくり、かなりいい感じに寂れていくはずだ。覚えていたら、その頃にもう一度来てみたいなぁ。背後の展望台にいる観光客の賑やかな歓声を聞きつつ、立ち入り禁止のロープ越しから夢中でシャッターを切る。なにやってんだか。
 そういえば昨日行った天橋立にも、ここと同じようにケーブルカーとリフトがあった。実は私は軽く高所恐怖症で、ケーブルカーのように上下左右がちゃんと囲まれているならまだしも、簡単なイスを一本のパイプでぶらさげただけのリフトはどうにも怖い。これが冬のスキー場だとあたり一面雪なので距離感があまりないが、夏場は地面がはっきり見えるのでヤバイ。
 もちろんネットなど安全対策もそれなりに施されてはいるのだろうけど、うっかり手を滑らせたらやはりタダではすまないだろう。カラダもそうだが、手荷物にも気をつけなければならない。
 いちおう平気な顔をしてリフトにのりこみ、あろうことか乗りながら写真まで撮っていたのだが、このとき手のひらににじんでいた汗はなにも暑さのためだけではなかった、はずである。
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 写真は左が天橋立、右が三方五湖のもの。イヤなら高いところに登らなきゃいいんだが、バカと煙はなんとやら。あーしかし、今思い出してもちょっと怖いぞ。ていうかこういうのって、忘れた頃にふと夢に出てきたりするんだよね。
 怖いと言えば、生身をむき出しにするバイクで峠道の急激な下りカーブを走るときも、実はかなり怖い。はるか眼下に広がる風景に向かって飛んでいるかのような感覚なのだ。なので私はそういう場所では極端にスピードを落とす。後続車が見えたら迷わず道を譲る。ああいうつづら折りの峠をものすごいハングオンで攻めていくライダーの気が知れない…そのくせそんな山道を走るのは嫌いではないのである。我ながらヘンな性格だと思う。
 
 この梅丈岳の展望台から、東京にいる友人に写メールを送った。そのときは何も知らなかったのだが、実はちょうどそのころ東京は大停電で混乱していた時刻である。いやはや、なんとも間が悪いったらありゃしない。
 
 
Nihonkai08 ともあれ再び車上の人となって、三方五湖を背にさらに東へ向かう。すぐに美浜町に入る。美浜原発を遠くに眺めつつ、そちらには行かずに、同じ半島の反対側にある敦賀原発を目指すことにする。敦賀半島の海岸はどこもかしこも海水浴客で溢れており、道路沿いは自家用車の駐車の列で走りにくいことこの上ない。
 発電所のすぐ近くに敦賀原子力館がある。さすがにカネのかかった立派な施設なんだけど、肝心な展示物に限って撮影禁止だったのはなんだかなぁ。暑い中を走ってきたので、説明パネルを見てもどうにもアタマにはいらない。結局、見学というよりただの避暑になってしまった。右の写真は、館内から見た発電所。
 
 発電所を過ぎると、すぐに立石岬だ。ここで道路も終わる。ここに、明治初期に建てられた灯台があるというので、行ってみることにする。
Nihonkai09 ところが、これがとんでもない話だった。かろうじて石段はあるものの、きわめて足場のわるい急な坂道。たぶん数百メートルくらいだと思うのだが、少し歩くだけでイヤな汗がどっと噴き出てくる。何度も休憩しながら(というよりその場にへたり込みながら)灯台を目指したのだが、「あと200m」の看板があったあたりでついに断念してしまった。それなりの心づもりをしていたならなんてこともないのかもしれないが、今回はコンディションが良くない。ここであまり無理をしすぎるのは避けた方が賢明だろう。これから京都まで帰らなきゃなんないし。
 それにしても、その昔はこの狭く急な坂道だけを使って、灯台を造ったんだろうか。これでは資材を運ぶにしてもそうとう困難が伴ったと思うんだが、やっぱり人間のパワーというのは凄いものだ…と、今や自然に還りつつある石段を見上げながら、しみじみ思う。
 私にとっては“幻の灯台”になってしまったが、写真がないものかと帰宅してから検索してみたら、ありました。うーん、これはやはりいつの日かリベンジせねばなるまい。
 
 
 
 そういやせっかく夏の日本海まで来たのに、一度も水に入ってないや。まあ、海を「見に」来たんだし、それでいいんだけれども。
 リフトだの原発だの石段だのの写真が続いたので、最後にいかにも夏休みの海らしい写真を一枚。
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 オジサンとしては、海水浴よりもこのあと温泉でさっぱりしてから帰りたい。さて、敦賀市内でどこか探すことにしようか。風呂上がりにビールが飲めないのがツライとこだけど、おうちに帰るまでが遠足です(^_^;)。
 
 

2006 08 16 [wayfaring stranger] | permalink このエントリーをはてなブックマークに追加

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