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リハビリの日々5

 

Byousitu

 
 あっという間に忘れてしまいそうなので、入院中の一日をメモしておく。
 
 2ヵ月の入院中、部屋は3度変わった。手術直後は4人部屋(部屋代が少し割高)、2週間ほどで6人部屋の一般病室(フロアは同じ、というか廊下をはさんで向かい側の部屋に移っただけである)へ、そこから10日もしないうちに別階のリハビリテーション病棟に移動した。上の写真はリハビリ病棟のもので、自分のではなくとなりの空きベッドを撮った。この3番目のリハビリ病棟暮らしがいちばん長かったので、そこの平均的な一日を書き残しておこう。
 

 
06時00分 起床。全室に放送が流れ、部屋の灯りが点く。わたしのベッドは窓側にあったため、カーテンを開けるのはなんとなくわたしの役目ということになっていた(閉めたままでも看護師さんが開けてくれるのだが)。一斉放送の前には既に目が覚めているので、放送の直前にカーテンを開けることを自分に課していた。
07時30分 朝食。食事は「デイルーム」と呼ばれる大部屋にて、病棟の入院患者が一同に集まって行われる。食事の配膳ワゴンは地下の厨房からわたしのいた病室の前を通ってデイルームに運ばれるため、ワゴンのガラガラという音を合図にしてデイルームに向かうことにしていた。リハビリ病棟の入院患者は総勢40名程度だったろうか、リハビリ専用病棟といっても患者の程度はさまざまで、食事を摂るにも介助が必要な方もいらっしゃる一方、ほんの数分で片付けてしまう(どこが病人やねん)な人もいて、一種奇妙な光景ではある。食後の薬が必要な患者も多数いるが、わたしは手術後の2週間ほどで内服薬が不要となったので、食事を終えるとさっさと歯磨きをして病室に戻る。
08時00分 いそいそと病室に戻って、テレビをつける。ウイークディのみだが、わたしにとっては唯一、自室でのテレビ鑑賞の時間だ。教育テレビの「にほんごであそぼ」と「ピタゴラスイッチ・ミニ」を見るのだ。退院したらDVDを買おうっと。一日のうちでもっとも楽しい15分が終わればテレビを消し、天気と気分が良ければ屋上に上がってひなたぼっこしたり、1階に降りて売店を冷やかしたり、ロビーに置いてある新聞を読んだりする。
09時〜 病院としての機能が始動する。担当看護師が各部屋を巡回して検温・血圧測定。常に異常なし。週に2度は入浴日で、こちらも9時スタート、こちらの担当は看護学校の学生さんのようだ。リハビリ病棟ではもちろん毎日のリハビリが主な日課となる。ここの病院は脳外科が主流のようで、そういう患者さんは言語療法、作業療法、理学療法と多い人で日に3度のリハビリがあるので忙しい。看護師が検温に訪れても患者はすでにリハビリ室に行ってたり入浴中だったりで不在なことも多く、なかなかスムーズに終わらないようだった。わたしは歩行機能のリハビリだけなので患者のなかでも暇な方で、基本的にずっと病室で寝っ転がっているのだが、いつ検温が来るのか、あるいはいつ入浴に呼ばれるのかわからないので、待つ身としてはけっこうつらい。リハビリだけはだいたいいつも同じ時間なので見当がつけやすいが、それも急に早まったり遅くなったりする。まあ、ビジネス社会のような厳密なタイムスケジュールと同じように考えていてもしょうがないのであって、何事も病院タイムと割り切らなければならない。
11時50分 昼食。リハビリや入浴が済むと、一日のスケジュールは午前中でほぼすべて消化してしまったことになる。食事後の歯磨きが終わればいよいよなにもすることがない。日曜・祝日に至ってはリハビリや入浴も休みなので、そうなると一日中、本当になんにもすることがない。実は、この間なにをしていたかもうよく覚えていないのだ。人間やることがなくなれば早く呆けてしまうんだろうなあ。ロビーに降りてふたたび新聞を読んだり、食事が物足りなかった日は地下の食堂で蕎麦をすすったり、昼寝をしたりしてやり過ごしていた。テレビは見ないかわりにラジオをよく聞いていたが、病室は電波の入りが悪く、NHKですら雑音が多いので一苦労だった。
16時00分 自主トレ。理学療法室に置いてある「自転車」と呼ばれるトレーニングマシンに乗って約30分間。大汗をかくまで必死になってこなす。一日のうちで唯一「がんばって動いた〜」と思える時間で、わたしにとっては運動そのもの以上にこの「がんばった感」が重要なのであった。やっぱりなにかしらメリハリがないとね。
17時50分 夕食。食事療法が必要な患者と違って、特に食事に対する制限はなかった。昼食と夕食は2種類のメニューの中から自由に選べるし、食事自体も美味しい。魚料理などは小骨にいたるまで慎重に取り除かれていて、たいへん気を使っているなと思う。食器がプラスチックのどうしようもないモノなのでアレだが、それなりの器に盛り付ければそこらのファミレスよかよっぽど高級な食事になるのではないか。ご飯のおかわりができないのが残念だが。塩分やカロリー計算ばっちりの病院食のおかげで、若干メタボ気味だった身体がいくぶんスッキリしたようだ。
19時00分 リハビリ病棟のデイルームは食堂兼用だから食事後も人が多く、テレビは他の人が見ているので、他のフロアの人のいないデイルームに移動して、自動販売機のコーヒーを飲みながらNHKニュースを見る。18時台の関西ローカルニュース番組と合わせて1時間くらいテレビの前に座りっぱなしということもあった。インフルエンザが流行りだすと番組のほとんどがその話題となったりして、まあ世相の忠実な反映ではあるのだろうけど、なんだかなあという気もする。「冷静な対応を」といいながらいちばん舞い上がっているのはマスコミじゃないのかな。19時30分からの「クローズアップ現代」まではさすがにつきあえず、部屋に戻ってラジオ。時たまトイレついでにデイルームに寄ってテレビを眺めたりする。みなさんたいてい野球を見ているので試合経過を知るためだが、阪神の調子がいまひとつなのでどうも盛り上がらないようだ。そういえば大阪と違って京都では昔から巨人ファンが多かったはずだが、といってもそういう話は京都市内中心部だけなのかな(売店にはスポーツ報知もちゃんと売ってたりするけど)。まあ、星野阪神以降阪神ファンが急激に増えたからねえ。消灯時間までは本を読んだり、ゲームをしたり。ニンテンドーDSiで「桃太郎電鉄20周年」を何度やったことか。人生のなかでもっともゲームをやりこんでいた2ヵ月だったと言えるかもしれない。桃鉄のおかげで少しだけ地理地名に詳しくなったかも。
21時00分 消灯。起床時と同じく放送があって一斉に灯りが消される。とはいえすぐに眠くなるわけではない。枕元のラジオをぼんやり聞く。23時すぎの「ラジオ深夜便」のころまでは毎日確実に起きていた。ラジオは一晩中つけっぱなしだ。眠れないからといって人生についてあれこれ考えたり悩んだりすることもない、いたってノーテンキな2ヶ月間ではあった。
 

2009 05 21 [living in tradition] | permalink このエントリーをはてなブックマークに追加

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