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[DVD]:TRINTY One Step Beyond(追記)

 

Trinity_2006

●アイリッシュ・ダンス・カンパニー《トリニティ》2006年ツアーパンフ
 編集・発行 日本交響楽協会
 
 2004年11月の初来日に続いて、2度目の来日ツアー真っ最中の《トリニティ》(公式サイト[trinity-japan.jp])。私は3日の兵庫県立芸術文化センター公演を観てきました。
 そのときの感想は、可能ならば今月下旬発行のメールマガジン【クラン・コラ】に書かせていただこうかとも考えているんですが(2004年公演の感想はこちら)、ひとことで言うと「ああ、アメリカンなんだなあ」という思いを再確認したステージでした。「アイリッシュ・ダンス・カンパニー」というより「アメリカン・アイリッシュ・ダンス・カンパニー」とでも呼ぶ方が良いんじゃないかと。新ジャンルを創ったとかそういう話ではなく、バレエで言うとたとえばキーロフ・バレエとアメリカン・バレエ・シアターのテイストの違いというか…って、かえってわかりにくいですかそうですか。
 
 
 今回の来日公演では、オリジナルDVDを発売しています。これ、どうも会場限定発売らしい。
 
Trinity_dvd

 
●ONE STEP BEYOND/TRINITY IRISH DANCE COMPANY
 TJDV001/2006年11月発売
 制作:WTTW/Network Chicago
 日本版プリ・プロダクツ:有限会社エヌ・アンド・エフ
 製造:日本ビクター株式会社
 日本版制作・発行・販売:トリニティ・ジャパン
 
 もちろんNTSC/リージョン2の日本仕様で、日本語字幕付き(翻訳:菅井裕美)、モノクロの二つ折りですが「燦然と息づく舞台」と題された石井達朗さんの解説文も入ったブックレットまで付いていますから、このまま一般の店頭で販売してもおかしくないほど「きちんと」している商品です。「会場限定」と謳うことでいっそうの集客を狙ったということもあるだろうし、流通や在庫に関わるコストやリスクを回避する意図もあったのかもしれませんが、いずれにせよちょっと勿体ないかなとも思います(店頭が無理ならせめてネット販売すればいいのに)。
 
 映像はシカゴのテレビ局が制作したもので、収録コンテンツは以下の通り。
  1. オープニング・タイトル
  2. ジョニー Johnny
  3. 霧 The Mist
  4. マーク・ハワードによるコメント
  5. 夜明け The Dawn
  6. ホロウ・ムーン Hollow Moon
  7. ジャスト・シャノン Just Shannon
  8. カーラン・イベント Curran Event
  9. セネカ川 Seneca River
  10. ブラックソーン Blackthorn
  11. トレブル・ジグ Treble Jig
  12. パドレ Padre
  13. ステップ・アバウト Step About
  14. マーク・ハワードによるコメント
  15. ケルティック・サンダー Celtic Thunder

 このうち[06]はギター/ヴォーカルのブレンダン・オシェイの、同じく[09]はホイッスル/フルート/イーリアンパイプスのクリストファー・レイヤーの独奏(会場では彼らのソロCDも売っていました)。[12]もドラムのジャッキー・モランのソロですが、彼は日本ツアーには参加していません。DVDでのパフォーマンスは右手でタイコを叩きつつ、左手で横笛や笛やディジリドゥーなどを次々持ち替えて演奏するというたいへん面白いもので、これは日本でも大受けしただろうなあ。ナマで観てみたかった。
 以上3曲とハワードのコメントを除いた9曲がトリニティのダンス作品で、どれも日本公演でも演じていたレパートリィばかりです。
 ちなみに、今回の日本公演では、直前になってプリンシパルが変更になっていますが(ダーレン・スミス→ギャレット・コールマン)、DVDはもちろんダーレン・スミス版。公演とDVDで両者の違いを楽しむのもいいでしょう。
 
