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積ん読記・2007

 
某月某日 坪内栄夫『シルクロードと世界の楽器 音楽文化の東西交流史』現代書館(ISBN978-4-7684-6953-8)、蒲田耕二『聴かせてよ愛の歌を 日本が愛したシャンソン100』清流出版(ISBN978-86029-201-0)、プリーストリー/橋本槇矩訳『イングランド紀行上』岩波文庫赤294-2(ISBN978-4-00-322942-2)、エドウィン・ミュア/橋本槇矩訳『スコットランド紀行』岩波文庫赤296-1(ISBN978-4-00-322961-3)購入。とりあえず文庫本なら寝床でも読みやすいのでスコットランドから読み始める。不景気まっただなかの1934年のスコットランドの風景が、しかしなぜか他人事のようにも思えないのは何故なんだろうか。 某月某日 COCO『今日の早川さん』早川書房(ISBN978-4-15-208855-0)購入。大人気ブログコミックの書籍化。発売日に本屋に走ったんだけど、例によってどこのコーナーに置いてあるかがわからず初日ゲットならず。がっくり。何軒も本屋をはしごして数日後に無事入手。いそいそと読み始めたのだが、ブログ版では気にならなかったのに、書籍版ではひどく読みにくく感じた。何故かというと、マンガのセリフをはじめ文章がみな横書きなのに、本が普通の和書と同じ縦書き用の綴じになっているためで、さらに一コマ内の複数のセリフが作品によって右の方から読むようになっていたりその逆だったりで統一感がない(いちおう先に読ませたいセリフは上から順にっていうレイアウトにはなっているが)。視線が右へ左へと無駄にウロウロするわけで、読みにくいことこの上ない。マンガじたいは面白いだけに、なんだか勿体ない気がする。この本はウェブ界隈はじめ新聞や雑誌でもすでにたくさん書評が出ているけれど、これを「読みにくい」と書いた人はいたんだろうか。ひょっとして、こういう感想を持ったのはわたしだけなのか。日本語における縦書き/横書き問題はけっして軽視できない問題だと思うのだけど、案外誰も気にせずすらすら読んでるのかな。ううむ。

