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マンガ斜め読み

 
 本屋さんにもしばらく行ってなかったんですが、久しぶりにマンガの棚を覗いてみて、急に物欲がムラムラと(笑)。あれこれ買い漁った中には、まったくの新刊から発売されて少し時間がたっている本までさまざまですが、まぁこういう出会いもタイミングなんでしょうね。いつ描かれたかとかいつ発行されたかとは別の意味で<自分にとっての最新作>とでも言いましょうか。
 そんな、最近手に入れた本の中からいくつかを並べてみました。表題通り、まだざっくりとした「斜め読み」しかしてませんけど。
 
* * * 
 

Dranko2

●帰って来たどらン猫2 上・下
 はるき悦巳著/双葉社/2006年12月刊
 [上巻]ISBN4-575-94047-X
 [下巻]ISBN4-575-94048-8
 装丁:市村一真
 
 双葉社のWebマガジンに平成14年12月〜平成16年1月まで連載されていた作品の単行本化。かの名作『じゃりんン子チエ』の名脇役である小鉄とアントニオ・ジュニアが大活躍するサイド・ストーリィもので、まだ本編が連載中だった1984年に『どらン猫小鉄』がまとめられたのがその最初。チエちゃん終了(作者の親御さんの介護問題などがあったそうですが)の後しばらくたってWebマガジンに『帰って来たどらン猫』が掲載され、2003年に単行本化、本作はその第二弾となります。
 最初の『どらン猫小鉄』はかなりエグいといいますか、ワタクシ映画は詳しくないんですがマカロニ・ウェスタン調?のマンガで、とにかく最後まで死体がゴロゴロ転がる作品でした(それもみなとんでもない殺され方)。
 2003年の『帰って来た〜』も同じ路線ですが少しおとなしめで(それでもなかなかハードですが)、それは多分に作家としての「リハビリ」的な位置付けだったのかもしれませんが、本作になって<はるき節>とでも言えそうな残虐趣味が復活しています。それもシリーズ最長、上・下巻にわたる長さ。チエちゃんや『日の出食堂の青春』、あるいは『ガチャバイ』の昭和ノスタルジー路線とは一線を画したテイスト、けれどもこちらの方が、おそらくは作者の好みが全開になってる気がします。
 
 下戸にも旨く、酒の味のわかる奴でも思わず杯が進み、冷やでもよし燗でもよし、そんな「名酒」づくりに成功したノンキ(という名の猫、です)が巻き込まれた壮絶な騒動を、小鉄とアントンJr.の大暴れによって解決する物語。…いや、「解決」といえるかどうか、これまでの『どらン猫』シリーズと同様、後味はけっして甘いものではありません。「ブランド」から「偽ブランド」が生まれる過程といった<社会的>なトピックを織り交ぜつつ、修羅場を乗り越えてきた男たちの悲哀をハードボイルドに描ききる語り口はこれぞ昭和ロマンって感じで、さきに「マカロニ・ウェスタン」と言いましたが、むしろ任侠もの邦画のノリなのかな。
 作者にとって小鉄は動かしやすいキャラなんでしょう。でも、そろそろ全くの新境地も見てみたいなあ…なんてことを思ったり。
 
