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[exhibition]:オルセー美術館展

●オルセー美術館展 19世紀 芸術家たちの楽園
Musée d'Orsay Paradis d'artistes au XIXème siécle
神戸展 2006年9月29日〜2007年1月8日 神戸市博物館
東京展 2007年1月27日〜4月8日 東京都美術館
【カタログ】
発行/日本経済新聞社/2006-2007
制作/美術出版デザインセンター
デザイン:石塚肇、西尾玉緒、川添英昭
本展は、1996年の『モデルニテ:パリ・近代の誕生』、1999年の『19世紀の夢と現実』に続き、オルセー美術館所蔵の作品展3部作の掉尾を飾る展覧会…なんですが、ワタクシそのどちらも観ておりません。なので以下の感想文は、あくまで今回の展覧会に限ったものであることを、あらかじめお断りしておきます。
展示作品は19世紀後半から20世紀初頭、印象派の作品が多くを占めています。印象派はいつでも人気がありますねぇ。私自身は、少し前までは印象派はもういいや、とかなんとか思っていたんですが、久しぶりに眺めてみるとやっぱり面白いもので。
展示は5つのパートに分かれています。
I. 親密な時間 Intimité
II. 特別な場所 Lieux d'élection
III. はるか彼方へ Fuir! là-bas, fuir!
IV. 芸術家の生活—アトリエ・モデル・友人 La vie d'artiste
V. 幻想の世界へ L'étrange
II. 特別な場所 Lieux d'élection
III. はるか彼方へ Fuir! là-bas, fuir!
IV. 芸術家の生活—アトリエ・モデル・友人 La vie d'artiste
V. 幻想の世界へ L'étrange
先に印象派の作品が多くを占めていると書きましたが、写真や工芸作品もところどころに出ており、それが展覧会全体のアクセントになっています。正直、絵ばかりずらずら並んでいると途中でダレてくるんですが、あいだに違うジャンルのものを挟むことによってメリハリが生まれ、最後まで飽きさせません。この構成はナイスです。
もうひとつ、作品解説を別売りの小冊子にまとめ、会場展示では作品名や作者名、画材などを示したパネルのみにしたのも好感が持てました。このことによって絵そのものにより集中できます。解説小冊子を100円とはいえ別料金にしたことには賛否あるかもしれませんが、元来ああいう「解説」は必ずしも有用なものでもないですしね。必要と思う人だけが手に取ればいいことなんで、このやり方には諸手をあげて大賛成であります。私が行った時にも観客が大勢いたにもかかわらず、わりにスムーズに流れていたように感じましたが、それはひょっとして「解説パネルなし」の効果かもしれません。だとすると、今後はこういう展示手法が増えてくるんじゃないでしょうか。
事前に予習などしてないので、誰のどんな作品が来ているのか知らないまま入場しましたが、思いのほか好きな作品が多く、楽しめました。特に入ってすぐ、いきなりホイッスラーの『画家の母の肖像』(1871年)と対面できたのには感激しました。この絵は画集で見知っていたものの、やはり現物は格別です。モノクロームなのに暖かく、凛としていてなんともいえない気品が漂っています。このほか比較的長時間眺めていたのはベルナール『日傘を持つブルターニュの女たち』(1892年)、ゴーギャンのうちいくつか、それにギュスターヴ・モローの『ガラテア』(1880年)が観られたのも嬉しかった。
それ以上に、今回は工芸品のコーナーが面白かったですねぇ。直径75センチというバカでかい『大きな飾り鉢』(デック、1867年)には思わず笑ってしまったし、トルコブルーが美しい『花瓶』(レベール/デック、1863年頃)にはうっとり。アール・デコ期の作品といわれても信じてしまいそうな『大型装飾花瓶』(セヴァン、1862年)のモダンさと発想の自由さには目を見張るばかりで、全体の割合からすれば数は少ないものの、どれも珠玉といっていい作品ばかり。
写真作品はまるで絵のよう(写真機やレンズの精度がまだまだということもあるでしょう)で、逆に絵画のいくつかは写真を参考にしているなと思うもの(たとえばレイセルベルヘ『舵を取る男』1892年、などはカメラが発明されなければ絶対に描かれ得なかった構図でしょう)があり、相互に影響を与えあっていたことがよくわかります。そんななか、セザンヌは写真じゃ絶対に撮れない構図(消失点を複数もたせたり、遠景を極端に大きくしたり)を試み、けれども全体としてはとても自然に見えるもので、こういう作品はまさに「絵画中の絵画」と言っていいんでしょうね。セザンヌは2点(『サント=ヴィクトワール山』1887-90年、『ギュスターヴ・ジェフロワ』1895-96年)だけでしたが、この人だけは他の誰とも違うことをやっていたんだなあと、改めて感じ入りました。
というわけで、全体的に大満足。とても楽しく充実した展覧会でした。
うーん、しかしこうなると、見逃していた前2回のオルセー展の内容が気になるなあ。もし機会があれば、せめて図録を見てみたいものです。
2006 12 07 [design conscious] | permalink
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