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スミソニアン詣で—博物館(3)
航空宇宙博物館や自然史博物館でもそうだったんですが、スミソニアンはあちこちしょっちゅう改装しているようです。スミソニアンではないですがナショナルギャラリーもなにやら工事をしてました。このあたりの人気館は部分改装はしても全面閉鎖はなかなか難しいんでしょうが、わたしが行ってみたかった館のひとつ、国立アメリカ歴史博物館 National Museum of American History はどうやら全館閉店の様子。しかたないなあ…とあきらめていたんですが、航空宇宙博物館の一角に収蔵品のいくつかを展示しているスペースがありました。おお、ラッキー。
感心したり考え込んだり、いろいろアタマを使うことの多いスミソニアン巡りの中では、この一角は素直に楽しかったですね。展示品目は少なかったものの、アメリカン・ポップ・カルチャーのいちばんいい部分をダイジェストで見せてもらった感じ。ジャクリーヌ・ケネディのガウンからレイ・チャールズのサングラスまで、R2-D2とC-3POのツーショットからマリリン・モンローの手袋まで、いろんな“お宝”が狭いスペースを埋め尽くしています。写真はプリンスのギター、1989年。
スミソニアンの〈総合情報センター〉とも言えるのが、キャッスルと呼ばれる建物。その名の通り、小さなお城のような外観です。
ここには、この一大ミュージアム群をつくるもととなった、イギリスの科学者ジェームズ・スミソニアン(1765-1829)の墓もあります(本人は生前いちどもアメリカを訪れたことはなかったそうですが)。他の博物館は10時オープンが多いのですが、ここだけは8時半から開いているので、モールのマップを貰うなど事前の情報収集に役立ちます。ご覧のように、前庭の花壇もキレイです。ベンチで休憩しているだけでもホッとします。
順番としては最後になりましたが、比較的最初のころに訪れたのが国立アメリカン・インディアン博物館 National Museum of the American Indian。昔はニューヨークにあったらしいんですが、04年にワシントンにやってきました。まだ新しい館内は広々としていてキレイです。
スミソニアンの他のミュージアムは、航空宇宙博物館のような人気館であっても、無料で貰える案内パンフレットのたぐいは英語版のみなんですが(館内の案内板には日本語表記もちらほら)、ここアメリカン・インディアン博物館には英語版パンフの他にスペイン語版も常備されてました。そういや、自然史博物館や航空宇宙博物館のような超人気館クラスだったら、ミュージアムショップに日本語解説本も置けばそこそこ売れると思うんですけど(というかワタシが欲しかった)、見つけられませんでした。さすがにナショナルギャラリーには、日本語版はじめ各国語向けのきちんとした図録を売ってたんですけどねぇ。
左の写真は、特別展《IDENTITY by DESIGN》の告知ポスター。女性の伝統的な衣装ばかりを集めた、華やかな展覧会でした。色遣いといい、布の質感といい、たいへん美しいもので、うっとり眺めておりました。
アメリカン・インディアン博物館の常設展示はおおきく分けて三つのテーマに分けられていて、それぞれ〈Our Peoples〉〈Our Univers〉〈Our Lives〉と名付けられています。大雑把にインディアンの歴史、世界観、現在の姿、という感じでしょうか。〈Our Univers〉ではインディアンの各部族ごとのブースを設けて特徴や生活伝統を紹介するなど、細かな展示がされています。
館内の広さに比べると展示コーナーはわりあいコンパクトで、映画や講演会にでも使うのでしょうか、シアターがいくつもあります。ショップのスペースも大きくとってあり、展示物だけをさっさと見れば1時間半コースってとこでしょうか。が、わたしはなぜかあちこちで引っかかってしまいました。
その<引っかかり>の要因がナニなのかは、今はまだよくわかりません。もともとアメリカン・インディアンにさほど思い入れがあるわけでもなく、途中まで——古代のお面や人形などの出土品——はけっこう気楽に見ていられたんですが…。
…うーん、どうもさっきから筆が、いやキーボードが進まない。わたしがここで受けた、おそらく「衝撃」と名付けていいだろうナニモノカをきちんと書き記しておくべきなんでしょうけど、それがなんなのか、自分でもよくわかってません。おそらく<大国の中に生きる少数民族>だとかなんとか、そのあたりの問題意識めいたものを考えようとしているのでしょうけど、でもそういう風に安直なコトバにしてしまうと、まったくの見当外れのようにも思えます。
自分でよくわかってないものは他人に説明のしようがない、ということで今はこれ以上のことを語るのはやめておきましょう。
ひとつだけ。館内にいた時から、帰国したらぜひ読み返さなくちゃと、一冊の小説を思い出していました。