 
Mu_san

●ムーさん
 二階堂正宏著/新潮社/2006年2月刊
 ISBN4-10-301551-9
 装幀:新潮社装幀室
 
 月刊誌『小説新潮』連載作の全面改稿。先のはるき悦巳が戦後の昭和なら、こちらは戦前のそれでしょうか…と書くと誤解を生みそうかな。なんだかこの人の漫画を見てると、昭和初期に流行したというエログロナンセンスって言葉を連想するんですよね。って、その時代に生きてたわけではないので、あくまで勝手な<イメージ>なんですが。二階堂正宏は、そんな古き良き(?)エログロナンセンスを純粋培養させて現代に甦らせた作家なんではないかという気がしています。
 『極楽町一丁目』シリーズがグロなら、『ムーさん』はエロの代表でしょう(この作家には『鬼平生半可帳』という、エログロミックスのさらにとんでもない作品もありますが)。それも中途半端なエロではなく、徹頭徹尾エロしかないという、まことに根源的な、つまりはラディカルな作品。カッコつけたような「ポルノグラフィ」だとか「エロティシズム」だとかいうのともちょっと違う気がする、あくまでカタカナ二文字の「エロ」で、それをとことん突き詰めたらこうなったという感じ。それともうひとつ、二階堂マンガの笑いは「ブラックユーモア」とかいわれてますが、「ギャグ」とか「ユーモア」という言葉もあまり似合わない気がする。やっぱり「ナンセンス」というのがしっくりくるような。
 さっきから同じ事しか言ってない気もしますが、要するに純度100%、混じりっけなしのピュアなエロ・グロ・ナンセンスが描ける作家なんだと思っています。
 というわけで、本作もある意味非常に実験的なマンガでもあります(星新一が書いた唯一の?ポルノ作品を思い出してしまった)。それゆえ、コレを読んで面白がれるか怒って放り出してしまうかはひとえに読者次第。この人ほど読み手を選ぶ作家もいないんじゃないかなぁ…とか思ったり。
 
 
Tanpen83

●熱狂短編マンガ傑作集 '83
 中野晴行監修/小学館/2006年12月刊
 ISBN4-09-179012-7
 装丁:田原幸則(きゃらめる)
 
 考えてみれば今回のエントリで取り上げてるのって「昭和」テイストの作品ばかりだな。まいっか。
 で、この作品集ですが、1983年つまり昭和58年に少年誌/青年誌各誌に掲載された読み切り短編を集めたアンソロジーで、収録作品は全23作品に及ぶボリューム。どんな作家が収録されているかは上の書影から読み取っていただけるかと思いますので改めて列記しなくてもいいかな。1、2作を除いてワタクシ的には初めて読む作品ばかりだったので、とても新鮮でした。今さら気恥ずかしい、と思うようなのもありますが、ま、そこは時代の気分を感じ取れるということで。
 ところで、なんで1983年なのかと言うと、マンガ雑誌各誌が競って「読み切り短編」を掲載していたのはこの年あたりが最後なんだそうです。翌年以降、雑誌は長期連載ものにシフトしていくのだそうな。なるほど、これまであまり気にしていなかったんですが、形式の変遷にはこういう商業上の要請によるところが大きいんですね。私は短い話が好きなので、読み切りがまた復活してくれたら嬉しいかも。つーか何十巻と続く大長編を読みこなす気力体力がだんだん減少してきてますので(苦笑)。
 本書の売れ行き次第では、今後他の年代のアンソロジーも、ということですが、個人的な注文としてはここに少女マンガも含めてほしいな。今では埋もれがちとなっている名品がたくさん眠っていそうな気がしています。それも別巻仕立てではなく、あくまで一巻本として少年マンガ・少女マンガ・青年マンガが一気に見渡せるアンソロジーを読んでみたい。別にこういう立派なハードカバーではなく、雑誌ふうのラフな造本でOKなので一挙1000ページなんてどうでしょうかねえ…などと思ったり。
 
 
Encyclopedia_manga

●現代漫画博物館 1945-2005
 竹内オサム・米沢嘉博・ヤマダトモコ編/小学館/2006年11月刊
 ISBN4-09-1790103-8
 アートディレクション:三宅政吉
 
 そういえば、先日行った京都国際マンガミュージアムの売店にはこの本が山積みで売られてました。本が出たばかりということもあるだろうし、ショップ側もまだ他に売る商品がないのかも(苦笑)。まぁ、そんなヒネた見方ではなく、単純にこういうエンサイクロペディアで下調べして、興味をもった作品を読みにミュージアムに出かける、という連係プレイを期待しているんでしょうけど、とはいえあそこで収録全作品を読むことができるのかな?
 2004年に同じ出版社から『漫画大博物館』(松本零士・日高敏編著)という大著がでています。1980年刊行の『漫画歴史大博物館』(ブロンズ社)の増補改訂版で、こちらは大正末期から昭和35(1960)年頃までが対象。本書とあわせて読むと近・現代の日本のマンガのメジャーな流れがおおよそ掴めることができます。
 とはいうものの、こういう本は律儀に一ページ目から順に読んでいくというより、必要に応じて必要な箇所だけ調べるという事典的な使い方をするものなんでしょうね。かくいう私もまだ全てのページに目を通したわけではないです。本体価格4200円とちょいと値が張りますが、基本的資料となる一冊として、手元に置いておいて損はないぞ…と思ったり。
 
 
Snow_white

●グリムのような物語 スノウホワイト
 諸星大二郎著/東京創元社/2006年11月刊
 ISBN4-488-02391-6
 装幀:関善之 for VORALE Inc.
 
