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スタインバーグを語ろう(1)

 

Illuminations

 
●Saul Steinberg:ILLUMINATIONS
【Exhibition】
 2006年11月30日〜2007年3月4日 The Morgan Library & Museum, New York
 2007年4月6日〜6月24日 Smithonian American Art Museum, Washington, D.C.
 2007年7月20日〜9月20日 Cincinnati Art Museum, Cincinnati, Ohio
 2007年11月2日〜2008年2月24日 Frances Lehman Loeb Art Center, Vassar College, Poughkeepsie, New York
 
【Catalogue】
Joel Smith著/Charles Simic序文
Yale University Press刊/2006年初版
ISBN0-300-11586-5
Jacket design by Katy Homans
 
 昨年(2006年)11月から来年(2008年)2月まで、アメリカ合衆国各地でスタインバーグの大規模な回顧展が開かれています。上の書影はそのカタログ。——と書くと、さも見に行ってきたかのようだけど、残念ながらこの本は京都で買ったものです(^_^;)。いやしかし、どうせ日本には来そうにもないので、できることなら出かけてみたいものではありますが。スミソニアン狙いならゴールデンウィーク、夏休み中だとシンシナティかぁ。ううむ(→追記:行ってきました)。
 
 ソール・スタインバーグ Saul Steinberg、1914年6月生まれ、1999年5月没。生没年月日に関して、Wikipediaには<1914年6月15日-1999年5月12日>とありますが(参考:英語版日本語版)、このカタログには巻末に詳細なバイオグラフィが載っており、それによると誕生日の6月15日というのは「ユリウス暦」なのだそう。へえぇ。同日を西暦で換算すると1914年6月28日となるようです(参考:暦変換ツール【換暦】)。それから亡くなった日付はWikiには5月12日とありますが、カタログでは5月19日となっています。こちらの方はたぶん西暦表記だと思うんですが、どちらが正しいのかな。
 ルーマニア生まれで、渡米は1942年、翌年に市民権を取得。1945年に初めての作品集《All in Line》を出版し、以後大人気を集め、日本を含む多くの漫画家に影響を与えます(日本版Wikipediaには藤子不二雄の名が挙げられてますが、ちょっと意外でした)。これについては、たとえば以下のような証言があります。
植草 戦後まもなくでしたか、日本の漫画家があっちに行ってスタインベルグに会ったという記事が、美術雑誌に出ていました。とにかく、「オール・イン・ライン」とか、彼の漫画はよかったですからねえ。しかし、日本の漫画家が会って机のなかから出して見せてくれた原稿をみたとき、インキの使い方の下手なのにびっくりしたっていうんです。
 ああいう世界をはじめて作ったというのは、ユニークな存在でしょうな。
植草 あれは、やっぱりスタインベルグ自身が建築家だからだろうと思うんです。とにかく真似をしたくなるけれど、真似ができない独得なものですね。
 むずかしいですね。
植草 気に入って真似して見せたら、真似だといわれるくらいつらいことはないだろうし、あれをまた皮肉ったスタインベルグ式のがありますね。とにかく漫画界の最高峰です。(「対談 外国漫画とのおつきあい」植草甚一・星新一『文藝春秋デラックス1976年10月号「ユーモアの研究 世界のマンガ」pp.37-38』)
 この対談中の「日本の漫画家」って誰だろう、というのが私の長年の疑問なんです(2014年3月追記:荒俣宏さんとやなせたかしさんのこの対談によれば、冨田英三さんとのこと)。「スタインベルグ風」というと私などは横山泰三が思い浮かぶけど(この人ははっきりスタインバーグからの影響を認めてます)、わざわざアメリカまで会いに行ったのかな。いずれにせよ、漫画集団か独立漫画派のなかの誰かだろうなとは思うんですけど。
 もうひとつ、「インキの使い方が下手」云々に関してはどう解釈すればいいんでしょうね。私はスタインバーグの原画を見たことがないのでなんとも判断しかねますが、ひとつ考えられそうなのは、あくまで印刷を前提にした原稿ゆえ、切り貼りやらホワイト修正やらがいっぱいで、誌面でみるあのすっきりとシャープな印象からは相当かけ離れていたのかもしれません(ここらはあくまで私の勝手な想像ですけど)。かの有名なイームズの椅子にドローイングした作品をみても、けっこうラフに描いている感じですし。
 
 
 スタインバーグの作品は、しばしば自己言及的です。たとえば Rolland Collection of Films on Art のスタインバーグのフィルムなどはもっともよく彼の特徴を表しているように思います(リンク先、いちばん右端のカラム中の「Free Clip」をクリックすると短いムービーが見られます)。また、オフィシャルサイト THE SAUL STEINBERG FOUNDATION の GALLARY ページに並べられている作品の数々を眺めていても、やはりそう思います。どこか醒めているというか、自分と自分を取り巻いている環境だとか状況をぜんぶ相対化して眺めている、別の視線があるように感じます。では、その視線はどこから発しているのでしょうか——この項、続きます。
 

2007 01 07 [design conscious] | permalink このエントリーをはてなブックマークに追加

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comments

いろんなところに登場してすみません。
サンペさんの居間には、3枚の絵が飾られていました。
そのうち一枚がスタインベルクの絵です。
夫は食卓に座り、妻はヴァイオリンを弾いている作品です。

カレはいつもその絵を眺めるそうです。

posted: (2007/01/08 21:12:02)

 おお、そうなんですか。スタインバーグにも音楽を描いたスケッチはたくさんありますよね。特にバイオリンがお好みのような。

 ちなみに、あとの2枚はどんな絵なのでしょう。

posted: とんがりやま (2007/01/08 22:10:41)

 

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