●青い湖水に黄色い筏 A Yellow Raft In Blue Water
マイケル・ドリス著/村松潔訳/文藝春秋/1994年2月刊
ISBN4-16-314560-5
装画:粟津謙太郎
デザイン:平林育子
原著は1987年ごろに出ているそうですから、ざっと20年前の小説ということになります。ふだん小説などほとんど読まないわたしが、なぜこの本を買ったのか、今となっては記憶もあいまいですが、かろうじて読後の印象だけは残っていたようです(というか、小説を滅多に読まないからこそ、たまに読む本が残りやすいとも言えるのかも)。
アメリカ西海岸のインディアン保留地とその周辺が舞台。15歳の少女レイヨーナ(彼女は黒人とのハーフでもある)、その母親で、奔放な生活がたたって40歳そこそこというのに身体がボロボロになっているクリスティーン、そしてクリスティーンの母親なのだけど、娘や孫には<アイダおばさん>と呼ばせているアイダ。この三人のインディアン女性を主人公にした小説で、同一シーンがそれぞれの視点で描かれるなど面白い書き方をしています。
日本に帰ったらぜひ読みなおそう、と勢い込んでいたのはいいですが、実はまだぜんぜん読み切れておりません。昔はこれくらいの厚さなら長くても二日で読み終えたんだけどなあ。今は一日5ページ進むのがやっとです。まあ、速く読めばいいってものでもなし、博物館を訪れたときからずっと自分の中に棲み着いている<ナニモノカ>とゆっくりじっくりお付き合いするつもりで、もうしばらく小説世界に遊んでいることにしましょう…。
2007 05 17 [wayfaring stranger] | permalink Tweet
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comments
いわゆるアメリカ・インディアンと総称される人びとは今のヨーロッパ各国人よりもおたがいの違いが大きいそうで、そう言われてもなかなか実感がわかないんですが、西部劇などでおなじみのイメージは主に平原インディアンのものらしいですね。それが「インディアン」とひとくくりにされてしまうところが、そもそも、なんだかなあ。
ぼくも昨年あたりから急に「引っかかって」、とんがりやまさんと同じ引っかかり方ではないと思いますが、ぼちぼち読んでるところです。そのドリスの本は初めて知りましたが、ドリス自身、確かインディアン出身ですね。
それと、インディアンは単純に「少数部族」でも「先住民族」というだけでもないようですし。
その博物館はやはり見たいですが、今のアメリカには行きたくないしなあ。図録なんかは買われましたか。
あと、音楽がねえ、今一つピンと来ない。というか、どれが本物なのか、ようわからん。アイリッシュの影響を受けたフィドル音楽なんてのもあって、それはそれで面白いですが、それはやはり傍流でしょうから。その辺で、何か収穫はありましたか。
posted: おおしま (2007/05/17 7:02:09)
>おおしまさん
博物館の職員やショップ店員なんかはインディアンもしくはその系統のひとたちなんだろうと思うんですが、おっしゃるように「違い」はわかりませんでした。ひとりだけ、ワシントン・ナショナル空港では、髪を三つ編みにした「いかにも」な風貌の職員さんをみかけましたが。
>アイリッシュの影響を受けたフィドル音楽
《SAN JOSÉ MAKES THE FIRST VIOLIN》という題のついた、古い民族フィドルの展示物がありましたが、そのへん関係があるのかな。
アイリッシュといえば、館内のビデオ紹介で「アイリッシュの影響も受けたダンス」は見ました。カナダの保留地だったかと思うんですが、クロッグダンスよりもうすこしだけアイリッシュ寄りのダンスで、詳細は不明ですがRiverdanceみたくチームを組んで興行してるっぽい感じでした。ちなみに音楽はフツーにカントリー。歴史的経緯はわかりませんが、いずれにせよ商業的な匂いの強いものと判断しました。
音楽と同様、ダンスもよくわからないですね。ショップでCDやDVDをたくさん売っていたので、おそらくエクササイズ向けだろうダンス教則ものを買ってみました。まだ中身はしっかり観てませんが(そのうちエントリに起こすかも)、目次をみると「コンペティション・ダンス(ソロ・ダンス?)」と「ソシアル・ダンス(カップルもしくはグループ・ダンス?)」というふたつのカテゴリがあるみたいで、こういう分類のしかた自体がすでに「なんなんだろう」感があります。
posted: とんがりやま (2007/05/17 16:14:06)
自己レスです。
すみません、読み直したらなんだか頓珍漢なこと書いてますね。わたしのレスの第一段落は「なかったこと」にしていただけるとありがたいです。
どーもまだ時差ボケがなおら…えっ、天然ですかそうですか(大汗)
posted: とんがりやま (2007/05/18 0:21:08)