 諸星版グリムといえば、以前このブログでも『トゥルーデおばさん』を取り上げたことがありましたが(記事はこちら)、あちらとは掲載誌が違います。なので、作品のテイストもずいぶん異なっていて、こちらはよりSFっぽい仕立てになっています。
 マンガの単行本は、書店ではビニール袋に入っているので中を確認できないのがツライ(おかげですでに持ってる本を何度重複買いしたことか^^;)。この本のオビには収録作品名が載っているんですが、そのなかに「ラプンツェル」の名があって、あれれと思ってしまいました。もしかして再録? 古い単行本ならともかく、今年出た本からの再録はちょっとどんなもんだろう…などと首をひねったんですが、帰宅して開封してみて納得。同一素材からの別アレンジ作品だったんですね。作者はよほどこのお話が気に入っていたのでしょう。
 作品はどれも東京創元社の雑誌「ミステリーズ!」に掲載されたものばかりですが、巻末の「初出一覧」には「ミステリーズ!」vol.1とかvol.2とかだけ書いてあって、はっきりした年月の記載がないのは困りもの。その雑誌の読者でない身には、第何号とかいわれてもわかるわけないじゃないですか。書誌情報としてはまことに不親切な、自分勝手な書き方だなあ(今調べてみたところ、vol.1が2003年6月号で、当初はやや不定期な発行だが最近は隔月刊のよう。参考/東京創元社:『ミステリーズ!』:バックナンバー販売のお知らせ)。
 全体的に、朝日ソノラマ『ネムキ』ヴァージョンに比べるとセリフが多い印象。気軽にパラパラというよりも落ち着いてゆっくり読むのがいいかな。それこそ、眠れない夜なんかにぴったりかも…と思ったり。
  

2006 12 13 [booklearning] | permalink このエントリーをはてなブックマークに追加

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comments

先週、朝日だったか毎日だったかの広告で見かけたので、アマゾンのカートに入れたんですが、「スノウホワイト」はマンガだったんですね?
てっきり、『キョウコのキョウは恐怖の恐』(講談社)と同じく、小説集かと思っていました。
けどこの人の場合、読んでる最中、てこちらに伝わってくるイメージがマンガも小説も変わらない・・・(あ、ほめ言葉です)。

posted: (2006/12/13 0:53:04)

諸星白雪姫、私も買いました。
発売日の翌日に本屋に行ったら、意外にも(笑)売り切れていて
何件かハシゴしてようやく見つけました。

「トゥルーデおばさん」と比べると、こちらは割と有名な童話が多かったですね。
「狼と7匹の子ヤギ」がちょっと意味不明でしたが(笑)、
たしかに、前作と比べて全体的にSFっぽい雰囲気になってましたね。
何より嬉しかったのが、原作のあらすじが巻末に載っていたこと。
「トゥルーデおばさん」は、原作がどういう話なのか分からないものが多かったんで
後でいろいろ調べて回っちゃいました。

posted: しのぶ (2006/12/13 12:31:36)

 諸星ファンのみなさま(笑)、コメントありがとうございます。

>熊谷さん
 ええ、これはマンガ作品ですぅ。その小説の方は読んでないんですが、やっぱ買いですか?

>しのぶさん
 おお、発売日の翌日に…さすが。私は発売されてることすら知りませんでした(^^;)
>原作のあらすじが巻末に
 そうそう、あれは良いサービスですね。きっと「トゥルーデおばさん」のときにそういう声が寄せられたのかも。

posted: とんがりやま (2006/12/13 17:28:09)

 

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