[CD]:夏が来る

●夏が来る サハの口琴と声の芸術
フェドーラ・ゴーゴレヴァ+アリビナ・ジェグチャリョーヴァ+オリガ・ポドルージナヤ
NKK002/日本口琴協会/2000年
春がまだ来ないうちから「夏が来る」とはなんじゃいな、という感じなんですが、いやはや、今年(2007年)はロクに冬の寒さが来ないうちに本格的な春になってしまいそうで、ここ数日なんかも、朝晩はともかく昼間歩いてたら汗ばんでしまうくらいの陽気であります。天候不順による大規模な自然災害がここんとこ毎年のように(地球規模で)起こっていますが、人類もなんだかいろいろ大変になってきましたねー。
ところで、このCDを思い出したのは他でもない、先日ある人と会っていてふいに口琴の話題になって、そのときこのアルバムの話を…と内心思いつつアルバム名をちゃんと思い出さないうちに会話が終わってしまったので、その復習というかなんというか。
タイトルにある「サハ」は、東シベリアにある「サハ共和国」のこと。世界地図帳をお持ちの方はちょっと拡げてみてください。北海道の上、樺太(サハリン)からそのままずずっと北の方に目を移していくと「ヤクーツク」という都市名があると思います。それがサハの首都です。ちなみにサハは、ロシア圏内ではじめてという浜崎あゆみのファンクラブができたり、日本のアニメ/サブカル情報誌を出す若い人がいたりする国でもあります。

最近行ってないので現在はどうなのかわかりませんが、東京・中野ブロードウェイ3Fの「タコシェ」に口琴関係の本やCDがたくさん置いてあって、ずっと昔にそこで口琴関係のアルバムをごっそり買ったことがあったんですが、何枚か聴いた中でわたしがもっとも気に入ったのがこのCD。口琴の演奏もさることながら、歌(声)がとにかくすばらしい。コブシといいますか、細かなビブラートが非常に美しいです。こういう歌唱法はロシア連邦内の各共和国に共通するなにかがあるように思いますし、あるいはうんと拡げて東はアイヌから西はハンガリーあたりまで、ユーラシアを貫くなにかがあるんじゃないかなどとも妄想してしまいます(それはひょっとすると、インドから西へ向かうジプシーうたの系譜よりも、さらに広大なものなのかもしれないな…などとさえ思ったり)。そんななかでも、サハのそれはもっとも繊細な気がします(口琴と歌をひとりで同時演奏という驚異的なトラック[18]もあります。ごく短いものですが、これが鳥肌もの)。
口琴というとやたらびょ〜んびょ〜んとはじいているだけじゃん、と思いこんでいる人にこそ聴いて欲しいアルバム。こんなに精緻で絶妙で、またこんなに豊潤でダイナミックな表現ができる楽器なのかと驚かされます。サハ音楽の入門用としても最適の一枚ではないかと思います。
2007 02 13 [face the music] | permalink
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