 
 04年/06年の公演プログラムにはどちらもプリンシパル・ダンサーのインタビューや「アイリッシュ・ダンスとは」の類の文章は載っていますが、トリニティ創設者であり芸術監督のマーク・ハワードの声はどこにもありません。このDVDはそのハワード氏の肉声を聞くことができるというだけでも、かなり貴重なものかもしれません。そもそものスタートから現在に至るまで、トリニティとはすなわちマーク・ハワードそのものだったんだ、ということが、これを観てたいへんよくわかりました。
 同時に、彼らのダンスは単に「アイリッシュ・ダンス」とカテゴライズするだけでは不十分で、むしろ「アイリッシュ・アメリカン」ならではのダンスであり表現であると見た方がよりしっくりくるのではないかと思うようになりました。そのあたりは、同じシカゴ育ちでダンサーとしてのキャリアにも共通点の多い、マイケル・フラットリーと同じレベルで考えるべきことなのかもしれません(参照:Michael Flatleyの自伝が出たぞ)。
 DVDの解説や公演の宣伝チラシなどは「トリニティ=アイリッシュ・ダンス」という視点で書かれており、それはそれで大きな間違いとは言えないのでしょうけれども、まんまイコールでもありません。「アイルランド固有の美意識」や「アイルランドならではの伝統文化」が、アイリッシュ・アメリカンであるマーク・ハワードと彼の創りあげたトリニティにどう受け継がれ、あるいはどう変容していったのか。なんでもかんでも十把一絡げに「アイリッシュ・ダンス」と括ってしまうのではなく、その差分を見極める作業がそろそろ必要になってきているのではないでしょうか。
 このエントリの冒頭で、私はトリニティのことを「アイリッシュ・アメリカン・ダンス・カンパニー」と書きましたが、彼らのステージには「アメリカにおけるアイリッシュネス」というテーマが大きく存在していると思えてならないのです。
 
【11/12追記】
 ↑の本文とは全く関係ないんですが、京都上七軒のお茶屋「市」舞妓ブログアイリッシュ・ダンス・カンパニーというエントリがあったのでご紹介。アイリッシュ・ダンスの感想を京ことばで綴った、おそらく世界で最初の文章ではないかと思います(^_^;)

2006 11 04 [dance around] | permalink このエントリーをはてなブックマークに追加

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comments

 ご感想、お待ち申し上げます(^_-)。

 アイリッシュ・アメリカンとアイリッシュの違いはおもしろいですね。ソーラスの音楽にもありますし、今度来るティム・オブライエンがやっていることにもつながります。

 それにアメリカのアイリッシュ・ミュージックやダンスがまた全部がアイリッシュ・アメリカンというわけでもない。

 それとは別に、「売りやすい」「わかりやすい」ってンで、何でもかんでも「アイリッシュ」でくくられるのにはそろそろ辟易してます。だから「スカボロー・フェア」がアイリッシュみたいなとんでもない話までなっちゃいますからね。そういうのは、やはり目につくそのつど、いわにゃいかんのかなあ。

posted: (2006/11/05 12:06:49)

トリニティー。
前回の公演は、こんなものか感が強かったのを覚えています。
技術的には競技会で素晴らしい経歴のダンサーの集団にしても、
ダンスの構成、振り付けの素人っぽさに汗…。
まさか再来日を果たすとは思っていなかったのです。
そんな記憶から今回の公演チケットは悩んでまだ買っていませんでした。
が、やはり見るべきかな、と思いました。
アイリッシュ・ダンスファンにとっては
音楽とダンスの協演は大変貴重な機会ですし、
何か違うものが感じられる可能性を楽しみにしたいと思います。

posted: (2006/11/05 18:58:00)

 コメントありがとうございます。
 
>大しまさん
 2004年プログラムの方には「トリニティ=アメリカ育ち」の視点があったと思うんですが、06年版にはそのあたりがごっそり除かれている印象です。マーク・ハワードのインタビューが載らないことも合わせて、それがハワードの意志なのか、あるいは他に理由(単なる営業上の方便とか)があるのか、ちょっと気になります。とりあえずは、著名人コメントのたぐいに「トリニティこそがアイリッシュ・ダンスの王道・神髄」みたいな誤解を抱かせるのが一、二あるような気がするので、それはちとまずいかなと。

 >「スカボロー・フェア」がアイリッシュみたいなとんでもない話
 そ、それはひどい(汗)。やはり違うものは違うと、きちんとしておくべきだと思うんですがねぇ。入り口で混乱してしまうとのちのちまで尾を引きますし。「売りやすい」「わかりやすい」でいい加減なことをしていると、結局は自分の首を絞めることにしかならないような。
 
 
>まるみさん
 私の周りのアイリッシュ・ダンス・ファンの間でも、初来日公演の評価はあまり高くなかったです。私自身も前回のステージを「散漫」だと書いてますし。
 そのあたりの、あまりよい印象を与えなかったシーンやダンスを抜き出してみると、あんがいトリニティの独自性(というか非アイリッシュ性)がはっきりするかもしれません。
 私は、その「非アイリッシュ性」をむしろ肯定的に「アメリカン・アイリッシュならではの個性」と捉えられないかと考えてみたいのですが、その発想そのものがすでに大きく空振りしているかもしれません(^_^;

posted: とんがりやま (2006/11/06 21:24:43)

 

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