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スミソニアン詣で—美術館(2)

 
 スミソニアンには小ぶりながら東洋美術の専門館もあります。それぞれコレクターの名を冠したフリーアギャラリー Freer Gallery of Art とアーサー・M・サックラー・ギャラリー Arthur M. Sackler Gallery がそれで、両館は地下でつながっているのでシームレスに移動できます(サックラーからは S.Dillon Ripley Center International Gallery を経由して国立アフリカ美術館 National Museum of African Art ともつながっています)。
 フリーアギャラリーには彼の友人だったホイッスラーの作品も多く展示されていますが、やはり目玉はインド・イスラム・中国・日本の書画工芸および彫刻作品でしょう。それとホイッスラーがデザインした“孔雀の間” The Peacock Room と呼ばれる、ジャポニスム趣味全開の部屋(もとはレイランドというひとのロンドンの自宅の食堂だった由)。
 

Peakockroom

 なるたけ明るくお見せしてますが、実際はもっと暗いです。この写真じゃ色がわかりにくいですが、ロイヤルブルーっていうんでしょうか、暗く沈んだ濃い青と金の組み合わせがたいへん美しい。
 しかしまあジャポニスムというのは日本人がみるとおかしなもので、この写真の反対側にキモノを着たご婦人の油彩画も飾ってあるんですが、日本に来たガイジン観光客が「一番」とか「侍」とか筆文字ででかでか書かれたTシャツを着ている感じというか、まあそれをいうならパリのブランド物を喜んで身につけてる日本人も同じなんでしょうけど、なんというか奇妙に居心地の悪いモノではあります。ま、世の中はそういう幻想と誤解の上に成り立っているのだ、と言ってしまえばそれまでなんですが、<ジャポニスム>もまた<民族>などとおなじく大きなフィクションなんだよなぁと実感した次第。
 
 フリーアでは小さなテーマ展がいくつかあって、そのひとつ《DAOISM in the Arts of China》が面白かったです。
Daoism

 ところが《DAOISM》がよくわからない。『道教』の英語表記なら《TAOISM》になるんじゃなかったのかなぁと思うんですが、はて。
 同展のなかからひとつ、〈Zhong Kui Traveling〉という絵巻物を掲げておきます。適当に撮ったものをあとから繋げたのでおかしなことになってるのと、途中がちょっと抜けておりますが(クリックすると拡大します)。
Traveling

 
 ついでに、作品下の説明パネルも。ブレてますが(汗)。
Panel1
Panel2Panel3

 
 
 
 ところで、ワシントンDCは桜でも有名で、毎年春には桜祭りをやっています。なんでもことしは3月までとても寒く、ところが4月になって急に暖かくなって桜が一斉に咲き、あっというまに散ってしまったんだそうで、天候が不順なのは日本だけじゃないんだなあという感じですが、スミソニアンの各ミュージアムでも《Cherry Blossom》のロゴや桜のイラスト入りの、どピンクなグッズをいろいろ売ってました(どれもこれも日本人向けのセンスじゃあなかったですが)。日本美術とも関係が深いサックラーギャラリーではその関連企画として《East of Eden》という特別展(ネーミングが良いですね)をやっていて(5月13日まで…あ、もう終わりか)、これがたいへん面白かったです。
 
Sackler

 同展の副題は〈Gardens in Asian Art〉というもので、アジア美術における庭の表現がテーマ。大きく南と西アジア、東アジアのふたつに分けています。「南と西」ではインドとイランの美術が中心、東アジアは日本が多く、中国と韓国も少し。
 
 こういうふうに「アジア」を大きくくくる展覧会というのは、意外に日本ではあまりみかけないですね。日本でこのテーマなら日本美術だけで充分まかなえるってこともあるんでしょうけど、それより視点が根本的に異なっているように思います(例えていうなら、わたしたちが「ヨーロッパ美術」「アフリカ音楽」などとひとくくりにしてしまって、その方面に特別な関心がないかぎり個々の差異にあまり注意を払わないような感じでしょうか)。
 実際、インド美術とイランのそれとの違いはまだ比較的わかりやすいのですが、東アジアの方、日本と中国と朝鮮半島の美術作品なんて、じっくり見ても違いがなかなかわからない。会場は作品保護のため照明をうんと落としており、説明パネルがぜんぶ英語で(アタリマエですが)読みづらかったから説明文をほとんど見ずにいたら、どれがどれだか。けれどもそれはそれで、逆に新鮮な体験ではありました。こういう十把一絡げの展覧会(というとものすごく語弊がありますが)こそ、日本でやると面白いと思うんだけどなあ。
 
 この展覧会の図録なりパンフレットなりが売ってないかとミュージアムショップを探してみたけどみあたらず、がっくり。かわりにこんなモノを見つけました。
 

Drawmanga1

●DRAW MANGA
 Peter Gray著/Arcturus Publishing Limited/2005年発行
 ISBN0-572-03013-4
 Cover and book design by Steve Flight
 
 アメリカ人の著作かと思ってたけどよくみたらロンドンの出版社から出てるんですね。まあどっちでもいいんですけど。
 表題にはマンガとありますが、これはどちらかというとアニメ絵でしょうか。ヒロインや巨大ロボットの描き方を解説した、ティーンズ向けと言っていいだろう薄い本です。
 表紙の美少女キャラにはまだそれなりに「萌え」られそうですが、中を開くとえらいことに…。
 
Drawmanga2

 
 《孔雀の間》と同様、ここにも「座り心地の悪さ」がっっ。うーん、やはり、東は東、西は西…ってとこなんでしょうねぇ。


2007 05 15 [wayfaring stranger] | permalink このエントリーをはてなブックマークに追加

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