Books0712某月某日 アンリ・カルティエ=ブレッソン/堀内花子訳『こころの眼 写真をめぐるエセー』岩波書店(ISBN978-4-00-022873-2)、蘆原英了『僕の二人のおじさん、藤田嗣治と小山内薫』新宿書房(ISBN978-4-88008-373-5)購入。蘆原本は、1983年に同じ版元から出ていた『私の半自叙伝』の増補新装版で、フジタ側の要請で中止になった「小説 藤田嗣治」が読めるのが嬉しい。画家の複雑かつ繊細な性格が鮮やかに浮かび上がってくる文章だ。 某月某日 DVD『巨匠建築家 フランク・ロイド・ライト』ナウオンメディア(NODA-00019)購入。先のフジタも相当なものだが、ライトもまた、一筋縄どころか二筋縄でも三筋縄でもいきそうにないヒトだったようだ。このDVDはライトの生涯を簡潔にまとめたドキュメント。この作家の得体の知れなさ加減というか、性格の怪しさ加減というか、そういう部分もなるべく描こうとしていて面白かった。ま、これでも控えめに抑えているのかもしれないけど。ともあれ、ゲージュツカというのは常人のワクを超えてトンデモナイ人でなくっちゃね。もっとも、わたし自身はこういう人たちとは直にお付き合いしたいとはけっして思わないですが。 某月某日 DVD『アート・オブ・トイピアノ マーガレット・レン・タンの世界』(監督・陳耀成)アップリンク(ULD-352)、原聖『興亡の世界史07 ケルトの水脈』講談社(ISBN978-4-06-28707-4)、プリーストリー/橋本槇矩訳『イングランド紀行下』岩波文庫赤294-3(ISBN978-4-00-322943-9)購入。先に読んだスコットランドも面白かったが、イングランドもなかなかのもの。しかし、ほぼ同時期のおなじブリテン島の紀行文にもかかわらず、両者の描かれ方はずいぶん違う。描写するパレットの色彩が異なっているというか。まあ、単純に筆者が違うからだけなのかもしれないけれど、どうなんだろう。 某月某日 DVD『エディット・ピアフ コンサート&ドキュメンタリー』東宝(TDV17309D)購入。ピアフの伝記映画が公開されていたことを、つい先日知った。うわああ。そのうちビデオソフトになるだろうからまぁいいか。とりあえず公開記念として発売されたこのDVDだけはしっかり確保しておかないと(すぐに店頭から姿を消すしねぇ)。で、このディスク、買ったはいいがまだ見ていない。ライブ映像といってもTV番組のものが主体のようで、それならたぶん見たことあるものがほとんどかもしれない。どうせなら例のオリンピア劇場のをノーカットで出してほしかったなぁ。 某月某日 平野甲賀『僕の描き文字』みすず書房(ISBN978-4-622-07291-1)、加藤類子『虹を見る 松園とその時代』京都新聞社(ISBN4-7638-0279-8)購入。松園本は、当時の新聞記事などを豊富に引用した丁寧な伝記で、松園が生きた時代の空気がしっかり伝わってくる。それはいいのだが、<例の部分>は当然のように触れられておらず、それがかえって異様でもある。そのことは上村家にとってよほどのタブーなんだろうし、子孫の方々の心情もわからぬでもないのだが、ゲージュツカをゲージュツカとしての業績だけに限定して語ってしまうのは、伝記本としてはちょっと危険なのではないかなとも思う。先のフジタやライトと同様、彼ら彼女らは、ゲージュツカであると同時にひとつの時代を生きた市井の人でもあったわけで、けして神や仏ではない、はずなんだが。 某月某日 赤瀬川原平×山下裕二『実業美術館』文藝春秋(ISBN978-4-16-3694810-1)購入。このシリーズはもういいやと思いつつも、ついつい買ってしまう。巻頭で写真集『工場萌え』への言及があって、ちょっとびっくり。へええ、売れているんだねえ。 某月某日 和田誠『和田誠 切抜帖』新書館(ISBN978-4-403-21095-2)、最相葉月監修『星新一 空想工房へようこそ』新潮社とんぼの本(ISBN978-4-10-602164-0)、DVD『団地マニア 団地プレイはじめの一歩』エイベックス(AVBF26530)購入。『工場萌え』では文章を担当した大山顕さんの本領というかホームグラウンドである団地、写真集もそのうち刊行されるはずだが、先にDVDが出たのにはびっくりした。この人は才人というかサービス精神の旺盛な方で、DVDでも「マイナーなジャンルオタク」というキャラをしっかり演じているのだけれども、それがかえって痛々しい。サービス精神旺盛とはどういうことかというと、たとえばこれももうすぐ写真集が発売されるジャンクションシリーズなんかがいい例なんだけど、写真がどれもやたらに美しすぎるのである。ふだん見過ごしている日常の風景にあらためて眼を向けさせるには、なるほどここまで「美しい」写真を提示しなければならないのだな、といちおう納得するのだが、それにしても過剰なほど素晴らしすぎるのがわたし好みではない。団地写真も同様で、団地サイトに掲載されている写真は4×5判という、写真機はもちろんフィルム代や現像代も非常に高価な機材を使ってものすごくきっちりと撮影されていて、実はとんでもなく手間暇(とお金)がかかっているクォリティの高い写真なのだけれども、彼はそういうところを全面に押し出したりはしない。いわゆる都会人の含羞なのかもしれないが。そのかわりに、こういうDVDでセクハラオヤジっぽいセリフを連発する「イタいマニア」を演じてしまうのである。なんちゅうか、非常にもったいないよなあ、などと思ってしまう。まったくもって余計なお世話なんだけどね。わたしの好みでいえば、4×5サイズを堪能できるような、うんとストイックで余計な文章の一切ない、純粋に団地の造形美だけを見せる大判の写真集を出してくれないかなあと思うのだけど、それじゃあ絶対売れないんだろうなというのも想像できる。にしても総裁みずからここまで自虐の詩を歌わなくてもとも思うわけで、なんにせよマニア系サブカルの生きる道は厳しいんですねぇ。はぁ。 某月某日 沖縄出張。関西からだと飛行機はわずか2時間ほどで、だから機内誌をパラパラめくっているだけで充分ヒマはつぶせるのだけど、つい習性で本を一冊、鞄に入れてしまう。今回出かける間際に書棚から引っこ抜いたのは、数年前に買ってまだ一頁も開いていなかった塚原史『ダダ・シュルレアリスムの時代』ちくま学芸文庫(ISBN4-480-08785-0)。もちろん往復の4時間くらいで読了できるほど易しい本ではないのだけれど、読み始めたらとても面白く、結局帰宅してから残り半分を一気に読み終えた。ブルトンのシュルレアリスムよかツァラのダダの方が断然かっこいいよなあ。読後の余韻のまま、本棚からデュシャンの伝記や同時代のアバンギャルド関連本をいくつか引っぱりだし、寝床に積み上げる。というわけで、ここしばらくのあいだ、気分はすっかり前衛なんである。ついでといってはナニだけど、中断したままになっているいくつかのロシア・アバンギャルド関連本もこの機会に読み終えたいな。

2007 12 10 [booklearning] | permalink このエントリーをはてなブックマークに追加

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