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[book]:番線

 

Bansen

●番線〜本にまつわるエトセトラ〜
 久世番子著/新書館/2008年4月刊
 ISBN978-4-403-67051-0
 装丁者名記載なし
 
 話題を呼んだ『暴れん坊本屋さん』(2005年〜2006年、単行本は新書館刊、全3巻)の後番組として著者が描いたのは、本屋さんから本そのものへとますます広がるブックフェチ・ワールド。もうね、のっけの描きおろしカラーページから爆笑ものなんであります。ベッドの上でだらしなく眠る番子さんのまわりに散乱する本、本、本。「昨夜読んだ本」が枕の下に隠れ、「先月号の雑誌」が足元に転がり、「今日買ってきた本」は開封もせずほったらかしにされ、大量の「友だちに借りた本」も紙袋に入ったまま、「行方不明の本」が本棚のうしろに落ちていて、「本棚に入りきらない本」がどっさり山積みに…。「あるある」ネタというよりも、もうそっくりそのままワタクシと同じじゃないですか。あいたたたた。
 というわけで上の写真、ある日の自分の部屋の片隅をそのまま撮ってみました。ちなみに右側の本棚、ここに写っている部分は一番下の段ではありません、もちろん(きっぱり)。本棚に入りきらない本がかなりのスペースを占拠している様子の、その片鱗だけでも感じていただければ幸いです…って、積み上げてるにしてもちったぁ整頓しろよ<自分。
 
 
 本書はいわゆる<エッセイ・コミック>というジャンルに入るのでしょうか。わたしはこの分野のものはそれほど読んでいる方ではありません。どうも<作者の自分語り>ってのが苦手なのかもしれません。対象が配偶者であれ赤ちゃんであれペットであれ、あるいは外国暮らしであれちょっと変わった職業であれ、「○○に夢中なワタシ」が前に出てくるものはちょっと…という感じでしょうか。作者が直接の知り合いとかだったらともかくも、「んなもん知らねーよ」という人がどんなに「○○を必死にがんばってるワタシってどぉ?」と迫られても、困ってしまうのであります。世のエッセイ・コミックがすべてそうだというのではないでしょうし、以上はわたしの単なる先入観に過ぎないのだとは思うんですが、といって積極的に手にとって読もうという気にもなれないんですよねえ。
 
 その点、久世番子さん描くところの本フェチ噺は、わたし的には実にツボ。それはひとえに「本屋さんでがんばってるワタシ」や「読書が大好きなワタシ」ではなく、「本屋さんって楽しい」「本って面白い」というのがストレートに出ているからだと思います。もちろん本書には著者自身の濃ゆい好みや趣味嗜好もたっぷり出てくるんですが、腐女子でもなければBL小説さえ読んだことのないわたしでも違和感なく楽しめるのは、ひとえに作者の“芸”の確かさでありましょう。
 
 なにより作者が繰り出す「例え」が滅法面白い。たとえば読者に「写植=写真植字」を説明するのに、セクシーグラビアアイドルとカメラマンを登場させるというアイデアにはひっくりかえりました。あるいは、限られたスペースの本棚にどうやって蔵書を詰め込むか、という話題に敗戦間近の旧日本軍司令部(?)の設定を持ってくるあたりもなるほどなぁと感心。その壁には「読みてし止まむ」「一億読砕」の標語が貼ってあるなど、あちこちにわかりやすい小ネタがいっぱいあって、たいへん気楽に読めます(この「気楽に」ってのがなかなか貴重なんですよねえ。中には「お気楽」をウリにしているわりに楽しんでるのは作者だけじゃねーの、なんてつい思ってしまうものもありますし)。
 
 
 『暴れん坊本屋さん』第一巻が発売された頃に久世さんのサイン会が何度か開かれてましたが、実はワタクシそのうちのひとつに参加したことがあります(考えてみれば漫画家サンの直筆サインって、高校生の頃に手塚治虫に貰って以来だわ)。臆面もなくハチさんをリクエストして、その場で描いてもらった単行本は我が家の家宝になっております(^^)。
 本書にも登場する担当編集者さんや営業のかーやまさんもその会場にいらっしゃったんですが、著者本人の自画像(カモノハシ…なんでしょうかねえ)も含めて、みなさんとっても似ていたのにびっくり。マンガの中では、編集担当さんの似顔なんて顔に大きくの字が書いてあるだけなんですけど、ひとめで「あ、この人だ」ってわかりましたから、やっぱプロの画力って凄いんだなあと思いましたです。
 

2008 04 05 [booklearning] | permalink このエントリーをはてなブックマークに追加

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comments

>カモノハシ
ウチではアヒル説とペンギン説があって、今のところペンギン説が優勢です。

posted: 漫棚通信 (2008/04/06 19:05:41)

JR西日本管内の住人としては、やはりカモノハシ説に一票を投じたいところですが…さて、ホントのところはどうなんでしょうね。
http://www.jr-odekake.net/guide/icoca/dekakeyo/

posted: とんがりやま (2008/04/06 20:36:36)

 

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