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《モダン・エイジの芸術史》ノート
《モダン・エイジの芸術史》…とはまた大きく出たタイトルですが、いま、そういうタイトルのタイムラインをちまちまと作成しています(下の画像はサンプルで、2009年8月1日現在未公開です。近日中に公開する予定です)。時間を見つけては少しずつ項目を登録しているのですが、いつ完成するのかはわたしにもわかりません。

いつの頃からか、わたしはおよそ100年ほど昔の出来事に興味があって、その種の本をぼちぼちと読み続けてきました。とはいえ関心のあるジャンルはさほど広くなく、主に「バレエ・リュス」や「ロシア・アバンギャルド」、それに「ダダ」などが中心ですが、それぞれのジャンルの盛衰や顛末は各々の専門書を読めばいいとして、それらが相互に組み合わさったかたち、総合的な〈通史〉としてはいまいちイメージしにくかったんですね。
例を挙げれば、たとえば1909年のパリ。イタリアの詩人マリネッティが「ル・フィガロ」紙に『未来派宣言』を発表したのが2月。その3ヵ月後にはディアギレフが「セゾン・リュス(ロシア・シーズン)」と銘打ってバレエ興行を打っている。のちに『バレエ・リュス(ロシア・バレエ団)』としてヨーロッパ各地や北南米を駆け回ることになる、その記念すべき最初の公演だ。一方、マルセル・デュシャンはこの年のサロン・ドートンヌに新作を3点出品していて、そのうち1点をイザドラ・ダンカンが購入している。のちにディアギレフと深いかかわりを持ち、バレエ・リュスのダンサーであるオルガ・コクローヴァと結婚することにもなるパブロ・ピカソは、すでに2年前に大作『アヴィニョンの娘たち』を発表しており、ジョルジュ・ブラックとともにキュビズムの実験に没頭していた——。もしもタイム・マシンが発明されて好きな時代に1年間だけ住めるとしたら、この年のパリなんかは相当に面白いんじゃないかと思います。
マリネッティの未来派。ディアギレフのバレエ・リュス。マルセル・デュシャン。パブロ・ピカソ。そのいずれも、1909年の時点ではまったく関係のない、それぞれ独立した事項です。ピカソはのちにバレエ・リュスのためにいくつかの仕事をしますが、未来派やデュシャンのダダはその後もほぼ無関係なまま。さらに言えば、ディアギレフの生まれ故郷であるロシアの前衛芸術運動「ロシア・アヴァンギャルド」もバレエ・リュスとは接点がなく、したがって研究書にもほとんど触れられていません。しかし実際には、ディアギレフはイタリア未来派の画家ジャコモ・バッラを舞台美術に起用した『花火』という作品を1917年に上演していますし、1926年にはシュルレアリスムのマックス・エルンストやジョアン・ミロにも仕事を依頼しています(アンドレ・ブルトンが「あのブルジョワ資本主義のディアギレフの仕事をするなんて」と怒ったと言われてますが、狭いセクト主義に凝り固まったブルトンなんかよりディアギレフの方がよっぽど幅広い感性の持ち主だったと、ブルトン嫌いのわたしなんかは思ってしまいます。もっとも、ディアギレフはジャズは終生嫌っていたようで、パリに来ていたコール・ポーターやジョージ・ガーシュインからのラブコールには応えていませんが)。
リチャード・バックルという英国人の書いた、ディアギレフの詳細な伝記本を読めば、ディアギレフが関わった同時代人の多さに眼がくらむほどで、ほんの一行だけ登場する人物も含めた人名事典でも作れば、それはそっくり20世紀初頭の西欧文化大事典になるでしょう。それが無理なら、せめて同時代の文化現象を時系列に沿って並べていくだけでも、「ディアギレフの時代」を理解する上でなんらかの補助になるのではないか…そう思い立ち、タイムラインを作成してみる気になりました。
もとより無謀な試みであることは承知しています。まず何よりも、扱う項目が多すぎて、わたしなんかの手に負えそうにないことがひとつ。それにたとえば、絵画作品ひとつ取り上げるにしても、「○○年作」までは判っても、「○月○日」まではほとんど不明です。@ニフティのタイムラインではそこのところをはっきり指定しないと登録できないしくみになっているので、これでは事実上登録不可ということになってしまう。
日付がはっきりしている事項に関しても、たとえばロシアの場合「ロシア暦(ユリウス暦)」で、西暦になるのはロシア革命成立後の1918年になってからです。登録する年月日を西暦にするのか旧ロシア暦とするのか、決めておかなければなりません。こういうのが結構面倒なんですね。
ということで、どのみち不完全なものにしかならないと判っていますが、《モダン・エイジの芸術史》タイムライン、ただいま鋭意制作中、であります。もっとも、こういうのって、作ってる本人がいちばん面白いんですね。たぶん、できあがったタイムラインをご覧になっても、あまりピンと来ないことと思います。
というのも、1930年代アメリカの項目に加えた「マルクス兄弟」や「フレッド・アステア」のフィルモグラフィのような、ディアギレフとは全く関係のないものも紛れ込んでいるからで、このへんは完全にわたしの趣味であります。趣味だから、たとえば〈シュルレアリスム〉はほとんど無視しています。理由は、わたしがブルトン嫌いだから(笑)。同様に、エル・リシツキーやヤン・チヒョルトには関心がありますがバウハウスにはあまり詳しくないので、そのあたりの記述にも濃淡が出てくることでしょう。いずれにしろ詳しくやりだしたらきりがないので、どこかで線引きをしないと収拾が付かないのではありますが。
役に立つような立たないような、というか作成者本人以外にはほとんど意味がないタイムラインですが、公開の暁にはそれなりに楽しんでいただけたら幸いです。
2009 08 01 [booklearning, dance around, design conscious] | permalink
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